中爺通信

酒と音楽をこよなく愛します。

始まってます

2014-05-31 14:46:27 | 山形
 まだ5月なのに、ずいぶん暑い日が続いています。学校の体育館でのコンサートも、これから日々過酷になっていくことでしょう。


 ということで先日、午前と午後の本番の間にきちんと昼食をとろうと、鶴岡で有名な食堂に行きました。麺類から定食まで、メニューは豊富で味も抜群なのですが、この店が有名なのは、その量。知らずに「大盛りで」などと言うと、「まじかよ・・・やるな」という視線が集まり、運ばれてくるパーティーサイズの丼を見て、無謀なチャレンジャーになってしまった自分を後悔するのです。山形にはこういう店がよくあるので注意が必要。


 さて、久しぶりになんとなく入ったものの、周囲の巨大な唐揚げやカツカレーを見て、早くも後悔し始めた私は、追いつめられて眺めるメニューに「冷やし中華」を発見。

 「冷やし中華始めました」は普通6月からだが、もうはじまってる。これも地球温暖化現象か。暑い夏場は、やはりこういう軽くてサッパリしたものに限る。しかも5月に食べる冷やし中華は、なんだかプレミアム感がある。


 しかし・・・運ばれてきた器を見て、この店の実力を再確認。大盛りでないのに山盛りの具の下には、食べても食べてもズルズルと、出るは出るはの大量麺。酢の加減が良く、味は素晴らしいのでなんとか完食したものの、やや反省。「どんなにあっさりしたものでも量が多いとドッカリする」という自然法則を体感しました。涼しくなるはずだったのに、箸を置いた時には「ひと仕事終えた」感じで額に汗。


 いよいよこれからが夏本番。内臓をいたわりつつ、バテないように頑張ります。
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奥羽自慢「出羽燦々・無濾過生」

2014-05-30 15:46:23 | お酒の話し(山形県)
 まさに今、しぼったばかりの牛乳を飲んだことがありますか?

 「ひと肌」などという生易しいものではなくて、「体内の熱」を帯びて湯気が立ちのぼるような熱気。顔を近づけて漂ってくるのは「香り」と呼べるような客観的なものではなく、むせかえるような濃厚な生々しさ。口をつけると流れ込んでくるのは、「飲み物」ではなく、まさに「獣の体液」。捕まえた獲物の腹を噛み裂いて首を突っ込んだ肉食獣が感じる、生命そのものの味・・・

 ・・・こんな感じでしょうか。ちなみに、私は飲んだことありませんけど。


 さて、今月は鶴岡方面ばかりに足しげく通う毎日。本当は日帰りではなく長期滞在して、日本海の恵みとともに鶴岡の銘酒を味わいたいところですが仕方がない。せめて酒だけでも。

 ということで櫛引の「奥羽自慢」。前にも書きましたが、後継者不足で一度たたんだ蔵を、楯の川酒造の助力で再興した酒です。今回は季節限定の「無濾過生原酒」。山形の酒米「出羽燦々」を55%まで磨いた純米吟醸。


 この「無濾過生原酒」というのが、まさに「しぼりたての牛乳」を思わせるような「そのものの味」がするジャンルです。その蔵の「酒そのもの」、さらに言えばその蔵の「魂そのもの」が味わえる。旨味もクセも、たっぷりそのまま。特に、良い蔵の「生原酒」は鮮度が高く雑味は少なく、まるで「米の生き血」をすするようなディープな快感がある。・・・「羊沈」のレクター博士もきっと喜ぶに違いない。

 ではさっそく、この「奥羽自慢」を。・・・さすが濃厚です。「出羽燦々の華やかな香りと味」などという表現では生ぬるい。「出羽燦々の体臭にむしゃぶりつく」ような、原始的な満足感があります。出羽燦々の、味の透明感と、キラキラした香りが、これでもかというほど「直に」味わえます。

 
 「旨い米と水」を堪能しました。生命力をわけてもらったような気がします。
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前触れ

2014-05-28 20:50:32 | 山形交響楽団
 酒田でも、珍しい深海魚が釣れたそうですね。「不気味だ」とか「天変地異の前触れか」などと言われています。地元の人も、「この辺りで40年やってるが初めてのことだ」とコメントしているとか。

