【岩崎俊夫BLOG】社会統計学論文ARCHIVES

社会統計学分野の旧い論文の要約が日課です。

時々、読書、旅、散策、映画・音楽等の鑑賞、料理とお酒で一息つきます。

神の声 サラ・ブライトマン

2009-10-31 00:02:47 | 音楽/CDの紹介

SARAH BRIGHTMAN CLASSICS     

   西洋でかつて芸術家という職業はありませんでした。演奏家も歌手も神の恩寵、啓示を人々に伝える仲立ちの役割を果たしているのであり、もちろんそれは崇高な仕事でした。このサラ・ブライトマンの歌を聴いているとそういうことを思いだしました。ひとりの声楽家というよりは、天界の歌が彼女の身体をとおして流れ出てくるようです。誰も彼女に変わることはできない、ある種の畏怖を感じつつ、聞き手のわれわれを至福の世界にいざなってくれます。
 
  「Ave Maria」、「Alhambra」はもちろん好きです、Winter Light 、Time to Say Goodbyeは抜群にいいです。後者は先日、観た映画”アマルフィ”に使われていましたね。

 サラ・ブライトマンSarah Brightman)は、イギリスのソプラノ歌手です。1980年代にミュージカル女優として輝かしい成功を収めました。1990年代に入って、ソロ歌手として活躍しています。音楽スタイルはクラシックとポップスを融合した独自のもの。アメリカのビルボード・チャートのクラシック音楽部門とダンス音楽部門で同時に1位を獲得した唯一の歌手としても知られています。


1. Ave Maria
2. Wally
3. Winter Light
4. Anytime, Anywhere
5. Alhambra
6. Lascia Chi'o Pianga
7. Dans la Nuit
8. Serenade/How Fair This Place
9. O Mio Babbino Caro
10. Luna
11. Pie Jesu
12. Figlio Perduto
13. Nessun Dorma
14. Bailero
15. Time to Say Goodbye [Solo Version]

      
             
      

素敵な曲が勢ぞろい

2009-10-29 00:11:44 | 音楽/CDの紹介

image emotional & relaxing SONY RECORDS SRDR 2561

  イージーリスニングというのでは、評価が甘いでしょう。ひとつひとつの曲をじっくりきくと、名曲ぞろいです。 加古隆さん「パリは燃えているか-メインテーマ-」はNHKの「映像の世紀」で使われた曲ですが、20世紀という不安定な歴史を象徴するかのように聞き手に迫ってきます。

 他には「情熱大陸」と「世界遺産」のテーマ曲に惹かれます。「世界遺産」の番組はなくなりましたが、毎週のように見ていました。音楽がよかったからです(もちろん内容も)。とくに鳥山雄司さんの「ソング・オブ・ライフ」(「世界遺産」)が荘厳かつ雄大です。世界遺産を紹介する番組にふさわしい名曲です。

 映画関係では「ニュー・シネマ・パラダイス」のテーマ音楽は忘れられません。映画音楽がかつてほど注目を浴びることがなくなっているなかで、この曲だけは印象深いです。
                

1. 霧の浅瀬 / カール・ジェンキンズ
2. Etupirka / 葉加瀬太郎 (MBS/TBS系「情熱大陸」エンディングテーマ曲)
3. リベルタンゴ / ヨーヨー・マ
4. 異人回廊(盤古2001)
5. パリは燃えているか-メインテーマ- / 加古隆
6. 地球に乾杯 / 羽毛田丈史
7. 放課後の音楽室 / ゴンチチ
8. ローズ / ジェームス・ホーナー
9. ニュー・シネマ・パラダイス(映画「ニュー・シネマ・パラダイス」より)/ 古澤巌&アサド兄弟
10. ピエ・イエズ / シャルロット・チャーチ
11. 愛を奏でて / エンニオ・モリコーネ
12. 黄昏のワルツ(NHK「にんげんドキュメント」テーマ曲) / 加古隆
13. 「風笛」― あすかのテーマ / 大島ミチル featuring 宮本文昭
14. アヴェ・ムンディ / ロドリーゴ・レアン&ヴォックス・アンサンブル
15. BEFORE LONG / 坂本龍一
16. 「情熱大陸」メインテーマ(MBS/TBS系「情熱大陸」メインテーマ曲) / 葉加瀬太郎 with 小松亮太
17. THE SONG OF LIFE(New Version) / 鳥山雄司 
       


