ふろむ播州山麓

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電子書籍元年2010 №6 「我、電子書籍の抵抗勢力たらんと欲す」中編

2010-08-02 | Weblog
 中西秀彦著『我、電子書籍の抵抗勢力たらんと欲す』(印刷学会出版部発行)紹介の続編です。そもそもこの本が出版されたと知ったのは、京都新聞7月28日朝刊のインタヴュー記事でした。タイトルは「電子書籍普及は知性のデフレ」
 早速、PCで本屋の書籍検索で調べたのですが、出てこない。あれっ? 版元は印刷学会出版部で、書店には入荷するはずです。しかし印刷部数がわずか1500部と記されている。実に少ない部数です。そのせいで検索に引っかからないのか? どちらにしろ、中西印刷に行けば売ってくださるだろう。その日のうちに伺い、1階の無人受付の電話で「本を、売ってください」
 どうも書店発売は、翌日だったようです。書誌データが、まだアップされていなかったのでしょう。1日、得をした気分です。
 さてきっかけの京都新聞記事を、個人的見解を加えてご紹介しましょう。

 「電子書籍化は急速に広まるであろう。そうすると紙の本と違って、出版社への返品がなくなり、質の低い本が増える可能性がある」
 わたしも同感です。返品という出版社のリスクがなくなれば、粗製乱造、いっぱい作ればどれかが当たる。まあいえば玉石混交のロングテールの世界になってしまう可能性があります。たとえば、俳句集や自分史、日記、孫の写真集、小学生の自作画集、手作り絵本…。これまでなら自費出版か私家版、あるいは写真なら昔ながらのアルバム帳、たった1冊だけの手描き絵本、それらが電子書籍になり、市場に流布させることも可能である。
 そうなれば、出版の大洪水がはじまる。また紙本を希望すれば、1冊でもPODで印刷してもらえる。1億「総著者」の時代が来そうです。「本を出版しました!」と、にわか著者が言っても、自慢にもならなくなってしまいます。「何冊、紙で出したの?」と聞くのが、紙からデジタルへの転換期には、確認するべき必須事項になるかもしれません。
 著者と認知されるざっとの印刷部数目途は、500部以上くらいでしょうか。それも総ページ数によります。薄い冊子体なら、500部でも経済的負担は軽い。

 「印刷会社は仕事が激減する。これからは、紙と電子の両方で出版する本を増やすことを提唱する。そして、必要な数だけ刷るオンデマンド印刷など、これからの印刷業界はデジタル化に対応する必要がある。それと、これまで本を作ってきた印刷会社が、実は電子書籍制作のノウハウを持っている。印刷業界が電子書籍の企業と直接取引できる立場にいるのである」
 確かに大日本印刷DNPがしゃかりきになっているように、出版にかかわっている印刷会社はみな、電子書籍をつくれる。ところが、紙書籍雑誌の問屋である取次、そして書店は、いったいこれからどうなって行くのでしょう?

 「電子書籍の普及によるペーパーレス化は知性のデフレを起こす。電子化への抵抗は難しいが、紙の本の魅力をあらためて認識してほしい」
 紙本には魅力が十二分にあります。しかしこれまで以上に、電子に押されどんどん減るでしょう。百科事典や「知恵蔵」「イミダス」などは「ウィキペディア」に負け、時刻表も激減。道路マップはカーナビに完敗し、一般地図もヤフーでこと足りるらしい。新聞がなくとも最新のニュースはネットで即刻、得ることができる。コミックは携帯電話でみるひとが、ずいぶん増えた。そして情報誌も、インターネットに対抗するのがたいへんな状況です。

 さてここまで書いて来て、本来の中西秀彦著『我、電子書籍の抵抗勢力たらんと欲す』本文の紹介が、さっぱりできておりません。今回を中編とし、次回に後編を書こうかと思っています。ご容赦ください。
<2010年8月2日>
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