【岩崎俊夫BLOG】社会統計学論文ARCHIVES

社会統計学分野の旧い論文の要約が日課です。

時々、読書、旅、散策、映画・音楽等の鑑賞、料理とお酒で一息つきます。

「小林沙羅 ソプラノ・リサイタル」(川口総合文化センター LILIA)

2014-10-27 23:18:29 | 音楽/CDの紹介

                    

 秋の日曜日、小林沙羅さんのコンサートを聴きにいきました。前日、NHKのEテレで沙羅さんが出演した番組を視聴していたので、期待が大きかったです。

 期待にたがわぬコンサートでした。オペラ歌手というとがっちりした体の人が多いような気がしますが、沙羅さんは細身です。と言っても、体の軸はしっかりしているようで、それが見事な歌唱力を支えていました。

 ひとつひとつ曲の説明をしてくれたので、理解が深まりました。この説明のときの声は普通の女性の声ですが、いざ歌となると圧倒的な声量と感情表現です。とくに感情移入がすばらしいと思いました。ソプラノ歌手としての魅力満点です。「ブラボー」があちこちから聞こえました。

 曲目は下記のとおりでした。アンコールでは、自身で作ったかわいい日本語の歌をうたってくれました。


・モーツァルト:モテット≪踊れ喜べ幸いなる魂よ≫より「踊れ喜べ幸いなる魂よ」
・モーツァルト:「すみれ」
・シューベルト「野ばら」
・シューマン「献呈」
・モーツァルト:オペラ≪ドン・ジョバンニ≫より「ぶってよマゼット」
・モーツァルト::オペラ≪魔笛≫より「ああ、喜びは露と消え」
・ヘンデル:オペラ≪セルセ≫より「オンブラ・マイ・フ」
・ヘンデル:オペラ≪アルチーナ≫より「もう一度私を見つめて下さい」
・J.マルクス:「そして彼はきのう私にバラを持ってきた」「マリアの歌」「ノクターン」
・R.シュトラウス:「矢車菊」「あした」「献呈」
・グリーク:≪ペールギュント≫より「ソルヴェイグの歌」
・ストラヴィンスキー:オペラ≪放蕩者のなりゆき≫より「トムからは何の便りもない」

 


「THE SECRET GARDEN-嘘の中にある真実-」(ギルドq 第9回公演) 於:野方WIZホール

2014-10-26 18:54:20 | 演劇/バレエ/ミュージカル

               

  2013年、国民の多くの反対をよそに「特定秘密保護法」が成立した。

  その法に触れたとして初めて複数の逮捕者がで、裁判にかかった。といっても、これは舞台でのことだ。

  法が成立して数年後という設定。沖島原発で契約社員をしていた水島勇二が、ある自治会の普通の住民数名を社会見学で原発のなかを案内し、彼らがカメラにおさめた原発敷地内の映像をネットにながしたかどで逮捕されたのだ。検察・警察は秘密保護法を盾に、彼らがなんの秘密を漏洩したのかを明らかにしないまま、法廷での審議が始まった。

 弁護側は無罪を主張。最初は、秘密保護法そのものが憲法に違反するとして、公訴棄却を請求。これが却下されると、次なる作戦は、秘密の開示請求。裁判官はしぶしぶこれを受け入れる。

  いわゆる裁判ものの演劇だが、歌あり、ダンスありのミュージカルである。特定秘密保護法にかかわる裁判であり、原発や核のゴミ処理問題という大きな難しい社会問題をテーマにしているが、ストーリーに無理がなく、洗練された歌と踊りで、2時間15分があっという間だった。大きな社会問題ではあるが、そこには個人のいろいろなドラマがうまくはめこまれていて、好ましい。

   さて、この裁判では、どういう判決がでたのだろうか。それは舞台を観てのおたのしみ。
  しかも、今日は千秋楽だが、この日の判決は他の5回の公演のおりの判決とは異なるらしい。さて、どうなったのだろうか?


  黄色い服をきていた水島勇二(岩崎慧さん)はいいキャラで、今後も期待できる。
  森崎さん、伊藤紫央里さんは歌が抜群にうまい。
  伊藤慧さんは安定感のある演技。将来が楽しみ。
  町内会長の原陽三さんは味をだしていた。
  裁判長を演じた中谷源さん(青年劇場)、検察官の鈴木千夏さん、弁護士の斎藤清美さんは、見事なはまり役。
  鈴木絢香さん、koyaさんの踊りは堪能できる。
  他にもここでは書ききれないくらいいい場面があった。


