【岩崎俊夫BLOG】社会統計学論文ARCHIVES

社会統計学分野の旧い論文の要約が日課です。

時々、読書、旅、散策、映画・音楽等の鑑賞、料理とお酒で一息つきます。

真実の瞬間 (Guilty by Suspicion) アーヴィン・ウィンクラー監督,アメリカ,1991年

2020-01-09 20:00:06 | 映画
  映画を愛する人であれば、ハリウッドが果たした役割の大きさははよく理解しているはずです。しかし、ここでかつて「赤狩り」という思想攻撃があったことを忘れてはなりません。チャップリンが「赤狩り」を逃れてハリウッドを一時離れたことは有名です。この作品は、ハリウッドのかつてのこの汚点を告発した映画です。
1951年のハリウッド。20世紀フォックスの社長ザナック(ベン・ピアッツァ)に呼ばれフランスからハリウッドに戻って来た売れっ子の監督のデヴィット・メリル(ロバート・デ・ニーロ)は,監督としての新しい仕事に着くはずでした。しかしハリウッドの様子は,どこかおかしな感じです。
 デヴィットは新作の話の前に,勧められるまま弁護士グラフに会います。グラフはデヴィットに非米活動調査委員会に召喚される前に,嫌疑をはらしておくようアドバイスを受けます。デヴィット納得できません。
 召喚に応じないデヴィッドは,予定された仕事を失い,家屋の差し押さえにあい,アパートに引っ越します。仕事を求めてニューヨークに飛ぶがいい話はなく、そこにもFBIの手が伸びていて,彼は失職します。
そんなデヴィットに新しい仕事が舞い込んだ。台本も気にいったものでした。新作を前に,求めに応じてデヴィットは,1952年2月,非米活動調査委員会の公開召喚に臨みます。
 デヴィットと調査委員会の論戦は激しいものでした。この調査委員会が彼に対して,「知り合いの共産主義映画人の名前を挙げろ」とか,「どんな会合に参加し,そこに誰がいたのか」とかを尋問するくだりは,中世の魔女狩り裁判を彷彿とさせます。
 民主主義の母国のようにいわれるアメリカで,民主主義にもとることが平然と公開の場で行なわれたのかと,慄然とする思いになります。この映画は,正義の立場にたって真実を暴く姿勢で貫かれています。かつてハリウッドにはびこった悪を告発し,裁いた作品として記憶されるべき作品です。