嫉妬、この得体の知れない感情が世界史に蠢いていた

2009-10-28 00:42:22 | 歴史
山口昌之『嫉妬の世界史(新書)』新潮社、2004年
        
         


  人間であるかぎり、嫉妬心から自由でありません。嫉妬心は実に厄介な感情です。コントロールしようとおもっていてもムラムラと起こってくるのが嫉妬心です。それは女性にもあれば、男性にももちろんあります。どちらかというと男性の嫉妬心は陰性で、粘液質であるかもしれない、と著者は書いています。

 よく知られたものにシェークスピアの「オセロ」のそれがあります。本書は古今東西の嫉妬心をとりあげ、その行きつく先何があったのかを掘り起こしています。

 大田道灌の声望を疎ましく思った上杉定正、徳川慶喜のやっかみと猜疑心を一身に受けた勝海舟。「三国志」のなかの孫権の嫉妬心のなれの果て、西郷隆盛を妬心をもって嫌った島津久光、猜疑心から韓信などを殺した烈女呂后、嫉妬に敏感だった森鴎外、ヒトラーに抜擢されたロンメルに対する周囲の嫉妬とないまぜになった反感、雪の研究で知られる中谷宇吉郎に対する嫉妬の連鎖、嫉妬されている思い込みそれを公言して憚らなかった牧野富太郎、石原莞爾と東条英機の確執、スターリンとトハチェフスキーの確執、島津義久は弟の義正に抱いた劣情、等々。

 よくもまあ次から次へと、歴史に登場する人物の嫉妬がでてくるものと,それだけで感心しました。

 嫉妬を受けないようにするにはどうしたらよいのでしょうか? 著者は、それは難しいとしながらも、人を言葉で刺激しないこと、嘘をつかないこと、と書いています。

 ただ言われなき中傷や批判には、毅然として弁明し、自身の正当性を主張する勇気が必要と説いています。


日経新聞掲載の小説

2009-10-27 15:40:24 | 文学
小野俊太郎『日経小説で読む戦後日本』ちくま新書、2001年

            

 新聞小説は日本独特のものです。なかでも日本経済新聞掲載の小説はユニークで、ベストセラーが多いとのこと。その秘密を解き明かそうとする書です。

 たしかに、「樅ノ木は残った」(山本周五郎)、「不信のとき」(有吉佐和子)、「失楽園」(渡辺淳一)と並べられると、そうかなとも思います(しかし、わたしが日経新聞掲載の小説を一編も読み通したことはないのは、無意識のうちに避けていたのでしょうか?)。

 著者は、掲載された作品群を歴史小説と現代小説とに分け(意外にも企業小説、経済小説は少ない、ほとんどないとのこと)、ひとつの太い線として日本的経営の来し方、行く末を論じたかったようです。

 要するに組織論とか戦略論とか、企業と家族との関係とか、男女関係、夫婦関係、親子関係など時代と社会の時々の問題に対する接近を、経営という組織体のなかのサラリーマンの生き方と絡めて整理したかったようです。

 しかし、展開はあまりすっきりせず、意図は生かされていないみたいでした。
  
第1章 新聞小説としての日経小説(『失楽園』に見る新聞小説の特徴;新聞小説のはたらき)
第2章 日本的経営と歴史小説(歴史小説の意義;人情から情報へ ほか)
第3章 「いま」を描く現代小説(世代の違いを読む;価値観の変化をうけて ほか)
第4章 高度成長以降の企業と家庭(運命共同体がゆさぶられる;70年代の進歩と調和 ほか)

日本の古典芸能を50分で

2009-10-26 00:26:57 | 古典芸能

京都散歩⑲ 日本の伝統芸能をダイジェストで楽しめるギオン・コーナー

 祇園のなかに日本の古典芸能を紹介する演芸場があります。京都伝統技芸振興財団によるギオンコーナーです。観光客に向けてのもののようです。外国人が目立ち、英語の紹介も場内放送で流れます。

 茶道、琴、華道、雅楽、狂言、京舞、文楽が一連の流れで進みます。この7つの芸能がたった50分で?

