エルヴィスに見初められて
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エルヴィス・プレスリーの元妻プリシラが1985年に発表した
回想録「私のエルヴィス」を基にした作品。
アメリカ陸軍基地のある西ドイツの地で暮らす14歳の少女プリシラ。
父親が軍人なのです。
当時すでにスパースターであるエルヴィスも徴兵制度により
この基地で兵役に就いており、彼が開くパーティーで2人は出会います。
そして間もなく恋に落ちる。
やがて2人は、プリシラの両親の反対を押し切り、
エルヴィスの実家の豪邸で一緒に暮らし始めます。
華やかで魅惑的な世界。
プリシラはエルヴィスのそばですごし、彼の色に染まって行きます・・・。
本作中エルヴィスのパフォーマンスシーンはほとんどなくて、
弱くて傷付きやすく、また時には癇癪を起こしたりもする、
プリシラから見た生のエルヴィス像が描かれます。
異国の地で出会った2人。
少し前にエルヴィスは母を亡くしていて、若干マザコンらしき所も垣間見えます。
そんな彼が、まだほとんど子どものあどけなさをみせるプリシラに何を思うのか。
そばにいて口出しもせず微笑んですべてを受け入れてくれるような、
そんな存在として「母性」的なものを見出していたのかも。
すり寄って来る女性ならいくらでもいた。
けれど、体の関係なしに安らげる存在としてプリシラを求めたのかな?と。
でもですよ、これはプリシラの物語。
少女が突然スーパースターに言い寄られて、夢中にならないわけがありません。
それはもう、仕方のないこと・・・。
私は紫の上を連想しました。
光源氏に見初められ、幼いうちに引き取られ育てられた、紫の上に境遇がよく似ている。
まるでエルヴィスのものにでもなったかのよう。
彼の好みに髪を染め、メイクをして、彼の好みの服を身につける。
家にはエルヴィスの家族がいて、もちろん使用人もいるので他には特にすることがない。
しかしエルヴィスは仕事に忙しく、ツアーで長期間不在だったりもする。
おまけに、やっと帰ってきたかと思っても、彼は体の関係を持とうとしない・・・。そ
の時すでに14歳ではないプリシラにとって、自分の存在は何なのか?と思ってしまいますよね。
そしてエルヴィスの華々しい女性関係をプリシラは週刊誌や新聞で知ることになります。
プリシラはどこか外へ働きに行こうとしてもエルヴィスが止めていたようです。
そんな長い同居期間の後正式に結婚したのはプリシラ22歳の時。
1人の男のために自分をなくし、囲い込まれた女の物語・・・。
あまりにも一方的で、これが本当に愛なのかな?と思います。
そうは言っても結局女はしたたかなのかも知れません。
7年の結婚生活の後、離婚。
その後彼女は女優として歩み出したりもします。
自分を取り戻すのに遅すぎなくて良かった!!
まだあどけなさの残る少女(なんともかわいらしい!!)から、
自分の道を見つけて歩み出す大人の女性までを演じたケイリー・スピーニーが素晴らしい。
<シアターキノにて>
「プリシラ」
2023年/アメリカ・イタリア/113分
監督・脚本:ソフィア・コッポラ
原作:プリシラ・プレスリー、サンドラ・ハーモン
出演:ケイリー・スピーニー、ジェイコブ・エロルディ、ダグマーラ・ドミンスク、アリ・コーエン
略奪度★★★★☆
満足度★★★☆☆
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