【岩崎俊夫BLOG】社会統計学論文ARCHIVES

社会統計学分野の旧い論文の要約が日課です。

時々、読書、旅、散策、映画・音楽等の鑑賞、料理とお酒で一息つきます。

キャスリン・ハリソン/岩本正恵訳『キス』新潮社、1998年

2012-05-31 00:15:32 | 小説

               

 もうかなり前のことですが、ラジオの話題の本を紹介する番組で取り上げられ、面白そうなので買ったのですが、長く読まないまま本棚におかれていました。これを手にとって読みはじめました。


  子どもの頃に分かれた父親(彼は妻と妻の両親と不仲で離婚。努力して有名大学で博士号を取得。再婚し妻子がいる。牧師)との近親相姦がテーマです。
  長くあったこともなかった父親が突然あらわれ、父親の主導のもとに、ふたりは運命的に愛にのめりこんで行きます。
  それは飛行場での濃厚なキスから始まったのです。娘は恋人を失い、友人と疎遠になり、大学を休学し、正常な生活をおくれなくなります。

  著者は父との関係を、虚構とも言える独特の世界のなかに描き出し、自らの心と体を一人称現在形の文体で解剖していきます。

 「人間存在の根源に迫る問題作」と当時、評判になりました。


Piano Classic Fantasy by MINO KABASAWA

2012-05-30 00:30:32 | 音楽/CDの紹介

          

 加羽沢さんの10枚目のCDです。クラシック曲がピアノ曲にアレンジされています。彼女にとってはクラッシクにも、ポップス曲や歌謡曲に向かうのと同じような感覚だというのです。音楽という音の響き合う世界では、ジャンルの垣根などはあまり意味がないのでしょう。


 そうは言ってもここに収められている作品は、オーケストラ曲やピアノ以外の楽器のために書かれたものが大部分で、そういう意味ではピアノでこれらの曲を聴くとのは稀有な体験になります。原曲は大切にして編曲し(調性は変えない)、ピアノ遊びの感覚でレコーディングしたとのことです。そう思うと、本当に音と戯れ、音に心をゆだね、よりそって弾いているように聞こえます。
 2000年、岡山のカノラホールでの録音です。


 加羽沢さんはピアノを三歳から始め、東京芸大から大学院に進み、98年に卒業。大学院在学中に日本コロムビアからCDデビュー。97年にはカザルス・ホールでデビュー・コンサートを開催し、99年には銀座・王子ホールで「加羽沢美濃ピアノ・パーティ」のシリーズをスタートさせました。

 ピアノ演奏の他にも作曲もてがけていて、96年TBSの月曜ドラマスペシャル「埋葬された愛」で作曲、演奏も担当しました。テレビ朝日の「新題名のない音楽界」のエンディングテーマも作曲、演奏しています。

1. 花のワルツ~バレエ「くるみ割り人形」より  
2. アランフェス協奏曲より 第2楽章  
3. 夢のあとに  
4. 白鳥  
5. だったん人の踊り~歌劇「イーゴリ公」より  
6. 交響曲 第3番より 第3楽章  
7. ヴァイオリン協奏曲 メドレー  
8. モルダウ~「わが祖国」より  
9. シチリアーノ~「リュートのための古風な舞曲とアリア」より  
10. アヴェ・マリア  
11. ラクリモーサ~「レクイエム」より  
12. 歓喜の歌~交響曲 第9番「合唱」より  
13. 交響曲 第9番「新世界より」より 第2楽章  

WAKANUI(港区東麻布2-23-14 トワ・イグレッグB1,tel:o3-3568-3466)

2012-05-29 00:32:47 | グルメ

 麻布十番にある焼肉とワインのお店です。
 
                   