  きちんと台本を読んで出かけたので、無理なく舞台に集中でき、楽しめた。拍手。

作・演出   田中広喜
作曲        小澤時史
振付        山本真実
歌唱指導  金田まり子
舞台美術  Tamako☆
音響        須藤浩(サウンド・オフィス)
照明        高野勝征(スペース・トライアル)
舞台監督  土居三郎
制作        石村淳二
法律監修  久保木亮介(弁護士)
トータルアドバイザー   海渡雄一(弁護士)
主催「The Secret Garden」上演実行委員会 Musical Guild Q

<後援>
文京区労協
千代田区労協
東京地評
新聞労連
出版労連
民放労連
日本ジャーナリスト会議(JCJ)
日本出版者協議会(出版協)協力プロダクション・タンク


「鷗外の怪談」(二兎社公演39 作・演出 永井愛)  於:東京芸術劇場(池袋)

2014-10-23 21:43:05 | 演劇/バレエ/ミュージカル

                  

  作家としての鷗外、陸軍軍医としての鷗外、その二面性を描いた作品。


  この舞台を観ていろいろなことを知った。まず、上記のテーマに関して。陸軍軍医としての鷗外は、いわば体制のなかの人間。当時の明治政府は、富国強兵を旗幟にかかげ、国内政治では厳格なしめつけをおこなった。社会は疲弊し、当然、体制に反発する思想、運動もあった。政府は社会主義、無政府主義の動きに対して敏感で、その芽をつぶすことにやっきになっていた。鷗外はそういう政府のなかの人間であった。
  しかし、鷗外は他方で文学者であり、文学は表現の自由、思想の自由が前提である。この頃、体制は思想統制、出版統制に乗り出し、社会主義的な思想や自由恋愛の要素をもった書籍の出版を積極的に禁止した。その矢先に起こったのが、明治43年の大逆事件である。この事件は上記の社会主義や無政府主義をおそれた政府によって思想家の幸徳秋水たち26人が、天皇暗殺の謀議に加わったとして逮捕され、大審院は一人の承認も認めない非公開裁判で、24人に死刑を言い渡し、実際に12人が処刑された、というものである。
 鷗外はこの事件に対して、苦悩する。立場上、政府を公然と批判できない。しかし、鷗外は、「沈黙の塔」「食堂」などで、暗喩の表現をとりつつ、山縣有朋などの政府側を批判した。
  鷗外のこういう側面は知らなかったので勉強になったし、また見直した。

  また、鷗外と永井荷風との関係もよくわかった。当時、鷗外は「すばる」「三田文学」に作品を発表していたが、その編集にあたっていたのが荷風。鷗外は荷風に慶應義塾大学で教鞭をとることに人肌ぬいだ。荷風はこの頃、ひとつの文学運動になっていた自然主義文学に批判的であり、「早稲田文学」にも対抗心をもっていた。明治の後半の文学状況が見えた。

 そして、鷗外の家庭。二番目の妻シゲと姑とのすさまじいまでの確執。

  脚色の永井さんは、こうした一連の歴史的社会的状況、かつ家庭の事情をよく調べ、それでいて飽きない、面白い演劇を空間を作り出してくれた。永井さんは多くの演劇の台本を書き、わたしはそのいくつかを見てきたが、作品が発表されるごとに社会性を深め、スケールが大きくなっている。そんなことを想いながら、帰途についた。


森林太郎(鷗外)     金田明夫
森 しげ               水崎綾女
平出 修               内田朝陽
永井荷風             佐藤祐基
スエ                   高柳絢子
森峰                 大方斐紗子
賀古鶴所           若松武史            


若松節朗監督・浅田次郎原作「柘榴坂の仇討」2014年(MOVIXさいたま)

2014-10-17 11:26:26 | 映画

  桜田門外の変で開国を唱える井伊直弼大老は、尊王攘夷を掲げる水戸藩の脱藩浪士15人と薩摩脱藩浪士1名人に暗殺された。大老を護衛する重役を担っていた志村金吾はその責任をとらされるが、切腹は許されず暗殺に加わった浪士の誰でもひとりを仇討ちするように命ぜられる。

          


 志村金吾(中井貴一)は旧彦根藩士だったが、剣豪ぶりが認められ、井伊直弼(中村吉衛門)のお駕籠回り近習役としてとりたてられる。事件はその直後に起きた。安政7年3月3日、雪が降りしきる朝、大老は上巳の儀に列席するために上屋敷を出た。護衛の侍は合羽を着て、太刀には柄袋を 。江戸城までは至近距離だったが、その途中、偽の直訴に手にした浪士の一人が道を阻んだ。16人の浪士がいっせいに襲いかかり、不意を打たれ大老は刺殺された。
  仇討ちを命じられた金吾は、13年の間、刺客を探し続ける。妻セツ(広末涼子)は酌婦となり、金吾を陰で支え続ける。