 2メートルぐらいもある銀色の蛇のような魚が、グッタリと力なく泳いでいるところにルアーがひっかかって釣れたらしい。少し哀れな感じもします。なぜ、深海からわざわざ出てきたのでしょうか?生物学者にも、その理由はわからないようです。


 ところで今年も山響は、演奏旅行のスケジュールが目白押しです。好況の現れだったら良かったのですが、なかなかそうでもないのが悲しいところ。それにしても、今年はずいぶん遠くまで行きます。発表になったスケジュールを見ると、特に関西方面が多い。

 なかでも秋には、三重や和歌山などまであるのには驚きます。なぜ山響が・・・これは、文化庁が決めることなので理由はよくわかりませんが、山響40年の歴史で初めて行く土地ではないでしょうか。


 「不気味」とか「天変地異」と言われないように、グッタリすることなく、良い演奏を聴かせたいと思います。


 ・・・要するにみんな、いろいろな事情の中で、精一杯生きているということなのです。
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愛の挨拶

2014-05-27 12:40:04 | 山形交響楽団
 スクールコンサートの毎日です。


 小学校に到着して、演奏会場である体育館へ向かう廊下で生徒とすれ違う。
「こんにちは!」
と、少しはにかみながらも元気にあいさつしてくれることが多くて、やはり「山形の子供たちは素直で良い子ばかりだ」と明るい気分になります。


 気持ちよく演奏会を終えて帰ろうと歩く廊下で、教室へ帰る子供たちと一緒になります。中には、元気よく声をかけてくる子もいます。

「こんにちは!」

 ・・・よくあることですが、これはやっぱり違和感がある。おじさんは、今来たわけじゃなくて、さっきからみんなの前でバイオリン弾いてたんだよ。

 もちろんわかります。「外から来たお客さんと、廊下ですれ違ったら『こんにちは』と言うんですよ」と先生に教わっているのでしょう。それをきちんと実行しているだけです。山形の子は、本当に素直なのです。


 いつも迷うのですが、「こんにちは」とは返さずに、「さようなら」と言って帰ることにしています。
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見上げてごらん

2014-05-24 21:11:18 | 山形
 ぶつかりそうになりながら、しっかりとつないだ手を離さないように、人混みをかき分けて進む私たち家族。あたりは日常とはまるで様子が一変してしまって、普段のんびり歩いていたのと同じ街とは思えない。

 そのとき頭上で爆音がとどろいたので、立ちすくんで空を見上げると、ビルの間に戦闘機の姿が。前にいた人だかりからあがる悲鳴!


「・・・すげえカッコいい!」


 ということで、今日と明日の二日間、山形市は「東北六魂祭」。花笠やら、ねぶたやら、東北じゅうの祭りを一堂に会した、東北復興支援のイベントです。今年は山形がその会場ということで、有名人もたくさん来るらしく、数日前からザワザワしていました。


 中心部の我が家は、植木市やら花笠でも慣れているので、本日は無理をしないで、基本的に引きこもり。

 しかし外も騒がしいし、各地からわざわざ「ここら辺」に来る人が多い中で、完全に無視もいかがなものかと、ちらっと頑張って出かけたのでした。


 さすがに花笠を上回る人出です。文翔館前の広場にも、ライブステージのようなものができていて、そこらじゅうに人が座っています。あっという間に疲れて、「一回りしたらおとなしく帰るか」と思ったところで、航空自衛隊が誇る「ブルーインパルス」の航空ショーが始まったのでした。

 「六魂祭」にちなんで、6機で空に煙で描くラインは、たしかに一見の価値がある。いい加減に見ていましたが、想像していたより、はるかに迫力がありました。猛スピードで編隊が近づいてくるのは、なかなか怖いものですね。戦時中の空襲はどれほど恐ろしいものだったろうなどと、空を見上げながら思っておりました。


 明日も天気が良さそうで何よりです。「六魂祭」が盛況のうちに無事終わりますように。
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昼の憩い

2014-05-23 20:56:39 | 山形
 今週はスクールコンサートの毎日です。だいたいが、場所をかえて、午前と午後の2ステージ。昼食の時間が、貴重な休憩時間になります。


