永子の窓

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蜻蛉日記を読んできて(170)

2017年02月20日 | Weblog
蜻蛉日記  下巻 (170) 2017.2.20

「三月十五日に院の小弓はじまりて出居などののしる。前後わきてさうぞければ、そのこと大夫により、とかうものす。
その日になりて、『上達部あまた、今年やむごとなかりけり。小弓おもひあなづりて念ぜざりけるを、いかならんとおもひたれば、最初にいでて諸矢しつ。つぎつぎあまたのかず、この矢になん刺して勝ちぬる』などののしる。さて又二三日すぎて、『大夫の諸矢はかなしかりしかな』などあれば、まして我も。」

◆◆三月十五日に院の小弓が行われることになって、その練習が始まって大騒ぎです。先手組、後手組に分けて装束を調えるので、その支度を大夫の指図により、あれこれとする。当日になって、あの人が、「上達部が大勢参観して、今年はとても盛大であった。あの子(大夫・道綱)は小弓などとあなどって、練習も真剣にやらなかったので心配していたが、最初に出て、諸矢(二本一組の矢を両方とも)を射当てたのだよ。つぎつぎとその矢が糸口となって、多くの得点を得て勝ってしまったのだ」などと騒ぎ立てて言ってきました。そしてまた、二、三日経ってからも、「大夫の諸矢は素晴らしかったよ」などと言ってよこすので、私はもちろんうれしかった。◆◆

■小弓=小弓(こゆみ)
 短小の弓の総称だが、特に平安時代以来、宮中や仙洞をはじめ広く貴族社会で行われた遊興の的射、及びそれに用いる的弓のことをいう。小弓は遊戯の具で、座したまま左膝を立てて左の肘をもたせかけ、右手を顔近く寄せて射る遊び。

◆写真と参考:風俗博物館 


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