ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

読書ノート 佐藤栄佐久著 「知事抹殺」 平凡社

2012年06月21日 | 書評
原発と地方自治で国と「闘う知事」が特捜検察権力と闘う 第2回

序(2)
 佐藤栄佐久元福島県知事のプロフィールおよび知事抹殺の原因とも言われるプルサーマル原発反対問題については、佐藤栄佐久著 「福島原発の真実」 (平凡社新書 2011)に詳しく説明したので、本書の紹介からは省く。なぜなら原発をめぐる闘いは本書の第3章、第4章を占めるが、「福島原発の真実」 (平凡社新書)には、本書の第3章と第4章をそっくり引き写して更に書き足しているので、原発問題についてはこちらの書のほうがより充実しているからである。「知事抹殺」という本は大きく4つに分かれる。①生い立ちから日本青年会議所活動、参議院議員選挙と福島県知事選挙活動、②原発をめぐるプルサーマル計画凍結活動、③道州制と全国知事会活動、④木戸ダム収賄事件と裁判闘争である。本書の題名からして中心はいうまでもなく④木戸ダム収賄事件と裁判闘争にある。佐藤栄佐久氏の政治家としての活動は、福島県という地方自治体の立場から原発に関しては経産省、道州制に関しては総務省・文部省、裁判に関しては検察庁という官僚機構(国家機構)との闘いであったという。国家機構の第1権力は内閣と行政、第2権力は議会、第3権力は検察・裁判所となっており(三権分律)、日本の官僚機構は内閣の弱体をいいことにして、政府というと内閣なのか官僚機構なのか判別し難いところがある。新聞などで政府発表というとそれは官僚機構の事と思えば間違いない。内閣の考えに反することが政府発表として出てくることも多くなった。内閣はお飾りなのか、議院内閣制は幻覚で、実質は官僚内閣制であったという意見がある。戦前はたしかに超絶内閣という議会に基盤をおかない天皇勅命内閣であったから、内閣=官僚制には国家治政者の意図が露骨に出ていた。戦後建前は議院内閣制になって議会の多数派が内閣を構成することになったが、急に権力を授かった議会のレベルの低さもあいまって政争をのみ事とする状況で、吉田内閣、佐藤内閣、中曽根内閣、小泉内閣を除いて悉く短命である。2006年以降は毎年内閣は変わり、派閥によるポスト争いから大臣の寿命は半年以下という。日本の統治者が前面に出てこないなかで、議院内閣制なのか官僚内閣制なのか無責任体制が続いている。こういうときは官僚が軍部と組んで議会を廃止して権力を一元支配する場合(ファッシズム)が一番怖いのである。最近の安倍首相や石原東京都知事以来の右翼的傾向と、自衛隊幕僚の右傾的発言は危険な兆候である。官僚が一番軍部と組みやすいのは鉄則である。そして責任は全部軍部のせいにする。
(つづく)

文芸散歩 村松 剛 著 「帝王後醍醐」 中公文庫

2012年06月21日 | 書評
建武の中興から南朝滅亡まで 後醍醐帝の光と影 第16回

2の巻) 元弘の乱と後醍醐帝隠岐配流 (3)
 元弘の戦乱の実質的指揮官は大塔宮護良親王であった。戦乱は2ヶ月で終息したが、正成の対応に兵力の1/3を駐屯させて幕府軍主力は撤兵した。大塔宮は吉野に向かったが、吉野の執行は鎌倉側であったので山伏の案内で十津川の奥をさ迷った。元弘の乱による公卿の逮捕者は、藤原師資、万里小路宣房、洞院公敏、三条公明、北畠具行、洞院実世、平成輔ら10名となり、出家2名、四位以下の逮捕者2名であった。後醍醐帝は承久の乱に倣って隠岐へ配流、尊良親王は土佐へ、宗良親王は讃岐へ、恒性親王は越中へ、静尊法親王は但馬へ配流となった。帝に付き従ったのは千種忠顕と世尊寺行房の二人である。後醍醐帝の流刑後、翌年1332年3月22日に光厳院が即位した。6月には日野資朝、日野俊基、北畠具行、平成輔の四名が斬首された。ほかに流罪、軟禁された公卿は8名に及んだ。6月19日には撤兵は完了したが、それと同時に大塔宮の軍が伊勢に進出したのは6月24日であった。
(つづく)

筑波子 月次絶句集 「山村霧雨」

2012年06月21日 | 漢詩・自由詩
六月山村霧雨餘     六月山村 霧雨の餘

農夫叱馬破雲鋤     農夫馬を叱し 雲を破て鋤く

草肥径畔黄梅落     草肥え径畔に 黄梅落ち
 
水漲秧田密又疎     水漲り秧田は 密又疎なり


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(韻:六魚 七言絶句仄起式  平音は○、仄音は●、韻は◎)
(平仄規則は2・4不同、2・6対、1・3・5不論、4字目孤平不許、下三連不許、同字相侵)

CD 今日の一枚 綾戸智絵アルバム 「SEVEN]

2012年06月21日 | 音楽
・・・大阪が生んだ天性のジャズボーカル・エンターテイナー・・・
綾戸智絵アルバム 「SEVEN」

1. Born to be wild 2. I can't stop loving you* 3. Tennessee waltz* 4.Do it again 5.My dear life* 6. Was ich dir sagen will 7. Desperado 8. when the saints go marching in 9.I fall in love too easily 10. Trouble in mind 11. Angie
ヴォーカルとピアノ:綾戸智絵
DDD 2004 ewe


全曲ジョン・ビーズリーがアレンジ、選曲・構成には智絵の手は入っていないそうだ。アルバム名SEVENはデビュー7周年記念を意味する。
・ロック調リズムBorn to be wild
・アコースティックベースは軽い調子Tennessee waltz
・バイオリン・トランペットがメロドラマ風にい展開し智絵の太い声がドラマを語る。(冷えた紅茶を飲み干し、手を振りながら分かれた)Was ich dir sagen will
・もう若くはないバラード Desperado
・久しぶりの智絵の弾き語り、静かな別れの曲Angie