 昔は、オーケストラで弁当を注文して、控え室(学校の一室ですが)に届けさせ、揃って食べたりしたものですが、最近ではなくなりました。個人移動の楽団員が増えたり、健康志向が広まったせいでしょう。

 薄暗い理科室で、人体模型にじっと見守られながら、鳥の唐揚げを食べたりするのは消化に悪いので。

 ・・・というのは嘘です。どこの学校さんも、明るくて清潔な控え室をご用意くださってます。健康志向というのはそういうことではなくて、毎日毎日、仕出しの幕の内弁当を食べていてはカロリーオーバーになるから、注文する人が減ったのです。自分できちんとお弁当を作ってくる人が多いようです。


 私は自家用車での移動が多いので昼食は、移動の途中でもっぱら外食。これも実は、あまり体によろしくない。

 なんでも山形県は県民一人あたりのラーメン消費量が日本一だという話を聞いたことがあります。本当かどうかは知りませんが、どこへ行ってもラーメン屋さんが多いのは確かです。ほかに店が無いような町でも、なぜかラーメン屋は見つかる。

 ということで、このシーズンは昼食にラーメンというのが、どうしても多くなります。また、困ったことに、美味しい店がたくさんある。


 実は私は、東京にいた頃はラーメンがあまり好きではありませんでした。どちらかというと「つまらない食べ物」だと思っていました。ハンバーガーとか牛丼のような、便利で安い早いが取り柄のファーストフードのイメージしかなかった。そういう店に入るからいけないのでしょうが、味が単調ですぐに飽きがくるのです。かといって、人気店で行列してまで食べる気にはならない。

 しかし、山形に来てすっかり変わりました。つぶれてるようにしか見えないボロボロの店に仕方なく入り、他にメニューがないから注文した「中華そば」が、あまりに美味しくて感動するという体験が度重なったからです。旨いそばの「つゆ」と同じ、きちんと取った出汁のせいでしょう。一口ごとに味わい深い。また、「知られざる名店」を探す楽しみもあります。


 ・・・塩分の摂りすぎに注意して、これからの季節を乗り切りたいと思います。
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十七年目の

2014-05-20 20:39:43 | 山形交響楽団
 新緑の柔らかい黄緑と、その周囲に点々と残る雪の美しいコントラストが車窓に映ると、「ああ・・・今年もスクールコンサートの季節が始まったか」と感じます。

 
 ということで、いよいよ今シーズンが始まりました。今週は毎日、月山を越えて鶴岡での公演です。


 子供たちの音域の高い拍手の音の後に、指揮棒が振り下ろされて「八十日間世界一周」のテーマが体育館に響きます。

 ・・・こうして迎えるシーズンも、もう何回目だろう。


 最前列では小学一年生たちが、ひざを抱え、目を大きく開いて、じっとこちらを見ています。

「うちの子供も、いつかはこんなふうになるのかな・・・」
と思っているうちに、
「うちの子供にも、こんな時期があったな・・・」
と思うようになりました。


 さあ、今年も元気に東奔西走して、「世界一周」に励むことにします。
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栄養補給

2014-05-19 12:23:21 | クァルテット
 横浜「みなとみらい」での公演を終えて昨日、山形に戻ってきましたが、途中、仙台に寄り道をしました。

 牛タンで一杯やるため・・・ではなく、コンサートを聴きに行ったのです。「ライプツィヒ弦楽四重奏団」。

 言うまでもなく世界的に有名な四重奏団ですが、プログラムがまた良い。モーツァルトの「不協和音」、ベートーヴェンの「第5番」、そしてブラームスの「第2番」。どれも山形Qで演奏したことのある曲です。


 仙台で「はやぶさ」を降り、地下鉄で数分。たどりついた「パトナホール」は、室内楽にぴったりの、響きの良い中ホールでした。

 
 前半は立奏(もちろんチェロ以外)、後半は普通に座っての演奏でしたが、聴いている分には、その違いはよくわかりませんでした。立っても座っても、素晴らしいものは素晴らしいということです。

