映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

イフ・アイ・ステイ 愛が還る場所

2014年10月15日 | 映画(あ行)
これもまた、「愛おしい時間」



* * * * * * * * * *

高校3年のミア(クロエ・グレース・モレッツ)はチェロ奏者になるため、
ジュリアード音楽大学を目指しています。
優しい両親と弟。
そして、ロックバンドで注目を浴びている彼氏・アダム(ジェイミー・ブラックリー)。
大学に入ればアダムと離れ離れになってしまうのが不安ですが、
それでも、彼女の未来は希望に満ちていたはずでした。
しかし、ある雪の朝、
家族と一緒に乗っていた車に対向車が激突。
ミアは家族をみな失い、自身も生死の境を彷徨う昏睡状態となってしまいます。



本作では、昏睡状態の体から抜け出た魂のミアが、
家族のことやアダムとの出会いを回想しながら、
彼女を心配して病院に訪れる様々な人々の様子を見ています。
もしここで目を覚まし生き残ったとしても、
家族は誰もおらず、孤児になってしまいます。
そのような絶望を生きることができるのだろうか・・・。



ある看護師が耳元でささやきます。

「生きるのも死ぬのも、あなたの意志次第なのよ・・・」

息子夫婦と孫の男の子を失い悲嘆にくれている祖父は、けれども気丈にも言う。

「辛いのなら、そんなに頑張らなくてもいいんだよ・・・」

ミアは過酷な現実を生きる気持ちが次第に薄れていきますが・・・



事故があって、昏睡状態の彼女がいて、
そこから回想に入っていくという今作の構成が、非常に成功していると思います。
先日見た「アバウト・タイム 愛おしい時間について」の
「愛おしい時間」という言葉が胸に浮かんできました。
こんなことが起こってしまった時から考えると、
弟が生まれた時のこと、
チェロに初めて触れた時のこと、
アダムとの出会い、初めてのデート・・・
何もかもがかけがえなくなく愛おしく感じられる。
そういう情感があふれる本作、
私はどのシーンもウルウルさせられてしまいました。
しっとりしたチェロの音色も素敵ですし、
けれどアダムのバンドも加わったところで、
上品過ぎず現代的に仕上がっているのもいいですね。
何にしても挿入される数多くの音楽が
またまた私の涙腺を刺激します・・・。



天才子役のクロエ・グレース・モレッツが、
子役から一人の女優へと変身するさまを見たような気がします。



「イフ・アイ・ステイ 愛が還る場所」
2014年/アメリカ/107分
監督:R・J・カトラー
出演:クロエ・グレース・モレッツ、ミレイユ・イーノス、ジョシュア・レナード、ジェイミー・ブラックリー

音楽性★★★★☆
かけがえのない時間性★★★★★
満足度★★★★☆


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