 WAKANUIというのは、ニュージーランドの地名。ここで飼育されている牛と羊の肉が使われていて、その地名が店の名前になっています。

 WAKNUIは地下鉄大江戸線で「麻布十番」で下車。そこから徒歩で、7-8分です。といっても、大江戸線はどの駅も地下深いので、地上にあがってくるまでが一仕事です。

 地下のこのお店に入ると、暗い照明の空間がひろがっています。おしゃれな光線、間取りです。メニューには牧草牛ヘイファー(フィレ250グラム)とかオーシャンビーフ(リブアイ・カット、350グラム)とか、要するに焼肉の種類と量(重さ)で一覧されています。分厚い焼肉となってでているので、少しばかり時間がかかります。出来あがったものは、ガーリックソース、ワサビ、粒マスタードを好みでつけて食べます。

 その間、スープ(ビシ・ソワーズ)、サイドサラダ(シーザーなど)を注文すると間がとれます。アルコールは、ビール、次いでワイン(ピノ・ノワール、カベルネ・ソービニヨン、ソービニヨン・ブラン)をチョイス。たぶん、ワインはニュージーランドのものでしょう。突き出しに仔牛のスペアリブのようなものが出てきました。

              


 美味しい焼肉を一年に一度くらいは食べたいですね。そういうときにはお勧めのお店です。そのかわり、日常は節約と倹約が美徳です。美食は健康にはクエッションですが、ときにはそれも許されるでしょう。

 その日は日曜日だったせいか、家族づれ、気軽な友達どうしが多く、賑やかな歓談ぶり。ちょっとびっくりしたのは相撲の力士が遠くに座っていました。関取かそうでないかはわかりません。


読書マラソン、その後

2012-05-28 00:11:32 | 読書/大学/教育

 Amazonの読書マラソンのことを、本ブログ5月4日付で書きました。約100万人以上が走っているこのマラソン、5月4日時点で、わたしは1576位でしたが、5月27日付で1205位です。370位ほど順位をあげましたが、5月4日時点で目標にしていた5月中に1000番以内というのはかなり無理のようです。

 だんだん順位を上げることが困難になっています。強豪がたくさんいるということ、上位になればなるほど強い人がいるということで、彼らを抜いていくことは容易ではありません。

 だんだんいろいろなことがわかってきました。この独特の世界の実情を知らないと、順番が上がりません。いくつか面白いことがあります。
 この読書マラソンでは毎日レビューを投稿しても順位はただちに上がらず、自分の書いたレビューに他の方が「参考になった」と言ってくれないと努力は実りません。しかしこの他の方に「参考になった」と書いてもらうのが、わたしにとってはなかなか大変です。理由はいくつかあります。

 ひとつは、Amaoznでは名著といわえるものでもかなり古いものにはレビューが書かれていないものがたくさんありますが、わたしが書くレビューには比較的古い本が多いので、それが他の方々の目をひかないようです。Amaoznのレビューはその意味で非常に偏っています。(逆に現在の売れ筋の本にはレビューがたくさん寄せられています)。

 次に論争になっているものにレビューを書きこむと、それに対して賛否の両方から意見が寄せられ、結果的に「参考になった」として言ってくれる方々の比率が高くなくなり、そうすると順位は落ちます。憲法問題、TPP問題、原発問題などはその最たるもので、それついて書かれた本の評価は投稿しないほうがいいようです。そういうことがわかりました。順位をあげることにだけ関心をもつと、デリケートなテーマについては自分の意見を言わない方がいいらしいことがわかりましたので、いまはこのあたりをよく考えながら投稿しています。

 Amazonといえどもネットの世界。そこでの住民は、現実のそれとはだいぶ違います。一番違うのは、匿名の人物が圧倒的に多いということでしょう。どこの誰のだかわからない人が、性別も年齢もわからない人が(予想がつくケースはありますが)、レヴューをし、それに賛否を唱えているのです。このことからくる独特のこの世界の様子を見極めながら行動することが必要です。


「車屋」(文京区根津2-18-2;03-3821-2901)