 そうです。無理がなく進んでいきます。最初に茶道ですが、これは観客のなかから希望するもの2名にお茶がふるまわれます。外国のお客さんが多いので、この2名は異文化体験をするわけです。茶道は舞台ではなく、その脇にしつらえられた場所で行われます。写真はとってもいいことになっているので、外国人はパチパチ撮っています。

 茶道が終盤になりかけのころ舞台では、琴と華道が実演されます。

 一段落して雅楽。左手に楽器奏者グループ。笙、篳篥、笛・・・。舞台中央では舞が舞われます。装束が綺麗です。

 狂言は、大蔵流。演目は棒縛りです。いつも主人が留守になると太郎冠者と次郎冠者はすきを狙って酒を飲みます。主人が一策を案じて、次郎冠者の両手を棒に縛りつけます。太郎冠者がこれを笑っていると、主人はすきをみて太郎冠者を後ろ手に縛ります。主人はこれを確認して安心してでかけますが、留守中、二人は不自由ななかで機転をきかせて、酒を食らいます。そこへ主人が戻ってきて・・・。「やるまいぞ、やるまいぞ」

 京舞では二人の舞妓さんが優雅に舞台で踊ります。今や舞妓さんは京都に30人弱とか・・・。

 そして最後が文楽です(写真:筆者撮影)。演目は「八百屋お七‐火の見櫓の段‐」。純情は娘お七が恋人である吉祥院の小姓吉三郎の探し求める刀を今夜中に届けねば命にかかわるとききますが、町の木戸は閉まっていて通行できません。お七は火の見櫓の半鐘を打ち鳴らし、木戸をあけさせます。降りしきる雪の中、お七は足をすべらせながら櫓に駆け上ります。

 これで50分。見事に古典芸能のダイジェスト版の終了です。

  玄関ロビーでは、舞妓さんや花街文化を紹介した絵画・写真・映像・小物などが展示されています。舞妓さんの持ち物(小物)や、月毎に変わる花簪の実物、髪型のミニチュア、五花街のをどりなどの情報もあります。


大仙院(大徳寺)の石庭空間

2009-10-23 00:09:33 | 旅行/温泉

京都散歩⑱ 大徳寺

 大仙院庭園は、室町時代を代表する禅院式の枯山水庭園です。禅院式枯山水庭園の最高傑作です。

   ここの枯山水は、永正10年(1513年)に大仙水を創建した古岳宗亘の作庭です。直角の狭い空間に、大小さまざまな石が配置されています。

 書院の間の北東角がこの庭の中心です。そこには不動石と観音石と名付けられた大きな石が2石あります。その石の右後方の石組が龍門瀑となっています。

 3段の枯滝は激流を象徴していて、滝の下には鯉魚石が組まれています。

 河には石橋がかかり、白砂の大河には船を表現する石、船石が見えます。鶴島、亀島もあります。



とにかく広い大徳寺(京都散歩⑰)

2009-10-22 00:48:12 | 旅行/温泉

京都散歩⑰ 大徳寺 〒603-8231 京都市北区紫野大徳寺町53

 夕方、とにかく広いお寺で圧倒されました。

 大徳寺は、元応元年(1319年)、禅林の双璧と称された大燈国師が雲林院に小院を創建したことに始まります。その後、花園上皇、御醍醐天皇の深い帰依を得て、上皇と天皇の祈願所となりました。

 応仁ので大徳寺は全焼します。一休和尚が再興、方丈・法堂を建立しました。豊臣秀吉が織田信長の葬儀を行ったことで、大名との関係もあります。また、千利休や小堀遠州たちが山内に庵を結び、茶道との縁も強いです。

