ブログ 「ごまめの歯軋り」

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読書ノート ポアンカレ著 河野伊三郎訳 「科学と仮説」 (岩波文庫)

2016年06月05日 | 書評
科学の諸分野で「仮説」の果たす重要な役割 第3回

第1篇 「数と量」
第2章 数学的量と経験


この書は数論について述べたもので、数学者が数の連続についてどう考えるかである。つまり解析学についてである。吉田武 著 「虚数の情緒ー中学生からの全方位独学法」(東海大学出版部 2000年)に詳しく述べているので、概略を参照してほしい。自然数→整数→有理数(分数)→無理数→実数→超越数→虚数という流れである。数学的連続とは切断できないことで、点より線という集合に存在する。数学的連続は物理学や形而上学の連続とは別のものである。無理数はクロネッケルは分数と無理数の集合を考えたが、数学的連続は純粋に理知の創造であって、経験は何の関係もない。数学は物理学と違って対象そのものを研究しない。対象間の関係であって、対称を置き換えるこにとは無頓着である。デデキントが無理数を定義した。物理的連続とは、二つの数の差異を測定しうることが前提である。これに対して数学的連続の概念とは、理知の力で創造されたのである。連続には3段階の定義ができる。第1段階とは偶数と整数全体の集合は等しいので、整数の2つの間に中間の有理数の項を入れ続けることができる。これが第1段階の数学的連続(無限)である。第2段階の連続とは有理数の間に無理数を挿入することである。クロネッカーは2つの有理数の組みの共通な境界と見なされる無理数があると考えた。ここまでは数の大小関係で順序づけてきた。ところで2つの項をとってその間隔εというものを測らなければならない。εをn個に分割することができ、εを無限小にしてもなお新たな項を挿入できる。これが第3段階の連続(連続関数)を定義できる。これが位相解析(限りなくのレベル)と呼ばれる。こうして定義された連続に量の測定を導入した時、はじめてその連続は空間となり、幾何学が生まれる。

(つづく)