2012-05-26 00:13:49 | 居酒屋&BAR/お酒

         

 「車屋」。根津にある居酒屋です。千代田線「根津」で下車。駅前の路地裏界隈を歩いていて、見つけました。入口から店のなかまでみえ、典型的な居酒屋風景。一日の仕事をおえてビールを片手にひといきついている人、中年のカップル、和気あいあいとお酒を飲み、つまみをほおばりながら談笑していました。席はほぼ満席ながら、丁度、支払いをすませて出ていく集団があり、うまく入れ替えで座ることができました。


 ひとわたりぐるりとまわりをみわたすと、上の写真のように、カウンター席の上方に、ふぐの剥製がつってあります。ハリセンボンのようなものもあわせると3匹くらい。これが最後まで印象的でした。またここのマスターは、料理の鉄人、あの道場六三郎さんのところで修業したそうで、壁に道場六三郎さん直筆の色紙がかかげられていました。その横には、あの岸朝子さんの色紙も。

 ここに来る前に「はん亭」で串揚げを食べていたので、つまみを軽めに注文。こまい、たらこ、などなど。こまいは感じで「氷下魚」と書く魚で、若いころ、北海道でよくたべましたが、関東ではあまりみかけません。むかしは畑の肥料にしたり、捨ててしまうような魚で、値段も安価でしたが、いまではそれほど安い魚ではありません。カンカイとも言いました。懐かしく昔を思い出しながら食べました。

 ビールより、焼酎に気持ちが向かい、この日はもっぱら焼酎三昧。根津の雰囲気に親しみつつ、いい夕べでした。


東京散歩(11)「立教大学(豊島区西池袋3丁目)」

2012-05-25 00:33:06 | 旅行/温泉

         

 本ブログで、以前「東京散歩」という記事を連載で書いていましたが、2010年7月10日付の「生田緑地」のNO.10を最後に、立ち消えになっていました。復活します。


 NO.11は立教大学です。写真は現在の立教大学、本館にからまるつたが緑に映え、綺麗です。キャンパスはさほど大きくなく、ここに文学部、経済学部、法学部、理学部、社会学部、経営学部、異文化コミュニケーション学部の学生が学び、他に埼玉県の新座市に新座キャンパスがあり、そこでは観光学部、コミュニティ福祉学部、現代心理学部の学生が学んでいます。

 立教大学は創立の頃は、英語学校として築地にありましたが、いまはここに。かつて池袋モンパルナスが華やかだったころ、大学の校舎は何度もキャンバスに描かれました。建物が欧風でモダンに見えたのでしょう。

 実際、キャンパスのなかは緑が多く、花々も四季おりおりに咲き誇っています。被写体として綺麗なこともあり、それが理由かどうかはわかりませんが、この大学出身の映画監督は学生のころからキャンパスのなかで映写機をまわしていたと、聞いたことがあります。

 クリスマスの頃には正門にある2本のヒマラヤスギにイルミネーションのように色とりどりの電球が飾られ、キリスト教を建学の精神にもっているこの大学らしい雰囲気をみせています。

 


乙川優三郎『逍遥の季節』新潮文庫、2012年

2012-05-24 00:01:33 | 歴史

          

  「竹夫人」「秋野」「三冬三春」「夏草雨」「秋草風」「細小群竹」「逍遥の季節」の7編。


  江戸の時代に、芸に身をよせい、芸を夢に見、芸によって現実と関わった人たちの生き方が、巧みな文章で、活写されています。
  その芸とは、三弦、蒔絵、茶道、画工、根付、糸染、雛細工、髪結、活花、舞踏などさまざまです。

  芸をとおして関わる男と女、市井の人々、作者は彼らの生活をいつくしみ、彼らの気持ちによりそって物語っています。際立つのはどうしても女性の生活と人生です。
  「竹夫人」の奈緒、「秋野」の千津、「三冬三春」のヒロインで阿仁(紅雨)、「夏草雨」のふさ、みなそれぞれの境遇のなかで精いっぱいに、自分の人生を引き受け、生きています。彼女たちの生きる姿勢がたくましく美しい。

