ブログ 「ごまめの歯軋り」

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読書ノート 目で見る科学2 野本陽代・R.ウイリアムズ著 「ハッブル望遠鏡がみた宇宙」(岩波新書カラー版)

2014年04月04日 | 書評
ハッブル望遠鏡がみたもの 第1回

地上約600km上空の地球周回軌道をまわる「ハッブル望遠鏡」(長さ13.1メートル、重さ11トンの筒型)は、1986年のスペースシャトルチャレンジャー号の悲劇的な事故のために打ち上げ延期を余儀なくされたが、1990年予定より4年遅れて打ち上げられた。ところが直後に直径2.4mの反射鏡の周辺球面誤差のために球面収差という深刻な光学的欠陥が分かり、光軸周りの光だけを利用するソフト変更で15%の暗い望遠鏡で使用したが、1993年第1回サービスミッションで補正光学系を挿入して収差問題は解決した。それ以来バッフル望遠鏡は順調に機能し、数々の予想もしなかった発見がなされ、ブラックホールやビッグバンの情報が得られつつある。宇宙は超高温・超高密度な状態から、ビッグバンと呼ばれる爆発的な膨張によって誕生した。それから140億年の間に、銀河・星・惑星が形成され、その惑星の一つに生命が誕生した。この宇宙の進化を極めるのが天文学である。天文学者にとって主たる研究手段は望遠鏡であり、地球大気の影響を受けない明るい望遠鏡は夢であった。1970年代に始まるNASAのスペースシャトル計画によって地球周回軌道を回る望遠鏡の可能性が開け、アメリカ科学アカデミーの計画がやがてバッフル望遠鏡として実現した。第1回の修理が終わったばかりのバッフル顕微鏡は1994年1月より素晴らしい画像を送り始めた。オリオン星雲・渦巻銀河M100・大マゼラン星雲などこれまで見たことのない鮮明なカラー写真を送ってきた。それ以降天文学の学界や会議で発表される研究はハッブル望遠鏡なしでは語られないほどである。ハッブル望遠鏡によってはじめて観察できるようになった成果は、誕生して間もないころの姿をとどめる遠くの宇宙であった。バッフル望遠鏡は当初15年の運用期間の予定(1990-2005年)であったが、次のようなサービス修理を行いながら、今なお運用されている。
1993年12月:初のサービスミッション (SM1) (STS-61) 。球面収差修正用の光学系であるCOSTARを設置。これにより鮮明な画像が得られるようになった。また、太陽電池パネルの交換も行なった。
1997年2月:2度目のサービスミッション (SM2) (STS-82) 。FOSの代わりにNICMOS(近赤外カメラ及び多天体分光器)や、GHRSの代わりにSTIS(宇宙望遠鏡撮像分光器)の設置などを行った。
1999年11月:6台ある姿勢制御用ジャイロスコープのうち4台目が故障し、観測不能に陥る。
1999年12月:3度目のサービスミッション (SM3A) (STS-103) 。ジャイロスコープ6台全てを交換、主コンピュータの交換などを行った。
2002年3月:4度目のサービスミッション (SM3B) (STS-109) 。新型メインカメラACS (掃天用高性能カメラ) の取り付け、太陽電池パネルを新型のものに交換、NICMOSの冷却装置の設置など。
2004年1月16日:アメリカ航空宇宙局 (NASA) は今後、ハッブル宇宙望遠鏡の修理を行なわないと発表
2006年10月31日:方針を転換し、5度目のサービスミッションを行い、2013年まで利用を続けるための修理を行うことがNASAより発表された。
2007年1月23日:ACSが再度故障。WFPC2などの旧型機器は動作し続けているため、機能は劣るものの代用が可能。
2009年5月11日:最後のサービスミッション (SM4) (STS-125)。WFPC2をWFC3(Wide Field Camera 3)へ交換、故障したACSとSTISの修理など大幅な修理でハッブルは「今までで最高の性能」(NASA)になり、少なくとも2014年まで寿命が延びる。
ハッブル宇宙望遠鏡の後継機としてジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡 (JWST) の打ち上げが2018年に予定されている。主鏡の直径は約6.5mであり、ハッブル宇宙望遠鏡よりもさらに高性能化が図られている。

(つづく)