  時代は明治になっていた。維新、帯刀禁止令、廃藩置県によって藩がつぶれ、多くの武士が浪人となった。世の中が動転し、人々は価値観、考え方の転換が迫られていた。しかし、人間の生活感、価値観はそんなにたやすく変えられるものではない。金吾は、髷もおとさず、武士の心、忠義の精神を持ち続けた。「大好きな」ご主人の仇を討つために。

 長い時がたち、金吾は車夫に身をやつした直吉こと佐橋十兵衛 (阿部寛)に出会う。それは奇しくも仇討ち禁止令が出たその日であった。

 原作は浅田次郎。短編ということだが、力作らしい。一部原作にないところもあるらしいが、ほとんど同じ。浅田さんご自身も、ちょこっと出演しているのだが、わからなかった。

  中井貴一さん、阿部寛さん、中村吉右衛門さんの演技が素晴らしい。広末涼子さんも喜怒哀楽の表現が抜群。いい女優になった。

                    


「あなががいたから私がいた(ユーミン×帝劇」(帝国劇場)

2014-10-12 12:03:41 | 演劇/バレエ/ミュージカル

 台風19号が接近していますが、そなえは大丈夫ですか? 関東は、火曜日あたりが大荒れのようですね。

  昨日は帝国劇場で、ユーミンの「あなたがいたから、私がいた」を観てきました。帝国劇場は初めてです。クラシックなつくりですね。

                                   

   
   舞台の内容は、お芝居があり、要所要所にユーミンが出てきて、自分の  歌を歌うというもの。
  お芝居の設定は、1994年、教会でのお葬式。園子という老女がなくなった様子。牧師さんが、列席者と最後の祈りをささげている。園子は、しばらく施設で生活していた。若年性痴呆(?)とかになり、ここで生活するようになった。
  話は戦争時代にさかのぼる。閉塞した時代状況。若さあふれるはずのその年齢で、園子(比嘉愛未)には、春子(福田沙紀)とい従妹がいて、ひとりの男性・栄一(渡部豪太)も含めて、暗い世相を背景としながらも、仲良く日々を過ごしていた。しかし、栄一にも召集令状がくる。園子も春子も栄一を好いていた(友達として?)。春子は栄一と結婚すると園子に告白する。しかし、栄一がほんとうに愛していたのは、園子のほうだった。
  兵隊にいく直前、栄一と春子は結ばれる。ふたりの間には、手紙のやりとりがしばらくあったが・・・。栄一は軍隊のなかでのしごきで、命をおとす。
  園子は身ごもっていた。生活していくことができず、生まれた息子を春子にあずけなければならない事態に。園子はなかばパンパンのような生活に身を落としていた。そして若年性痴呆が、影をおとしていた。

  園子(藤真莉子)はその後、施設に入る。「先生」と尊敬するその男性は、実は・・・。


  春子と園子のふたりの運命は・・・・。

  この結末、まだ、しばらく上演していますから、ぜひお時間があれば観にいってください。お話は少し暗いですが、いい演劇です。舞台効果がすばらしいです。まわり舞台が上手に使われていますし、チェロの独奏が入ります。

  そしてユーミン。青春そのもののあの歌声。20曲ぐらい歌っています。最後は「春よ、こい」。桜の花びらが降りしきる美しいシーン。

  満席の場内、みな立ち去り難く、拍手をし、俳優さんたちも手を振ってこたえていました。


                 

 


太田和彦「新宿 街・人・酒」(朝日カルチャーセンター新宿)

2014-10-11 23:53:22 | 地理/風土/気象/文化

  こんにちは。

            


  今日は、先日、朝日カルチャーセンター新宿で行われた、太田和彦「新宿 街・人・酒」の話です。太田さんはBS11で、「ふらり旅、いい酒いい肴」という番組を担当して、日本中の居酒屋・BARを訪ねています。すっかりファンになってしまったのですが、このたび朝日カルチャーで上記のレクチャーがあるということで、行ってきました。受講生は27人ほど。

 話は太田さんが故郷の松本から東京に出てきた1964年ごろからの新宿です。東京教育大学の美術関係の学科に入学したのだけれど、授業が面白くなく、教授陣もたよりなく、しかし新宿の街と人が芸術家としての感性を育ててくれたとのこと。そこには唐十郎の状況劇場があり、寺山修司の天井桟敷があり、すっかり好きになった演劇をよく見に行ったとのこと。また映画でもエイゼンシュタインの「イワン雷帝」にであったときの衝撃、ジャズ喫茶があり反戦フォークがあり、デザイン関係の人との出会いもあった。新宿で感性を磨き、意地でデザイナーになったとのこと。当時、住んでいたのは下北沢と、言っていました。そして、「池林坊」での椎名誠氏との邂逅。