  実在した人物が登場し(酒井抱一、谷文晁、原羊遊斎、小島漆壺斎、昇龍斎光玉など)、また「夏草雨」「秋草風」が東京国立博物館所蔵の酒井抱一の屏風の画題であるなど、小説でありながら現実味が醸し出されています。作者の巧みな工夫です。
  「解説」で島内景二さんは、さらに読み解いている、「俳句の季節感は、短編集『逍遥の季節』全編に浸潤し、そのみずみずしさの源泉ともなっている。「竹夫人」(夏)から始まって、「秋野」(秋)、「三冬三春」(冬、春)、「夏草雨」(夏)、「秋草風」(秋)、「細小群竹」(冬)、「逍遥の季節」(春)というように、四季が二巡する配列である。/抱一の画題に因んで構想された一対の「夏草雨」と「秋草風」を短編集の中心に配置するためと、再び巡り来た春の生命力をことほぐ『逍遥の季節』から季節の運行が始まったのだろう」と(p.265)。


 何度も読みなおして、味わいたい佳作の玉手箱です。


AVE MARIA OF GREAT COMPOSERS(アヴェ・マリア名曲集)

2012-05-23 00:20:25 | 音楽/CDの紹介

           

 聖母マリアはカトリックの世界ではもとより、絵画の世界でも、音楽の世界でも重要な位置をしめています。多くの絵画、宗教音楽のなかにのこされている素晴らしい聖母マリア像から、彼女がいかに大切にされてきたかがわかります。中世のグレゴリオ聖歌依頼、礼拝で音楽が使われるようになって、多くの<アヴェ・マリア>が作曲され、歌われてきました。


 このCDは一流の作曲家によってつくられた、マリアをたたえる歌曲の一部です。といってもこのように一枚のCDにまとめて<アヴェ・マリア>が収められているのは珍しいです。

 何百年もの間に作られてきた<アヴェ・マリア>は、多くはラテン語の教会祈祷文による共通の歌詞をつかっているようですが、曲によってはそれが途中までであったり、異なる歌詞が使われていたりと、例外もあります。

 どれも豊かで、清澄で、天からの歌声のように聞こえます。あがめられたマリアの姿が、心のなかに尊い滋養となってよみがえります。

・シューベルト:アヴェ・マリア(4:50)
  イングリド・ケルテシ(ソプラノ)、ラースロー・コヴァーチュ指揮/カメラータ・ブダペスト
・バッハ:アヴェ・マリア(2:40)
  イングリド・ケルテシ(ソプラノ)、ラースロー・コヴァーチュ指揮/カメラータ・ブダペスト
・カッチーニ:アヴェ・マリア(4:07)
  ユ・シュチン(ソプラノ)、アントニー・ウォーカー指揮/オーストラリア・シンンフォニア
・ブラームス:アヴェ・マリア(3:31)
  ロバート・ジョーンズ指揮/セント・ブライド教会合唱団
・ブルックナー:アヴェ・マリア(3:03)
  ロバート・ジョーンズ指揮/セント・ブライド教会合唱団
・ジョスカン・デ・プレ:アヴェ・マリア(5:28)
  ジェレミー・サマリー指揮/オックスフォード・カメラータ
・エルガー:アヴェ・マリア(2:42)
  クリストファー・ロビンソン指揮/ケンブリッジ大学セント・ジョーンズ聖歌隊
・ドニゼッティ:アヴェ・マリア(5:11)
  カメラータ・ブダペスト、ハンガリー国立歌劇場合唱団
・ヴェルディ:アヴェ・マリア(5:30)
  ピエール・ジョルジョ・モランディ指揮/ハンガリー国立歌劇場合唱団
・リストアヴェ・マリア(4:01)
  アントラネッラ・バルドゥッチ(ソプラノ)、ディエゴ・ファゾリス指揮/ルガーノ・スイス放送局合唱団


