【なぜ?】日本一高い!大阪市の65歳以上の介護保険料 地域差が生じる原因と突出して高い背景とは?
読売テレビニュース5/18(土)9:00
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厚生労働省が14日に発表した、65歳以上の高齢者が支払う介護保険料について、大阪市の基準額が初めて9000円を超え、全国の自治体の平均と比べても3000円以上高く、全国でも突出して高い金額となりました。自治体によって異なる介護保険料はなぜ地域差が出るのか、なぜ大阪は高くなってしまったのか、その背景を取材しました。(報告:加藤沙織記者)
■ワースト3が大阪に集中!大阪市は全国平均と月額3000円以上の差
「ほんまに困る」
「私の力ではどうしようもないやん」
「元気でいるしかない」
度重なる介護保険料の改定に、特に高齢者から憤りや困惑の声が聞かれました。
全国最高額の大阪市の保険料の基準額は、3年前の改定から1155円アップした月額9249円。1年で10万円以上を負担することになる金額です。全国平均の6225円と比べて3000円以上高く、最低額の東京都小笠原村(3374円)とは約2.7倍の開きがあります。
さらに、全国ワースト2位は大阪府守口市の8970円、3位は大阪府門真市の8749円。いずれも3年前から2000円以上アップしました。京都市の7160円、神戸市6580円と比べても、大阪市とその周辺の自治体が突出して高いことが分かります。
■40〜65歳は健康保険から天引き 65歳以上は自治体で年金から天引き
介護保険料になぜ“地域差”が出るのでしょうか。
そもそも介護サービスにかかる費用は、利用者負担の1〜3割を除き、半分は国や地方自治体から、残りの半分は65歳以上の「第1号被保険者」と40〜64歳までの「第2号被保険者」で分担することになっています。
例えば、第2号の65歳未満で会社に勤めるサラリーマンの場合、保険料は勤務先の事業者で折半となり、加入する健康保険組合が給料から天引きして保険料の徴収を行います。支払う額は所得や健康保険によっても異なり、この場合、住んでいる自治体によって大きな差があるわけではありません。
他方で、65歳以上の第1号については、18万円以上の年金がある場合は年金からの天引き、18万円未満の場合は個別の振り込みとなり、各自治体が3年ごとに基準額を見直しています。この基準額は、自治体ごとで高齢者の人口や介護事業者が提供しているサービスの数によって変わってくるのです。
■大阪市が抱える事情「一人暮らし」と「低所得」の高齢者の多さ
大阪市の場合、この基準額の算定にかかる3つの数字が大きく影響しています。
1つ目は「一人暮らしの高齢者世帯が多い」ことです。独居の場合、食事や買い物、掃除などに支障をきたすと介護サービスに頼らざるを得ず、症状の初期の段階からサービスを利用する人が増える傾向にあります。
2つ目は「住民税の非課税世帯=低所得者層が多い」ことです。保険料は所得によって個別に異なりますが、低所得者からの保険料の徴収が少なくなれば、財源を維持するために全体の保険料は高くなってしまいます。
3つ目は「要介護認定率の高さ」です。要介護者が多ければ多いほど、必然的にサービスを維持するために保険料は高くなります。
大阪市は全国平均と比べても1人暮らしや低所得の高齢者が多く、要介護者が多いため、制度が始まった2000年の基準額は3381円だったのが、年々保険料が増加。24年間で実に2.7倍に跳ね上がり、全国平均との差が年々大きくなっていったのです。
■補助金の支給・余剰金の切り崩しに踏み切る自治体も
ただ、保険料をどこまで引き上げるかは「自治体次第」という側面もあります。
政令市の中で保険料の上げ幅を低く抑えたのが静岡県浜松市です。浜松市では、要介護度を下げることができた一部の事業者に最大20万円の奨励金を支給する制度を昨年度まで実施しました。事業者にとっては、サービス利用者が増えるほど売り上げは増えますが、利用者の健康を積極的に促し、サービスの利用の減少を奨励金で補うことで、市全体の費用負担が小さくなることにつながります。
また東京都港区は、全国の中でも屈指の高額所得者が多い自治体ですが、高所得者の保険料を基準額の6倍に設定するなど、収入に応じた負担配分の徹底を進めたことで、保険料の上昇率を抑えています。
滋賀県大津市は、物価高が続く中、高齢者の負担を軽減するため、介護給付費の「積立金」を切り崩すことを決めました。余剰金を使うという、いわば“禁じ手”のような施策ですが、これにより、3年間の介護保険料の基準額は10%下がることになりました。
■「団塊の世代」高齢化でさらに保険料は上昇傾向…大阪市長「負担率の変更は検討せず」
これに対し、大阪市の横山英幸市長は15日、「(高所得者などの)負担率を変更することは検討していない。変えたとしても誰かの負担が変わるだけなので、負担の総額を減らす必要がある。介護を受けなくても暮らしていける街にすべき」との見解を示しました。
ただ、高齢化は全国的にさらに進み、特に人口が多い「団塊の世代」が75歳以上になることで、介護サービスに必要な財源は今後ますます増えることが想定されます。
大阪市は2040年度には月額9900円程度に上がると試算していますが、物価高や人件費が年々上がる中、保険料はさらに増える可能性もあります。
市民一人一人に増え続ける負担をどのようにおしなべて抑えていくか、制度の在り方を含めた議論が必要な時期にきています。
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