 明治期に廃仏毀釈で衰退しましたが、その後復興、現在は洛北一の巨刹です。唐門、方丈、玄関は国宝です。また法堂、勅使門は重要文化財です。

  写真は、大徳寺内の高桐院です(筆者撮影)。高桐院は慶長6年(1601)に、「利休七哲」の一人とうたわれた細川忠興(三斎)が、父の藤考(幽斎)の菩提所として建立したものとか。紅葉の名所としても知られています。
 


西南戦争の顛末と西郷人気の秘密

2009-10-21 00:00:34 | 歴史
小河原正道『西南戦争』中央公論新社、2007年
                           
                 

 歴史の教科書で「西南戦争」にはどの程度の記述があてられているのでしょうか。本書を読んで、この我が国最期の内戦の奥行き、壮絶さに触れ、歴史理解というものが容易でない思索の旅をともなうものだということを痛感しました。

 明治維新後、新政府に対する反逆、不穏な動きが散発しました。佐賀の乱、神風連の乱、萩の乱。

 著者はそれらの意味を解き明かしながら本題の不平士族の最期の反乱である西南戦争の解明に入っていきます。

 私学校党を中心にしたものたちが反政府蹶起の大義名分をもとめていたときに、政府による西郷暗殺計画の風評が流れ、機会をねらっていた彼らがこれを契機に反乱を企てたということのようです。多数の士族、結社がこれに合流し、政府軍との戦闘は九州全土にわたって約8カ月続きました。

 反乱軍の盟主であった西郷隆盛の動静を軸に、熊本城籠城戦、田原坂の戦いなどの戦闘が詳しく実況さながらに綴られています。丹念な多くの資料の読み込みを前提に書かれているので、叙述は精緻を極め、歴史の専門書並みです。

 西南戦争は西郷隆盛の自刃によって終結しますが、本書はその後の西郷の名誉回復(正三位の叙勲、上野公園の隆盛の銅像)までを射程にいれ、西郷人気の背景も解説しています。

 「西郷がかくも人々の人気や祈りを受け止めることになったのは、その人格の魅力や維新の英雄としての声望、政府に抗した反抗精神、そして『あいまいさ』によるのだろう。明治期に入ってからの西郷は、多くを語らなかった。その主義は倫理的であり、その地位は高く、その人格は多くの人を引きつけたけれども、思想は体系化されず、いわば神秘的な魅力を湛えた巨大な沈黙であり続けた。戦争下でも、西郷の姿は警備の奥に鎮まって見えにくく、兵士からも遠い位置におり、戦争目的もわかりにくいものだったが、その存在が全軍の求心力となり、その声望と力の可能性に多くの不平士族が賭けた、あるいは賭けようとしたのである」と。(p.225)

壮大なローマの歴史

2009-10-20 22:58:19 | 歴史
塩野七生『ローマから日本が見える』集英社文庫、2008年。

           

 紀元前753年にロムルスが建国したローマ。資源も富もないローマはなぜ普遍帝国にまで成長したのか。そして長く地上にあり続けたのか。政治家、権力の構造、政体の観点から、この疑問に解答を与え、戦後日本の政治の在り方にも触れた本です。

 ローマ史の流れはざっと以下のとおり。

 紀元前509年、ユニウス・ブルータスによって王政は共和制へ移行します。ここで執政官、元老院、市民集会の三権分立が確立。次いで、拒否権をもつ護民官制度が平民階級保護を目的に設置されます(BC.494)。

 ローマ、イタリア半島統一(BC.270)。その後、ケルト・ショック(ケルト人の襲撃でローマが危殆に瀕する)の経験から共和制が内部改革を余儀なくされます。

 リキニウス法の成立(BC.367)により、国家の要職を平民にも開放することで貴族と平民の対立の解消をはかります。

 試練は三次に渡るポエニ戦役。知将ハンニバルに苦しめられますが最終的にスキピオがカルタゴを打ち破り、ローマの領土が拡大をします。拡大したローマではありましたが、逆にそれゆえに「制度疲労」をおこし低迷の時代が長く続きます。

