ブログ 「ごまめの歯軋り」

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文芸散歩 大畑末吉訳 「アンデルセン童話集」 岩波文庫

2013年06月04日 | 書評
デンマークの童話の父が語る創作童話集 156話 第25回

43) おとなりさん
村はずれの沼にバラの花が生きることを楽しむかのように映っています。バラの木の前の農家の屋根に生まれたばかりの数羽の小雀と母親スズメがピーピーとお話をしています。そうバラの花とスズメはお隣さんでした。人が美しいバラの花を胸に挿したりするのを小雀がみて羨ましがっていますが、母親スズメはバラの花を快く思いません。あれは人の目と鼻のためにあるのだといいました。ナイチンゲールもバラの美しさを褒めたたえて歌いますが、母親スズメはある屋敷の庭で飼っているクジャクが一番美しいのだといいました。ある日曜日母親スズメが子供を巣に残して出かけましたが、人間の子供が仕掛けた鳥網に引っ掛かり捕えられました。百姓家の作男が母親スズメに金箔を貼り付けて「金の鳥」に化粧して放ちました。ほかの鳥の好奇心の的になり、母親スズメは体中を鳥に突かれて死に絶えました。小雀らは巣立ちをして百姓家を離れましたが、そのとき百姓家は火事で丸焼けになり、残ったのは煙突と焼け焦げた梁と家の前のバラの木だけでした。ちょうど絵描きさんが通りかかり、その美しいバラの木と焼けた百姓家をスケッチしました。ある屋敷の庭に鳩がいるところに3羽の若い雀がが来ました。その3羽のスズメは百姓家の屋根にいた小雀だったのです。若い雀らが屋敷の部屋に入ると、壁に焼け落ちた百姓家とその前のバラの木の絵が描かれており、この部屋は絵描きさんの部屋だったのでした。それからずいぶん年が過ぎ、一番上のスズメはもう年寄りになっていましたが、一度は都会に出てみたいといってコペンハーゲンに行きました。立派な建物であるトールヴァルセン記念館の庭で兄弟スズメと出会い、みんなでトールヴァルセンの墓に立ちました。するとなんと墓のそばにお隣さんだったバラの木が美しい花を咲かせていました。それはあの画家がバラの株をこの墓のそばに移したのでした。再会を果たしたバラは「こうして花を咲かせて、昔の友達にも会え、なんと恵まれたことでしょう」といったとさ。
(つづく)


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