 その後「資生堂」に就職。生活の中心は銀座にうつり、そこでまた新しい人間関係、社会というものを学ぶが、そこをやめてアマゾンデザインを立ち上げ、再び新宿に出没するようになったとのことでした。

 当時の新宿、銀座の様子を語りながら、ご自身の青春と人生を重ね合わせた楽しい語りの1時間半でした。表情や姿勢はテレビ出演のおりの様子と全く同じ。温厚なお人柄と該博な知識、それが全然嫌味でなく、自然と出てくるのはこの方の個性の魅力です。

 レクチャー後、少しだけ声をかけさせてもらいました。「蓮田から来ました」というと、「遠いところわざわざ」、「神亀酒造をよくご存知のよですね」というと、「いろいろと」と控えめでした。

  人の話をゆっくり聞くのもいいことです。朝日カルチャーでは、各界で実力のある方が、ときどきレクチャーしてくれます。時間に余裕があったら足を運んではどうでしょうか?

  すっかり秋らしくなりましたね。でもまた台風がくるそうです。気をつけて、ご自愛ください。


ダイニングバー SUKATTO ( 宇都宮市池上町1-3 TEL028-636-4644)

2014-10-05 22:56:43 | 居酒屋&BAR/お酒

 宇都宮市は、日本でも有数のBARが充実した街です。「宇都宮カクテル倶楽部」があります。

  JR宇都宮駅から、まっすぐ大通がのびています。そこを1キロほど歩いていくと、左手に市役所へ、右手に県庁へ行く、すなわち宇都宮市役所と栃木県庁とがとおくに向かい合う中央通りと交差します、このあたり一帯がBARがよせあつまっています。

  名門「シャモニ」に行こうとしたのですが、事情があってやめ、うろうろ歩いて「SKATTO]というBARに飛び込みました。とくに目当てにしていたわけではなく、文字通り直感で、入ったのです。

               


  大きなBARです。バックにはきれいな洋酒の瓶がずらり。ウイスキーはもとより、ジン、ウォッカ、コアントロー、ボンベイサファイアなどなど。
  あとから知ったのですが、50席をこえるようです。わたしは、カウンターに座りました。若い女性がひとりで飲んでいました。彼女を目の端で確認しつつ(笑)、まずソルティ・ドッグを、それからはウイスキー(マッカラン)でまとめました。


 バーテンダーは若い、といっても30歳半ばほどでしょうか。父親からこの店を継いだと語っていました。お客の注文に次々応じてカクテルをつくっていく技はお見事。

 よく話しかけてくるバーテンダーで、わたしも調子をあわせ、宇都宮のことをだいぶ聞き、耳学問をしました。


水谷龍二作/高瀬久雄脚色「淑女のロマンス」(紀伊國屋ホール)

2014-10-04 20:33:11 | 演劇/バレエ/ミュージカル

                

 お元気ですか? 芸術の秋を楽しんでいますか?


 先日、新宿の紀伊國屋ホールで、「淑女のロマンス」という舞台を観てきました。抱腹絶倒!

 設定はタクヤという30歳の男の部屋に、彼とつきあっている女が3人、約束したのか、次々とやってきてはちあわせるというもの。ひとりは、既婚だが夫婦の愛が冷えタクヤと不倫をしている女(キムラ緑子)、ひとりはスーパーの鮮魚売り場で売り子をしている過激な女(前田美波里)、もうひとりは詩を書いていたことがある夢見る女(柴田理恵)。舞台ではこの順番で、タクヤの部屋に来るのだが、それぞれ驚いて束の間の嘘でとりつくろう。タクヤは不在。そこで3人の口八丁手八丁のやりとりが始まる。この掛け合いがお笑いだ(当人たちは真剣至極だが)。

 会話のなかから、それぞれ8万、5万、3万のお金をタクヤに貢いでいたことがわかる。タクヤはその金で比較的きれいなそのマンションのひとつの家賃を支払っていたらしい。またそれぞれがタクヤといつから交際を始めたのか、どのような関係であったのかなどが次第に明らかになっていくが、心のそこでは相手を貶めようという魂胆があるのです。

 最後はどんでん返し。それは秘密です。

 久しぶりに大いに笑えたお芝居でした。美波里さん、緑子さん、理恵さん、みな個性的で、魅力的でした。

 考えてみれば、新宿のこの紀伊国屋界隈、しばらく来たことがなく、ちょっと風景に懐かしさを感じるほどでした。お店もずいぶん入れ替わっていました。