 グラックス兄弟が改革に手をつけるも挫折。ローマの再興はカエサルの登場を待たなければなりませんでした。

 終身独裁官となったカエサルは、ローマを帝政に戻し、寡頭政治を行います。版図が拡大したローマには、指導者がもとめられたのでした。しかし、そのカエサルもブルータスに暗殺され、以後、遺言によりオクタヴィアヌス(アウグストゥス)が執政官となります。

 「敗者をも同化し」、度重なるリストラの末、その政体を長く維持したのがローマ帝国でした。

 ローマの歴史から国家盛衰の法則を探り当てた著者は、その観点で日本の戦後の政治に言及しています。リーダー不在、改革が定着しない日本の現状を憂えています。

 最後に、著者は、古代ローマの指導者を、「知力」「説得力」「肉体上の耐久力」「自己制御力」「持続する意思」という項目をたて(各項目は100満点)、それぞれの通信簿を開示しています(p.367)。ペリクレス、カエサルがすべての項目で満点。ブルータス、クレオパトラ、ネロの評価はかなり低いです。

松本清張作「或る『小倉日記』伝」の舞台化

2009-10-20 10:07:32 | 演劇/バレエ/ミュージカル
  今年は、松本清張生誕100周年です(ちなみに、清張と同じく1909年に生まれた作家は、太宰治、大岡昇平、中島敦)。

           
或る「小倉日記」伝 チラシ表

 生誕100年を記念して過日、舞台で「或る『小倉日記』伝」がありました。松本清張の芥川賞受賞作品の舞台化です。

 この小説は、小倉に住む田上耕作なる人物(柳生啓介)が小倉で過ごした時期の森鴎外の日記の散逸した部分を埋める調査にのめりこみ、未完のまま死にいたったことを、清張が短編にしたてあげた作品です。田上耕作は身体麻痺の病気もちで、不自由な体でしたが、鴎外のことを知りたいという一途の気持ちで、聞き取り調査にまわります。

 耕作は母「ふじ」(北澤知奈美)とふたり暮らし。同じ小倉には母の妹である「もと」(浜名美貴)が住んでいますが亭主に甲斐性がないといってはお金の無心にきます。

 耕作が通っている白川病院の院長(津田恵一)は、彼にあたたかく接します。看護婦のてる子も耕作にやさしく、調査に協力します。そんなてる子(上沢美咲)の様子をみて、母ふじは彼女を耕作の嫁にと考えるのですが、そんなことが叶うはずはありません。

 苦労して集めた鴎外関連の資料の嵩が増していくのに反比例するかのように、耕作の身体は確実に弱っていきます。そして母に見守られての死・・・・。

 そして、ある日のこと、白川院長は母ふじに鴎外の小倉時代の資料がは発見されたという新聞記事のこと伝えます。耕作が生前にしたことはいったいなんだったのか。

 舞台では、母と耕作の愛がとくに強く印象的に演じられていました。

女性ヴァイオリニストの演奏作品が収録されたCD

2009-10-20 00:43:59 | 音楽/CDの紹介

クラッシー・バイオリン(Classy Violin) ビクター・エンターテイメント株式会社
                               クラッシー・ヴァイオリン
 女性ヴァイオリニストの演奏作品を集めたアルバムです。
 次々と有名な作品が奏でられるの楽しいです。演奏家では、川井郁子さんが最も個性的です。山瀬理桜さんは、ノルゥエーのハルダンゲル・ヴァイオリンで弾いています。

 演奏家のなかで実際にコンサートで生の演奏を聴いたことがあるのは、川井郁子さん、千住真理子さん、鈴木理恵子さんです。カテリーナ・マヌーキアンさんは、トロント生まれで、父は
アルメニア人ヴァイオリニスト、母は日本人バイオリニストです。

 曲目のなかでは、「フィヨルドの夏の思い出」が印象的でした。解説によると、ノルウェーのよく知られた悲恋の歌曲だそうです。「二人の姉妹が一人の男性を愛してしまい、姉がその男性と結ばれて、白夜のフィヨルドに小舟に乗って旅立っていくのを、妹が悲しみながらも、岸辺から二人の幸せを祈り涙する・・・」という情景が歌われている、とありました。

