ブログ 「ごまめの歯軋り」

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読書ノート 桑原武夫訳編 ディドロ・ダランベール編 「百科全書-序論および代表題目-」 岩波文庫

2011年11月23日 | 書評
フランス革命を準備した、フランス啓蒙思想家の集大成 第3回

 1750年10月ディドロの手で「百科全書の趣意書」が書かれ、この仕事の意義と目的を説明した。この18世紀が必要とする辞典は、自学する人々を啓蒙するだけでなく他人の教育のために働く人々を手引きするのに役立つ辞典を目指すとされた。そして被わなければならない領域は広大であるので、分担と仕事の集団性が強調された。また集団性をより強固にするためには学問の相互交渉を図ることが編集者の主要任務であると書かれている。「情報はひとりではいられない 編集とは関係の発見である」という松岡正剛氏の「知の編集工学」(朝日文庫)の考えと同じである。あるいは松岡氏が百科全書から引用した言葉かもしれない。1751年から百科全書第1巻が刊行された。これに対してイエズス会の攻撃が起こり、1752年第2卷が出た時点で、国王の名において発行が禁止された。ところが、政府当局のマンゼルブ、王の寵姫ポンバドゥール夫人などの援助もあって、禁止は解かれ1753年第3巻が刊行された。この事業が共同作業であるための困難もあり、1757年にダランベールが「ジュネーヴ」の項を執筆すると、ルソーらがそれに異議を唱えて協力を拒否し、ダランベールおよびそれに同調したヴォルテールも執筆をやめてしまった。脱落者が相次ぐ中で、一人多くの項目を引き受けたのがジョクールであったという。それに追い打ちをかけるように、1759年には『百科全書』の出版許可そのものが取り消され、ドルバックらの協力のもと、ディドロは非合法的に編集作業を続けた。
(つづく)


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