ふろむ播州山麓

旧住居の京都山麓から、新居の播州山麓に、ブログ名を変更しました。タイトルだけはたびたび変化しています……

字「幸福」の誕生 (11) ヘボン Hepbum

2012-10-24 | Weblog
日本語のローマ字表記で有名なJ.C.ヘボン(日本名:平文1815~1911)は1859年に初来日し、長年の滞在中に立派な辞書も残しました。『和英語林集成』ですが、日本初の和英辞典です。ずいぶん好評な辞典で、増補改訂を繰り返しています。
 初版は慶応3年(1867)、明治5年(1872)に改訂2版刊行。明治19年(1886)に全面改定増補3版を出版しています。この辞典は「和英」に多くの頁を割いていますが、「和英の部」の後に「英和の部」(ENGLISH AND JAPANESE DICTIONARY)が付いています。
 英和からHAPPY関連語、<Happily.Happiness.Happy>の和訳を、この3語の順に3行書きで並べます。初版・2版・3版と、訳語は変化します。なお原文の日本語はローマ字で表記されていますが、読みやすいように「かな」にしました。(漢字)はわたしの勝手な判断です。
 なおヘボンは医者としても活躍し、また教育者として明治学院大学やフェリス女学院の設立者でもある。近代日本の恩人のおひとりです。さらには女優のオードリー・ヘップバーン(Hepbum)は彼の一族だそうで、これにも驚きます。


(1)1872年初版(慶応3年)

 さいわいに
 らく(楽)・たのしみ・さいわい・くわんらく(歓楽)
 らくな・さいわいなる

 
(2)1872年2版(明治5年)

 さいわいに・しあわせに・なかよ(仲良)くして
 らく・たのしみ・さいわい・くわんらく
 らくな・さいわいなる・しあわせな・あんらく(安楽)な

(3)1886年3版(明治19年)

 さいわいに・しあわせに・なかよくして
 らく・たのしみ・さいわい・くわんらく・こーふく(幸福)・ふくし(福祉)
 らくな・さいわいなる・しあわせな・あんらくな

 明治19年の3版で「幸福」がはじめて登場します。原文表示は「kofuku」ですが、O字は上に横棒のついた伸ばす音です。間違いなく字は「幸福」で、読みも江戸時代の「さいはひ」「さいわい」ではなく「こーふく」「こうふく」です。明治初年に字「幸福」が普及し出し、また読みも、江戸時代には使わなかった「こーふく」「こうふく」がはじめて定着します。
 それと「しあわせ」ですが、幕末に廃れていた言葉が、明治5年の第2版から出ます。本来の表記は「仕合」です。明治初年の「こうふく」をもう少し知りたいと思っています。
<2012年10月24日 南浦邦仁>
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2 コメント

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Unknown (N)
2012-10-27 12:24:38
向日町競輪のそば
物集女街道をちょっと南に下った東側に
和菓子で幸福堂があります
幸福は案外近所にあるものです
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明治 (読者A)
2012-10-28 08:25:43
「本当の幸福とは何か?」「どうすれば幸福になれか?」そんな本は山ほど出ています。また100人集まれば千ほどの講釈が噴出し、各自主体的な議論ばかりで結論は出ません。
反して日本における「幸福」という言葉の出現から、読み「さいわい」が「こーふく」に変化していく過程。大変マイナーな探索ですが、日本人が言う「幸福」がある程度解明できる可能性がありそうですね。
明治時代における変化をぜひ調べてください。楽しみにしています。お近くでしたら「幸福堂」に寄るのもヒントかも。明治創業なら傑作ですね。
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