大相撲夏場所・平幕同士の優勝決定戦(両国国技館)

2012-05-22 00:08:08 | スポーツ/登山/将棋
            


 相撲が好きなので、昨日の千秋楽の一日のことを書きます。

 千秋楽にあたったこの日(20日)、NHK・TVの正午のニュースで琴欧州・休場が伝えられました。思わず「エー」。
 というのは、この日まで、3敗は稀勢の里、栃
山、旭天鵬、4敗は白鵬、隠岐の海、碧岩。もし3敗力士がそろって敗れ、4敗力士がそろって勝てば、6人の力士による優勝決定戦がありえたのですが、琴欧州休場で対戦相手の栃王山が不戦勝となり、ここで4敗力士の優勝決定戦進出の可能性は消えてしまいした。

 さて、豪栄道と旭天鵬戦。いい取り組みでした。守勢にまわった旭天鵬でしたが、土俵際でこらえて挽回、豪栄道の左足が俵をわり、砂をはいて黒星。行司軍配は旭天鵬にさっとあがりましたが、豪栄道も足がでたのに気がつかなかったのか、取り組みが続き、旭天鵬は土俵下へ。観客の多くは豪栄道が勝ったと思ったのではないでしょうか。しかし、先に足が出た豪栄道は負けです。旭天鵬が勝って、優勝決定戦のあることがまず確実になりました。

 残りの3敗は大関稀勢の里。稀勢の里は対戦相手の把瑠都を苦手としています。一時は優勝候補一番手にいた稀勢の里。初優勝目前でしたが、ずるずると負けが重なり、ついに3敗。優勝するためにはどうしても把瑠都に勝たなくてはなりません。
 立ち合い。把瑠都ののど輪攻めをかいくぐって一気に押し込んだ稀勢の里。誰もが稀勢の里の勝ちとみたでしょうが、今日に限って(?)、把瑠都が驚異的な粘りをみせ、土俵際上手投げで体をいれかえ、両者重ねもち、もんどりうって土俵下へ。把瑠都が勝を制しました。この日、一番の熱戦でした。

 稀勢の里の敗北で、史上初の平幕同士の優勝決定戦となりました。旭天鵬(37歳)と栃山(25歳)の対決です。本割では、旭天鵬がはたきこみで勝っています。

 優勝決定戦は、一瞬の勝負でした。立ち合い、上手をとった旭天鵬ですが栃山に一気に押し込まれ、ここで旭天鵬が土俵際ではたき込み。旭天鵬は土俵下に飛びましたが、その前に栃山が前に落ちました。かろうじて残してはたきこんだ旭天鵬に凱歌があがりました。涙の初優勝です。

 久しぶりに6大関の場所で話題をよんだ今場所でしたが、星のつぶし合い、そして横綱白鵬が珍しく中盤負けが込み(3連敗)で、前頭の力士にチャンスがまわってきました。優勝争いが大混戦になり、見応えのある場所でした。

 いくつか記憶にとどめたいことがあります。
 まず、白鵬が星を落とし、また指の剥離骨折で、これまでの横綱でしたら、休場だったと思います。それが気力を持ちなおし、大関戦で毎日圧勝し(千秋楽で日馬富士には負けましたが)、10勝までもってきたことです。一時は4敗ながら優勝の可能性まで期待させ、本人もそのつもありになったようです。
 次いで、角界に入って20年目、37歳8カ月の年齢で初優勝となった旭天鵬の努力。勝負をあきらめなかった執念は立派でした。苦労人が賜杯を抱き、涙したのにはうなずけます。ただ、来場所は相当地位も上がりますが、大変です。みっともない成績を残してはダメです。
 好取組、熱戦が多かったことも、特筆です。これによって、いつものように前半戦はガラガラだった客席が、最後の2日間は国技館に入れないほどの盛況だったようです。相撲人気が一時的に回復しました。
 最後に琴欧州の休場。怪我で足がはれていたというのですから致し方ないとはいえ、水をさしたのは事実です。もし、旭天鵬が本割で負けていたら、栃王山が不戦勝で優勝ということになってしまったからです。怪我をおして土俵にあがるのは無理だし、対戦相手にも失礼なので、ここは割り(取り組み)を組み直すなどの措置があってもよいのではないかと思いました。

