ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

生活保護相談 役所で玄関払い 

2008年07月22日 | 時事問題
asahi.com 2008年7月22日3時1分
生活保護、自治体窓口で申請45% 国の抑制策背景に
 全国各市と東京23区の生活保護窓口へ相談に訪れた人のうち、生活保護の申請をした割合(申請率)は06年度、45%程度にとどまっていた。朝日新聞社が情報公開法に基づき厚生労働省から資料を入手した。バブル崩壊以降、生活保護を受ける人は増え続ける一方、国は社会保障費の抑制策を進めており、窓口で申請をさせない違法な「水際作戦」の広がりをうかがわせる。 本人の意思に反して申請を受け付けない行為は生活保護法違反となる。
 06年度は34万8276世帯が相談に訪れ、うち15万5766世帯が申請。申請率は全国平均で44.7%だった。政令指定市は41.2%、それ以外は46.7%で、都市部の方が低い傾向にあった。

山上憶良 万葉集「貧窮問答」
短き物を 端きると 云えるが如く 楚(しもと)取る 里長(さとおさ)が声は 寝屋戸(ねやど)まで 来立ち呼ばひぬ 斯(か)くばかり 術無きものか 世間(よのなか)の道

まさに役人の声は鬼のように聞こえた事でしょう。生活が成り立たないから役所に恥を忍んで相談にきているのです。役所では上から福祉予算削減の方針で、申請を受け付けるなという。かくばかりすべなきものか、世の中の道と嘆息するのです。生活保護を諦めて「死ねと云うのか」といって自死を選んだ人もいる。これはもはや国ではない。

風雑(まじ)へ 雨降る夜の 雨雑へ 雪降る夜は 術(すべ)もなく 寒くしあれば 堅塩を 取りつづしろひ 糟湯酒 うち啜ろいて 咳(しわぶ)かひ 鼻びしびしに しかとあらぬ 髭かき撫でて 我を除(お)きて 人はあらじと 誇ろへど 寒くしあれば 麻襖(あさぶすま) 引き被(かがふ)り 布肩衣(かたぎぬ) 有りのことごと 服襲(きそ)へども 寒き夜すらを 我よりも 貧しき人の 父母は 飢え寒(こご)ゆらむ 妻子(めこ)どもは 吟(によ)び泣くらむ 此の時は 如何にしつつか 汝(な)が世は渡る


天地(あめつち)は 広しといへど 吾が為は 狭(さ)くやなりぬる 日月(ひつき)は 明(あか)しといへど 吾が為は 照りや給はむ 人皆か 吾のみや然る わくらばに 人とはあるを 人並に 吾も作るを 綿も無き 布肩衣の 海松(みる)の如(ごと) わわけさがれる かかふのみ 肩にうち懸け 伏廬(ふせいお)の 曲廬(まげいお)の内に 直土(ひたつち)に 藁(わら)解き敷きて 父母は 枕の方に 妻子どもは 足の方に 囲み居て 憂え吟(さまよ)ひ 竃(かまど)には 火気(ほけ)ふき立てず 甑(こしき)には 蜘蛛の巣懸(か)きて 飯炊(かし)く 事も忘れて ぬえ鳥の のどよひ居るに いとのきて 短き物を 端きると 云えるが如く 楚(しもと)取る 里長(さとおさ)が声は 寝屋戸(ねやど)まで 来立ち呼ばひぬ 斯(か)くばかり 術無きものか 世間(よのなか)の道 世間を憂しとやさしと思へども 飛び立ちかねつ鳥にしあらねば

読書ノート 坂村 健著 「ユビキタスとは何か」 岩波新書

2008年07月22日 | 書評
身の回りのあらゆる物に番号をつけネットワークに接続するインフラ技術 第9回
3)インフラ技術と制度設計  (2)

 スウェーデン・ブラジルのような市民IDカード一つで色々のサービスが受けられるのが優しい社会ではないだろうか云う著者の主張は頷ける。2006年に安倍内閣は「イノベーション25」を立ち上げたが、日本のイノベーションには社会システムが見逃されてきた。イノベーションには製品・方式・制度の三分野がある。社会インフラとはイノベーションのことであり、まさに新たな標準を打ち立てることだ。アップル社はデジタル音楽配信制(複数端末へのコピーを許すという著作権法に寛大なシステム)のなかでi-Podの圧倒的シェアーを作った。コピー禁止技術(DRM)を排した楽曲の配信を始めた。技術にあわせて制度を変えられない日本では考えられないシステムです。逆に著作権は著しく保護され永久に近い権利まで(75年とか)が主流になって、電子図書館も開店休業である。従来型の産業政策は飼い開発目標を定め、シナリオを作り要素技術をピックアップして、関係会社にばら撒くというスタイルだった。欧米ではイノベーション指向政策の背景には、目標指向型の政策立案自体が時代遅れと云う認識がある。経産省が2004年に起した1個5円のRFID型電子タグ開発という「響きプロジェクト」と云う典型的な従来型産業政策があった。ところが想定していたRFID仕様が変わり、需要もなくなって時代の急速な変化に翻弄される結果になった。英国ではイノベーション阻害要因の貿易産業省を解体しようという改革案まであるそうだ。

読書ノート 養老孟司著 「養老訓」 新潮社

2008年07月22日 | 書評
養老先生が説く 老いの快適な生活 第8回
第七訓 「年寄りが生きるのに金はいらない」

リスクに万全な社会はコストが高くつきます。飛行機が落ちたら運が悪かったで済ましましょう。年金よりは長生きすることがとくです。お金を稼ぐのには教養はいらないけれど、お金を使うには教養が要る。年寄りは持っている金を有意義に使えばいい。日常が無事に過せれば、実はお金は要らない。お金よりは健康です。年寄りは田舎で暮らそう、僻地ではなくそこそこの田舎で安らかに土をいじくって体を動かそう。


文藝散歩 「宇治拾遺物語・十訓抄」 小林保治ら[校訂・訳] 小学館

2008年07月22日 | 書評
日本の中世に生きた人間の人生色々・男も色々・女も色々 第32回
十訓抄

第二 驕慢を避けるべき事

人をバカにして、世間の流れというものに逆らっていては驕慢になる。自分の心のままには世間は動かないことを知るべきだ。

小野小町の落魄
小野小町が得意なころは、彼女のもてはやされ方は大変な物だった。錦を着て、珍味を食し、体には香を焚き染め、口には和歌を口ずさみ、男を軽蔑して、天皇の女御を希望していた。しかし親、兄弟に死に別れ頼る物がいなくなると、栄光は消えうせ、容色も衰え、男達は相手にせず、しだいに落ちぶれて最後は野山をさ迷う有様であったといわれている。

自作漢詩 「登禅堂」

2008年07月22日 | 漢詩・自由詩


千形萬象火炎     千形萬象 火炎の中

石塔伽藍聳半     石塔伽藍 半空に聳ゆ

大地生霊乾欲死     大地生霊 乾て死せんと欲し

悠悠處作奇     悠悠處に 奇峯を作す

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(赤い字は韻:一東 七言絶句平起式  平音は○、仄音は●、韻は◎)
(平仄規則は2・4不同、2・6対、1・3・5不論、4字目孤平不許、下三連不許、同字相侵)