 とにかく音が柔らかく、余裕と広がりがたっぷりと感じられる。フレーズのとりかたも、きれいな弧を描くような緩急が美しい。精密さよりも、その自在さにひきこまれました。


 勉強になりました・・・というよりも、あらためて「いやあ、カルテットって良いものですね」という感じ。上手すぎて若干イヤになりつつも、心の栄養になりました。
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荘厳

2014-05-17 23:35:05 | 山形交響楽団
 みなとみらいホールでの山響と合唱団「コーロ・フォレスタ」による演奏会が、終わりました。

 今年で3年目ですが、毎回、意欲的なプログラムで驚かされます。

 今回は「ミサ・ソレムニス」。ベートーヴェンが遺した、目もくらむような大曲です。ぶっ続けで80分は、お客様も大変だったのではないかと思います。私たちも大変でした。とても。

 「ああ…トイレに行きたいな」とか「お腹が減ってきた」とか、そういう邪念が入り込む余地はありません。「祈り」なのです。演奏会ですが、音楽を鑑賞するとか、ライブを見るとか、そういうものと違うわけです。ひたすら祈る。…切実な美しい曲でした。


 とはいえ、やっぱりその荘厳さに疲れたので、もう一泊して明日帰ります。
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人という字は

2014-05-16 12:55:32 | 旅の空
 よく、東北の人はがまん強いと言います。厳しい冬をじっと耐えて、農業をするからでしょうか。

 首都圏ならすべてがマヒするような真冬の吹雪の中を傘もささずに、子供もお年寄りも、普通に出かけていくわけですから、確かに強いかも知れません。


 しかし・・・東京の人もすごいです。

 戦禍を避けて急いで疎開する列車ならともかく、ちょっと渋谷まで買い物に出ようとするだけなのに、この危機的なラッシュ・・・。それこそ、子供からお年寄りまで、圧死寸前の殺伐とした「おしくらまんじゅう」の中で、顔色一つ変えずにスマートフォンをいじっているその胆力は本当にすごい。


 「人」という字は、人と人が、必死で押しあいへしあいして倒れずにいる、その壮絶な生きざまを表していたのか・・・。

 「人間」というものは、「人の間」に挟まって身動きがとれなくなっても、「ぷちっ」とつぶれてしまわずに、目的地に着くのを息を潜めてしたたかに待つ・・・そういう強さを持った生き物なのだ。


 ・・・などとつまらないことを、さきほど、久しぶりの満員電車に耐えながら考えておりました。それにしてもやはり、楽器を持った身にはつらいものがありますね。東京の人たちは強いです。尊敬しつつ、ご苦労様です。

 さて今日はこれから、戸塚で、山響のリハーサル。明日の「みなとみらい」公演のために東京に来ているのです。

 こうして毎年招いてくれている合唱団のためにも、良い演奏会になるように頑張ります。
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続・ぴちぴち

2014-05-14 21:14:48 | 雑記
 「ぴちぴち」といえば、先週末の山響定期演奏会は、ずいぶんとつらい思いをしました。とにかくキツかった。

 
 本番直前になってから着替えを始めるのが私の習慣ですが、控え室でYシャツに袖を通すと、しめつけられるような激しい違和感が。その後、ボタンをかけようとして、事態を理解しました。

・・・こ、これは息子のYシャツだ!

 息子も中3になり、少しずつ体格がよくなってきたので、Yシャツのサイズも大きくなりました。家では今までにも間違えそうになったことはありましたが、よりによってこんな日に・・・。燕尾服と一緒に衣装カバンに入れた時にも、まったく気がつかなかった。

 大きくなったとは言っても、しょせん中学生サイズ。まだまだ大人には遠く及ばないな・・・と、微笑ましく思っている場合ではない。時計に目をやるが、今から買いにいく時間は無し。

 とりあえず、最後まで着てみる。・・・袖は全然足りず、肩・胸・腹は、まさに「ぴちぴち」。首以外は強引にボタンを留めることに成功するも、どこからハジケてもおかしくない状態。しかし、今日はもうこれで行くしかない。本番中にデビルマンの変身シーンのようになっても、燕尾服が守ってくれると信じよう。