 今場所は興味深く、後半戦は、NHKの5時20分から6時までの時間帯をビデオに録画し、夜に毎日見ました。それほど面白かったということです。

「大エルミタージュ美術館展」(国立新美術館;4月25日~7月16日)

2012-05-21 00:29:36 | 美術(絵画)/写真

           

 国立新美術館で開催されている「大エルミタージュ美術館展-世紀の顔・西欧絵画の400年-」に行ってきました。エルミタージュ美術館は、むかしからの憧れでした。数年前に、サントクトペテルブルクにあるこの美術館を訪れることができました。もっとも、この美術館は大変大きく、とても半日の鑑賞では、その上澄みをすくっただけですが・・・。


 どうしてこの美術館にあこがれていたかというと、その堅牢で巨大な建物の上に、彫刻の像が多数並んで威容をほこっていて、いやがおうにもその中身の想像力をかきたてられたこと、エカテリーナが国の威信をかけて収集につとめたコレクションであり、西欧絵画の粋が凝縮しているといわれていた、といった理由からです。

 今回、その一部が国立新美術館にきたというわけです。展示は5章にわかれています。
・第1章 16世紀 ルネサンス:人間の世紀
・第2章 17世紀 バロック:黄金の世紀
・第3章 18世紀 ロココと新古典派:革命の世紀
・第4章 19世紀 ロマン派からポスト印象派まで:進化する世紀
・第5章 20世紀 マティスとその周辺:アヴァンギャルドの世紀

 日本での西洋美術の紹介のされかたはやや偏りがあるように以前から思っていました。いい画が知られていません。そのことを再認識させられました。一例ですが、今回出品されていた16世紀の画家ボルドーネ、スケドーニ、17世紀の画家ホントホルスト、ステーンなどは、日本にはほとんど紹介もされていません。

 有名な画家の画はもちろんたくさんあり、改めてこのコレクションの幅広さがわかりました。ルーベンス、ヴァン・ダイク、ヴォロネーゼ、プ-シェ、ドラクロワ、コロー、ルソー、セザンヌ、ピカソ、ドラン、マティスなどなど。

 女性画家、ビジェ・ルブランの自画像に再会できたのも驚きでした。この画は本ブログ(2011 年4月25日付)で紹介したように東京の三菱一号館美術館にきていました。エルミタージュの蔵品でしたか・・・。

 会場はひろいせいか、ゆったり鑑賞することができました。この美術館では現在、セザンヌ展も開かれています。また上野の西洋美術館では、ボストン美術館の展覧会もあり、こちらにもそのうち出かけようと思っています。

      


榊原英資『為替がわかれば世界がわかる』文春文庫、2005年

2012-05-19 00:29:02 | 経済/経営

             

  「為替がわかれば世界がわかる」という標題になっていますが、話の中心はやはり為替の世界の理解の仕方です。冒頭に「21世紀のよみかた」があり、この部分で確かに若干21世紀の展望が示されてはいますが(アジアの台頭)、これだけでは本書の内容は変わらないと思います。


  筆者は財務省国際金融局の局長をつとめた人であり、実際に市場介入の政策判断の現場にいたことがあるので、その豊かな経験を紹介しつつ、為替相場の成り立ち、そこでの資金の動き方を展望しています。

