3月下旬のある祝日に、この町を訪ねてみた。江戸沢町から上相川の方へと道路を登っていくと、やがてこの町の建物群が道路の両脇に姿を現す。その中に実に個性的なおうちを見つけた。年代を感じさせる色褪せた日章旗がはためき、石臼を積んだ壁には雪道走行用のタイヤチェーンが巻き付けられ、玄関先には「注意」と書かれた看板が貼り付けられていた。確かに道路が下り坂でカーブしているので車に突っ込まれないようにと、用心で貼り付けたのであろう。壁には更にオレンジ色のブイがぶら下げられ、屋根の上には何故か自転車のタイヤまで置かれていた。そして、軒下には昔田植えを手植えしていた時に使用した六角形の細長い道具(ハッタン)が二個吊るされていた。干された洗濯物を見たら女性用のカーデイガンなどがあったのでご家族でお住まいのようだ。どこかの前衛芸術家のおうちだろうか?特異なキャラとオーラをこれでもかというぐらいアピールしまくっている。そして壁の一角には「旅路」と書かれた板がはめ込まれていた。「旅路」?「旅路」?、「旅路の果てまでついて行くう~♪、くちなしのお~♪、白い花あ~♪、おまえのよお~なあ~♪、はあ~なあ~だあ~ったあ~♪」とでも口ずさみたくなりそうだ。このおうちの真向かいにはどっしりとした立派な蔵があった。
廃棄された冷蔵庫、洗濯機、テレビなどが庭に山積みとなったおうちもあった。「南沢町」とは実に面白い町だ!時計を見たら午前10時半。ようやく新聞配達のおじさんがバイクに乗りながら新聞の宅配作業を開始していた。