 「姿勢は正しく、呼吸はスムーズに」

 ・・・このスローガンのもとでベートーヴェンの「英雄」を弾くのは、想像以上につらい。まさに「胸がしめつけられる」。しかし、もだえることは許されない。

 なんとか初日の本番を無事に終えた時には、ドッと疲れました。


 翌日は、家を出る前に、シャツのチェックを入念にしたことは言うまでもありません。・・・二日目の本番は実に「余裕をもって」演奏することができました。「さくらんぼコンサート」の時も気をつけなければ。
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ぴちぴち

2014-05-13 20:22:50 | 山形弦楽四重奏団
 昨日は山形Q第52回定期に向けた、初練習。今回のプログラムは、ハイドン「Op.33ー6」、紺野陽吉「二重奏曲」、そしてメンデルスゾーンの「第3番」です。

 紺野陽吉はヴァイオリンとチェロの二重奏なので、私はお休み。昨年4月に白鷹町でも演奏した今井嬢に、出番を押しつけ・・・いや、お譲りしたわけです。


 ところで、弦楽四重奏を多数のこした作曲家の中で、誰が好きかと言われれば私は間違いなく、ハイドン・・・でもなく、モーツァルトでもなく、ベートーヴェンでもなく・・・メンデルスゾーンを挙げます。

 番号付きの「弦楽四重奏曲」は6曲ありますが、どれも大好きなのです。ちなみに山形Qでは過去に「第1番」「第2番」「第6番」を演奏しています。弾くのは難しい曲ばかりですが、それぞれに素晴らしい。メンデルスゾーンの純粋な、けがれのない魂が、子供のように笑ったり泣いたり怒ったりしているような美しい曲ばかりです。

 今度の「第3番」は、その中でも特に、はじけるような明るさを持った曲です。釣り上げたばかりの魚がピチピチはねて、銀色の鱗がキラキラしているみたいな生命感がみなぎっています。


 山形Qも50回を超え、メンバーそれぞれが、だいぶ歳をとってしまって・・・いや、円熟してきていますが、「ぴちぴち」した気持ちで演奏したいと思います。
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初夏の匂い

2014-05-10 22:08:30 | 山形
 風薫る五月・・・。

 季節にはそれぞれの「匂い」があるものですが、そのなかでも五月の連休明けには、温度や湿度だけでない独特の「香り」がします。毎年の今頃に、この香りをかぐと「ああ、また一年が巡ったんだなあ」と実感するのです。今朝も、窓をあけたら・・・

・・・「たこ焼き」臭。


 ということで今年も、我が家の前の通りでは、日本三大植木市の一つである「薬師祭り」が始まっています。「植木市」とは言っても、近隣の広範囲を通行止めにしてズラッと立ち並んでいる露店に、植木の店はわずか。ふつうの、「大きなお祭り」なのです。

 期間中は、焼き鳥の煙と人混みをかきわけて家へと帰ります。


 そして3日間にわたる祭りも、ようやく今日、終わりました。山響定期を終えて、ただいま帰ってきましたが、家の前はすでに祭りの後。たくさんあった露店は、「匂い」だけを残して、ほぼ片づいていました。

 この「匂い」が消えると、また夏が一歩、近づくのです。
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完成作品

2014-05-08 08:56:12 | 音楽
 さてゴールデンウィークも終わり、山形での日常が戻ってきました。山響は今週末の定期演奏会のためのリハーサルが、昨日から始まっています。

 プログラムの一曲目は「未完成」。言わずと知れた、シューベルトの名作です。昔からどこの家でも、オーディオセットの横には、「運命」とカップリングされたレコードが立ててあるのが標準装備です。


 今はもう何も感じませんが、初めてこのタイトルを目にしたときは、なんと不思議な哲学的な題名なんだろうと思いました。「運命」だの「未完成」だのと、太字の漢字がバーンと書いてある帯の横で、やっぱり難しい顔をした外人が指揮棒で宙を指して目を閉じているジャケット(要するにカラヤンのLPです)は、子供心に印象が強かったのです。

 特に「未完成」はいったいどういう意味が込められているのかまるで想像もつかず、何かとてつもなく深い、恐ろしいもののような気がしました。


 ところが・・・実はこれが題名でも何でもなくて、ただ単に「途中までしかできてない」からこう呼ばれているのだ、と後で知ったときには呆然としたものです。

 人には「最後までちゃんとやりなさい」とか言っておいて、それはないだろう。大人とは実はいい加減なものなのだ・・・このやたらスゴそうに見える外人もきっと。(・・・カラヤンごめんなさい)。


 しかしさらにその後、「シューベルトは若くして亡くなったために、この曲を完成させることができなかった」という話を聞きました。
・・・なんとかわいそうに。そんなシューベルトのために、不完全な曲を心を込めて演奏してあげているこの外人は、やっぱり偉い人なんだ!