  ロバート・ルービンの「世の中たしかなものなど決して存在せず、すべての現象は確率論的なものである」いう哲学、ジョージ・ソロスの「開かれた社会」における人間の「誤謬性」という哲学を称賛しています。また、スティグリッツによるマクロ経済学批判の姿勢を支持し、市場を読む基本原則の理論化という点で彼が成した貢献を評価しています。

  ヘッジ・ファンドの役割、情報の非対称性の容認、為替介入に必要なサプライズ、為替変動予測の限界などに関する著者の見解は傾聴に値します。

  5つの章(「第1章:為替市場は『美人投票』である」「第2章:為替取引は情報ゲームである」「第3章:為替の予測など当たるはずがない」「第4章:情報戦争で勝利する」「第5章:為替の背後に ing の世界が見える」)にキーワードが示され、これがいい指南役を果たしています。ReflexivityとFallibility(第1章)、イベント介入とロシア通貨危機(第2章)、プロジェクト・ファイナンスとワシントン・コンセンサス(第3章)、情報管理とフィジカル・コンタクト(第4章)、不胎化介入とグローバル資本主義(第5章)。

  コラム(「円・ドル相場の歴史をたどる」「古典派経済学と新古典派経済学」「アメリカが警戒するアジア共通通貨」「アジア通貨基金(AFM)構想」「Love Affair with Chinese economy?」)も面白いです。


和久峻三『仮面法廷』講談社文庫、1975年

2012-05-18 00:35:07 | 小説

 和久峻三さんの名前はよくみかけます。人気推理作家のひとりです。わたしは読んだことがありません。非常に作品が多いので何から手をつけてよいやら。あまり出来のよくない作品ですと、その作家の第一印象がわるくなり、以後、敬遠してしまうかもしれないので、無難(?)なところで、江戸川乱歩賞を受賞した「仮面法廷」から入ることにしました。 

              

 立ちあがって間もない不動産業者(黒川土地住宅株式会社)が琵琶湖を臨む時価10億円の土地売買に関連したトラブルに巻き込まれました。手続きにしたがって土地登記は成されたものの、登記に関連した書類が偽造されたものでした。


  当該の土地は既に売買が成立。振り込まれた10億の金は預金口座から巧妙に引き落とされていました。影に謎の女の行動が浮かび上がります(女地面師?)。

  不動産業者の専務、玉木は、トラブルの責任を土地の売り手に問われるハメに陥ります。

  その後、事件は急展開。玉木が頼った大物弁護士が自宅付近で殺害され、弁護士宅で手伝いをしていた美樹にその疑いがかかります。美樹は玉木のもとの妻でした。

  次いで、玉木とともに会社経営にたずさわっていた黒川が自宅で殺され、ここでも現場に残されていた遺失物から女性の犯行との推定がなされます。窮地にたつ美樹・・・。

  民事訴訟・民事裁判の複雑な実態、仮処分の法的手続きを巧みにかいくぐって甘い汁をすおうとする業者。

  サスペンス小説に欠かせないアリバイの究明とトリックの謎解きを盛り込んで、小説は展開されていきます。


板前寿司・赤坂店(港区赤坂3-8-17・バンジャバンビル1F、2F;03-6659-7288)

2012-05-17 00:09:09 | グルメ

                     

 キンキの煮つけがあるので、この店にいきました。キンキは魚です。札幌に居たころはよく食べましたが、東京にきてからは遠ざかっています。一番の理由は、こちらでは北海道よりやや高いからです。スーパーでは、それほど大きくないキンキが、2500-3000円します。当然、敬遠してしまいます。


 このお店は、お寿司屋さんですが、そのキンキの煮つけがリーズナブルな価格で提供されていました。

 この日は、このキンキの煮つけの他、筍の刺身、刺身5点盛りなどを注文しました。どれもこれも新鮮そのもの。
 キンキの煮つけは脂がのって絶好調。懐かしい味です。煮つけの汁も美味。
 筍の刺身は春の筍のにがみがほんのりと口にひろがり、この季節ならではでの味覚です。


