映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ペーパーバード 幸せは翼にのって

2012年01月04日 | 映画(は行)
祈りであり、希望である“ペーパーバード”



                  * * * * * * * *

フランコ独裁政権下のスペインが舞台です。
喜劇役者のホルヘは、内乱のために最愛の妻と息子を亡くしてしまいます。
ホルヘはそんなためもあってか、体制への非難の言葉もためらわずに舞台で口にする。
そのため軍部からは反体制派の容疑を受け、
監視の目も厳しいのですが・・・。


そんなとき相方のエンリケが孤児ミゲルを引き取り、
3人の共同生活が始まります。
ホルヘはつい自分の亡くした息子を思い出してしまうので、ミゲルにはよそよそしかったのですが、
ホルヘを父親のように慕い、必死で芸を覚えようとするミゲルの姿に
次第に気持ちが和らいでいくのです。


喜劇役者・・・というのとはちょっと違うでしょうか。
彼らはお客を楽しませるためなら歌も歌うし、楽器も弾く。
手品に曲芸、何でもありです。
いわばマルチ芸人。
この職人芸にミゲルが心酔していくのもわかりますね。
この少年もまっすぐで素直、そして利発な様は見ていて気持ちがいい。


幸せは翼に乗って・・・という題名でハッピーエンドを予想してしまいましたが、
そうではありません。
けれど、生きていく限り人との別れはつきものですし・・・。


ラストのミゲルの姿に私たちは深く胸を打たれます。
血のつながりは関係ない。
それはもう家族といってもいい人と人との絆。
混乱の時代とともにあった一つの温かで悲しい思い出を
ミゲルはずっと持ち続けていたのでしょう。



ミゲル少年の胸元からはらはらとこぼれ落ちる折り紙の鳥。
それは亡き人への弔いであり祈りであり、
また、自らの希望でもあります。
日本の折り鶴に込める思いにも似ていますね。
ただし折り鶴では風に乗って舞ったりはしないので、
ここはやはりあのスタイルの鳥がいいのです。
印象深いシーンでした。


ペーパーバード 幸せは翼にのって
2010年/スペイン/123分
監督:脚本:エミリオ・アラゴン
出演:イマノール・アリアス、ルイス・オマール、ロジェール・プリンセプ、カルメン・マチ


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
スペイン内戦 (こに)
2012-01-05 13:15:51
スペインにこういう時代があったということを、つい最近まで知らないでいました
ホルヘたちは無事脱出できてラストに馬車の笑顔になるのだろうと思っていたのに、全く逆でホルヘが撃たれてペーパーバードが飛び散ったシーンは衝撃的でした
つながって (たんぽぽ)
2012-01-05 21:15:28
>こにさま
はらはらと舞うペーパーバードは本当に心憎い演出でした。
そういう思いを踏み越えて年月が過ぎ去り・・・というラストもよかったですよね。
人々の思いはこういう風に受け継がれて行くんですね。
血のつながりとは別に「思い」がつながっていくのもステキです。

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