 レコードをかけてもらうと、かすかに聞こえる暗くて悲しげな低音が、今にも死にそうなシューベルトそのもののような気がして怖くなりました。


 ところがしかし、さらにその後・・・愛聴している未完成は「第8番」なのに、ほかに「第9番」があることを不審に思うようになる。それも「グレイト」などという元気な名前で、健康な人でも疲れてしまうような超大曲。

 だ・・・だまされた。やっぱりただの「つくりかけ」だったのか。


 いえいえ、世の中に「途中まで」の曲はいくつもありますが、親しみを込めて「未完成」と呼ばれている曲は、これだけです。つまり、これだけで「完全な作品」だということなのです。

 ・・・やっぱり素晴らしい名曲です。
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都会の神様

2014-05-06 11:17:54 | 雑記
 「曇り一時雨」の予報は見たものの、混んでいる電車で傘を持ち歩くのがどうしてもイヤなので、「雨が降ったら買えばいいや」と傘を持たずに楽器屋へ。

 調整と弓の毛の張り替えが済んだ楽器を受け取ったまでは良かったのですが、次の用事のために電車を降りると、結構な雨。連休でごった返している渋谷駅は、後から後から人が吐き出されてくるので、雨だからといって空を見上げて立ち止まることは許されません。

 東急本店の書店までは、この混雑だと時間がかかる。雨の中、楽器を持ちつつ雨に濡れて耐えられる距離ではない・・・。しかし、少したてば止みそうな気もするし・・・。「のれん街」に用は無いし・・・。

 迷いつつウロウロしてしていると、人だかりができていました。見ると・・・みんなキヨスクで傘を買っている。そして、色が変じゃない傘は、もうあと1本しかない!

「はい、1030円。」
・・・安堵とともに若干の敗北感をおぼえつつ、手にした傘を開いて構内を出る。


 しかし歩き始めると、心なしか、さっきより空が明るいような気がして心が暗くなる。まさか・・・と思う暇もなく、109の前の赤信号で雨は止みました。そして、青になる頃には日差しが。

 ・・・なんということか。混雑の中、持ち歩くためだけに、我先に千円出して、不要な荷物を買ってしまった。都会には魔物が住んでいます。


 本屋を出て、すっかり乾いた歩道を、楽器とカバンと傘を手に、ぐったりしながら駅へ向かって歩く。やはりゴールデンウィーク。人の波には、いつもより浮かれたような、ハイテンションが漂っています。


 すると向こうから、私以上に、波に乗れずに沈んでいる人影が歩いてきたのが見えました。どうやら、ホームレスのご老人です。人の波は、何事もなくスピードを変えずに、澱みを避けて流れています。

 ・・・「荷物を持たない、というのもまた、覚悟の要ることなのだ。」などと、つまらないことを考えながら脇を通り過ぎようとした時です。

 私の前を歩いていた、ふつうのおばさん(庶民的な服装をした、私より年輩の女性という意味です)が、老人にツカツカと近寄って声をかけたのです。

「ちょっと、アンタ。何してんの?」

・・・いきなり説教?知り合いでもなさそうだし、大丈夫なのか?オタオタする私と対照的に、周りの人混みは、何も気づかないように通り過ぎて行きます。

「ちゃんと食べてんの?・・・はい、これ!」

・・・おどおどと気弱な笑みを浮かべている老人の手に、女性は、がま口から出した千円札を押しつけたのです。それはさっき、私たちが争うように出していた千円札と同じとは思えないほど、大きく見えました。


 なんとなく恥ずかしくなり、傘を隠すように持って、そこを立ち去ったのでした。
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