映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

夜、鳥たちが啼く

2023年06月17日 | 映画(や行)

結婚していないのに家庭内別居

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私、佐藤泰志さん原作の作品は見逃さないようにしていたつもりなのですが、
本作、見損ねていたようです。

若い時に、とある賞を受賞したけれど、その後鳴かず飛ばずの作家、慎一(山田裕貴)。
同棲していた恋人に去られ、鬱屈した日々を送っています。
そんなところへ、慎一の友人の元妻・裕子(松本まりか)が
幼い息子アキラを連れて引っ越してきます。
慎一は、恋人と暮らしていた家を母子に提供し、
自身は離れのプレハブで寝起きすることに。

自身の体験や心情を元に小説を描く慎一は、自分の身を削るように文章を綴ります。
夜な夜なパソコンに向かい、もがき苦しむ毎日。
一方、裕子はアキラが眠ると町へ繰り出し、男たちと夜を過ごしていました。
2人は互いに深入りしないよう距離を保っていましたが・・・。

本作は、この売れない作家・慎一と、原作者・佐藤泰志さんが、
かなり重なっているのかもしれない・・・と思いながら見ました。

あんな風にして、浮かばない言葉を無理矢理のように生み出しながら、
著者も著作を続けていたのかなあ・・・などと。
自分の奥底の暗い部分としっかり向き合わなければならないのは、
つらいことだと思います。

さて慎一は、親しくしていた友人一家の離婚に当惑しつつ、
行き場を失った元妻と息子に家を提供したのでした。
しかし、その元妻が松本まりかさんと来れば、
何もないわけがないじゃありませんか!!

極力、深入りしないようにしていた2人だけれど、やはり次第に接近していく。
無邪気に親しみをみせる子供のために、
食事を共にしたり、たまにどこかへ遊びに出かけたり・・・と、
まだ何もない2人ではあっても、形の上で「家族」のようになってしまうのです。

けれど、なし崩しになれ合った関係になりたくはない2人。
そんな2人は自分たちのことを「結婚していないのに家庭内別居」と呼びます。
人と人との関係のあり方は様々。
特に近年は・・・。
むしろこういう方が、長く続くような気もします。

そして、私小説的な話であっても、必ずしもネガティブなものでなくてもよいのでは?
という気もしてきました。
先のことを考えすぎずに、成るようになる、ということでも。

<Amazon prime videoにて>

「夜、鳥たちが啼く」

監督:城定秀夫

原作:佐藤泰志

出演:山田裕貴、松本まりか、アキラ、中村ゆりか

 

家庭内別居度★★★★☆

満足度★★★★☆



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