<曲名リスト>
1. 千住真理子/G線上のアリア(J.S.バッハ)
2. 川井郁子/ルナ・デ・タラゴーナ(グリーク)
3. 奥村愛/愛のあいさつ (エルガー)
4. 小杉まりさ/Domerico Gallo’s Sonate(ギャロ)
5. 千住真理子/愛の喜び (クライスラー)
6. 奥村愛/ヴォカリーズ (ラフマニノフ)
7. 山瀬理桜/アメイジング・グレイス (トラディショナル)
8. カテリーナ・マヌーキアン/タイスの瞑想曲 (J.マスネ)
9. 川井郁子/サンクトゥス:ラルゴ~主よ人の望みの喜びよ(J.S.バッハ)
10. 鈴木理恵子/愛の小径 (プーランク)
11. 山瀬理桜/フィヨルドの夏の夜の思い出(ビョルンスタ)
12. カテリーナ・マヌーキアン/剣の舞(ハチャトゥリアン)
13. 千住真理子/私のお父さん(プッチーニ)
14. 磯絵里子/踊る人形(ボルディーニ)
15. 小杉まりさ/Romance(モリコーネ)
16. 川井郁子/レッド・ヴァイオリン(パイプ・オルガン編)(ロドリーゴ)


「男女共同参画社会」は女性を幸せにしない、らしい。

2009-10-19 00:43:22 | 政治/社会

山本悦子『女を幸せにしない「男女共同参画社会」』洋泉社、2006年
      

         


 挑発的なタイトルで、ジェンダー平等に対するバックラッシュを説いた本かと思いましたが、そうではありません。

 簡単にまとめると、「男女共同参画社会基本法」というのが1999年6月に成立しましたが、その下敷きにあるのは家族類型の「男性稼ぎ主」型モデルから「共働き」モデルへの転換だそうです。そして、この法律が意図しているのは増税とも書かれています。

 著者はこの法律を推進した大沢真理、上野千鶴子ら東京大学の女性研究者の根本思想がいわゆる専業主婦を目の敵とし、彼女たちを労働市場にかりたて、「一億総働きバチ」をつくりだすことにあったと糾弾します。ふたりの研究者にあっては、少子化対策は子供を増やすための政策ではなく、「人口減少による労働力と税収の減少を女性を男並みに働かせ、男と同等の税金と所得税を払わせることによって埋めようとすることであった」(p.58)とのこと。

 年功序列と終身雇用の日本的経営システムが崩れた今、男性は階層分解し、結婚のメリットはなくなり、若い男性のシングルが増えています。若い年代の非婚率は、女性も高くなってきていますが、男性はそれを上回る増加傾向にあります。

 著者はさらに、女性の労働力率と合計特殊出生率の比較的高い相関関係を統計で説明することの欺瞞、ジェンダーフリーという意味不明の和製英語の功罪、を明るみに出しています。

 著者によれば、「男女共同参画社会基本法」は結局、結婚、出産、育児という貴い仕事を蔑にし、次のような社会矛盾をもたらしているし、またもたらしてきたと警鐘をならしています。
 ①「主婦の構造改革」を推し進め、フツーの女性にはセイフティネットとして機能してきた結婚による「主婦」の地位を低下させる。
 ②国は子育て世帯の大変さに対して報いる姿勢がない。
 ③国は政治家の票田になる高齢者には比較的高い費用を投じているが、少子化対策へのお金の配分は微小である。
 ④国は共働きの両立支援を少子化対策としているが、一向に効果はでてきていない。
 ⑤「男女共同参画社会基本法」は高齢化対策に力を入れているようにみえるが、低所得層の高齢者の「孤独死」は後をたたない。

 本書は以上を論じた1,2,3章がメインです。この他に、本の表題とは関係のない「女系天皇」論(第四章)、「冬ソナ」・ヨン様論(第五章)があります。そして、ブックガイドがおまけのようについています。


落語の魅力は?

