映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ベネデッタ

2023年12月06日 | 映画(は行)

奇蹟か、狂気か・・・?

* * * * * * * * * * * *

17世紀、レズビアンで告発された実在の修道女、ベネデッタ・カルリーニの
数奇な人生と、彼女に翻弄される人々を描きます。

実在の人物というところに、驚いてしまいますが・・・。

17世紀、イタリア、ペシア。
6歳でテアティノ修道院に入ったベネデッタは、純粋無垢のまま成人しています。
ある時、修道院へ逃げ込んできた若い女性バルトロメアを助け、
いつしか秘密の関係を持つように・・・。

そんな頃ベネデッタは、何もしないのに手・足に深い傷を負い血を流すという
「聖痕」を受け、イエスの花嫁になったと見なされ、修道院長に就任。
民衆からも聖女とあがめられ、強大な権力を手にします。

おりしも、空には彗星が現れ、都市ではペストが大流行。
混乱の町で、なおも権威を持つベネデッタですが・・・。

ベネデッタは幼少の頃から奇跡のような言動をする子供ではありました。
そのまま長じたのはよいとしても、いきなり世俗にまみれた女と関わり、愛欲を覚えてしまう・・・。
そしてある日「聖痕」が現れ、野太い声でキリストの声を伝える・・・。

これは奇跡なのか、それとも狂気なのか・・・。

思い込みだけで、自らの身が傷つき出血することなど本当にあるのか・・・? 
現代のわたし達はそんな奇跡が本当にあるとは到底思えないのですが、
神の摂理こそが真実と思う当時の人々ならば、聖痕もありなのかも。

けれどそれは一歩間違えば「魔女」の仕業として、処刑される危険も・・・。
ジャンヌ・ダルクのことも思い起こされます。
その真偽を判断するのは、時の「権力」で、
権力者において都合がよいか、悪いか、
つまりはそういうことで決定されてしまうわけで・・・
こわいですねえ・・・。

作中は彼女が自作自演で傷をつけた可能性も残しつつ、
神の奇蹟と同性愛のことがもつれ絡まって、
なんとも言えぬ雰囲気を生み出していました。

小さなマリア像があの行為に使われるというのが、なんとも隠微で冒涜的。

ベネデッタに修道院長の座を奪われたのが、シスターフェリスタ。
彼女は修道院長の座にありながら、神とか奇蹟には懐疑的。
ベネデッタのレズビアン行為を目撃し、中央へ訴えに行きます。
作中では最も「人間的」。
同じく修道尼であった娘の自殺や、
自ら感染しこの地にペストを運び入れてしまったこと・・・など、悲劇続き。
この人こそ救われるべきように思えますが、神は力を貸したりしません・・・。
さすがのシャーロット・ランプリングの名演技でした。

 

<WOWOW視聴にて>

「ベネデッタ」

2021年/フランス/131分

監督:ポール・バーホーベン

脚本:デビッド・バーク、ポール・バーホーベン

出演:ビルジニー・エフィラ、シャーロット・ランプリング、ダフネ・パタキア、
   ランベール・ウィルソン、ルイーズ・シュビヨット

 

歴史発掘度★★★★☆

狂女度★★★★☆

奇蹟度★★★★☆

満足度★★★★☆



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