2009-10-18 00:06:00 | 古典芸能

堀井憲一郎『落語論』講談社新書、2007年
            

        


 「落語とは、ライブのものである」(p.6)。
 「落語はライブにしか存在しない」(p.13)。
 「落語にはタイトルがなかった」(p.15)。
 「落語にはキャラクターが存在しない」(p.26)。
 「落語の本筋は、ストーリーにはない」(p.37)。
 「落語はペテンである」(p.44)。
 「演者は、客との融和を常にめざしている。客との和をもって貴しとなす」(p.66)。
 「落語は繰り返しきくものである」(p.79)。
 「落語は歌である」(p.86)。

 こういった調子で、落語論が展開されています。要するに、落語は言葉で理解するものではなく、体感するものであり、閉ざされた空間のなかで演者と観客とが癒合し、一体となって醸し出す空気のなかに立ち上がる芸ということらしいです。

  御意! そのとおりです。それゆえにテレビで落語は見たくないのです。

 頭で理解したり、筋をおって納得したり、サゲのいろいろを分類して解析したり、テキストを読み込んで予習したり復習したりしてはいけません。まして、落語を聴きながらメモなどしてはいけないということです。

 しかし、著者は「仕事で」メモをとって分析していて、これについては何遍も「すみません」と謝っています。

 著者の結論、「落語とは集団共有幻想遊戯の道具である」(p.221)。


築地の魚河岸にいなせな言葉が飛び交う

2009-10-14 01:06:00 | 言語/日本語

生田興克/冨岡一成著『築地・魚河岸ことばの話』大修館、2009年

          書籍イメージ

 築地魚河岸語辞典です。辞典ですので、最初から順に読み通していく類の本ではありませんが、最初からページをめくっていきました。

 ここは「東京都中央卸市場築地市場」が正式名称です。1602年、日本橋小田原町に開設されました。通称・築地市場にまつわる文化、歴史および、そこで働く人々の独特な気風を知ってもらうために編集した、とのことです。約300の用語、事柄を「築地魚河岸ことば」と名付けて一覧されています。

 魚河岸の「粋」と「意気」が立ち上ぼり、威勢のいいセリ声が聞こえてくる感じです。どんな用語が出てくるかというと、「勇み肌」(強きをくじき弱きを助けるような、気概を張っている性質や気風のこと)、「いなせ」(若々しく威勢の良いさま。若い衆のイキの良さを称賛する言葉。彼らのマゲの形がさかなのイナの背に似ていたことに由来する)、といった具合です。

 第4章に「美味い魚の話」と称して、水産物とかかわる食べ物がズラリと並んでいますが、その何と豊富なこと。「浅蜊」「穴子」「油坊主」「甘海老」「新巻き」「烏賊」「伊佐木」「鰯」「牛の舌」「鰻」「雲丹」「エチオピア」「エボタイ」「縁側」「虎魚」「大鮃」「牡蠣」「梶木」「カストロ」「カスベ」「鰹」「魳」「鰈」「カワラ」「鱚」「黄肌鮪」「銀鱈」「銀宝」「銀むつ」「クサヤ」「車海老」・・・・(疲れたのでこれで止めます)。


満州歴史紀行

2009-10-13 00:58:15 | 歴史
大江志乃夫『満州歴史紀行』立風書房、1995年

 著者が1994年8月に旧満州から北京にかけて、第3回日中学術シンポジウム参加のおりに旅行したときの紀行文です。

 コースは大連から長春まで旧満鉄沿線をたどり、ついで長白山から大慶へ、ハルビンから北京。平頂山事件の真相究明(pp.33-37,責任者は川上大尉ではなく、井上中尉)、登頂した長白山の樹林の分布についての記述、食についての薀蓄(pp.84-91,pp.101-107)は読み応えがあります。

 1959年に掘り当てられた大慶油田の存在を日本軍が知りえなかったのは、そこが石井部隊の細菌爆弾秘密実験場だったからという指摘は鋭いです(p.132)。

 「中国東北をなぜ満州と呼ぶのか」(pp.229-234)も記憶にとどめておくべきです。著者は帰国後も、旅で得た情報を『世界国勢図会』で確認作業をしています。

   大江志乃夫さんは、先月なくなりました。合掌。