 このお店は丸の内線、赤坂見附駅から徒歩3分くらいで便利です。雨の日には、とくにエキチカがいいですね。

 ここで少々話の脇道にそれると、赤坂見附の「見附」とは江戸城にあった物見(敵の侵入を見張る)櫓で36あったそうですが、いまはその遺構は赤坂見附、四谷見附など3つ残っているだけです。

 「板前寿司・赤坂店」は一階、二階とわかれていて、どちらも同じようなつくりです。一階にはカウンターがあって、その背後にテーブル席があり、そのかぎりでは普通のお寿司屋さんですが、二階にもカウンターがあります。
 地理が便利なせいか、お客さんで混んで、わいわい賑やかです。海外の方が目立つのは、このあたりに大使館があるからでしょうか? 英語があちこちから聞こえます。


 カウンターの端の予約した禁煙席に座り、お寿司屋なので最後は「にぎり」を注文しました。ウニ、中トロ、平貝、マグロと次々すすみました。

 お酒はビール、焼酎で完結しました。二次会は近くのBARで飲み直し・・・。                   

               


『おおきなかぶ』ロシアの民話、トルストイ再話、内田莉莎子訳、佐藤忠良絵(福音館書店)

2012-05-16 00:10:35 | 詩/絵本/童話/児童文学
                              
 わたしの子どもが好きだった絵本の4冊目は「おおきなかぶ」。ロシアの民話を文豪のトルストイが再編した童話で、子どもたちの間では圧倒的な支持をえています。いまでも、日本のどこかの家庭で、若いお母さんやお父さんが子どもにせがまれてこの本を読んでいるのではないでしょうか? そういった光景が目に浮かびます。

 こどもが喜ぶのは、おじいさん、おばあさん、孫、犬、猫、ネズミの動物たちが順番にくわわってかぶをぬくときの、「うんとこしょ、どっこいしょ、まだまだかぶはぬけません」がくりかえされる、そのわかりやすいリズム。そして今、書いたように、身近な動物たちがページをめくるごとに、次々にあらわれてくること。そして、さいごに、ねずみという小さな動物がくわわって、やっとかぶがぬけて、みんながひっくりかえりながら喜んでいること、などなど、子どもの気持ちにそって、お話が展開していく、その小気味よさです。
 最後に「やっと、かぶはぬけました」のところで、わたしの子どもはその状況にはいりきって、ひっくりかえっていました。

 絵は佐藤忠良さんという北海道で育った(生まれは宮城)彫刻家によります。女優の佐藤オリエさんのお父さんですね。素朴で力強い絵が記憶に残っています。

Live a Cortot:Paris

2012-05-15 00:10:12 | 音楽/CDの紹介

           
 このCDに収められている作品は、以下の2曲です。


・CHOPIN:Concerto nl en mi mineur,Soliste:Julien BROCAL(piano)

・MOZART:Symphonie Concertante en mi bemol majeur,Solistes:AYA KONO(violin),Jee Young SEOK(alto)

 最初のショパンのピアノコンチェルトは、ピアノの演奏者が楽しそうに弾いていて、その気分が伝わってきます。音がよくころがっています。リズミカルで、メリハリがあり、音色が澄んでいて素晴らしい演奏です。

 2曲目のモーツアルトでは、ヴァイオリンのAYA KONOさん、表情のある演奏ぶりです。

 このCDは、実はわたしの知り合いの娘さんであるAYA KONOさんが、現在パリでヴァイオリンの勉強中で、その成果を記念として録音したものです。AYA KONOは桐朋学園の出身、卒業後単身でパリに留学しています。

 CDのなかの織り込みに次のように紹介されています。

 Born in Tokyo,Aya Kono is a graduated of the Toho Music High School.
 
  She worked in Japan with Akuri Susuki, Akiko Tatsumi, Yoshio Uno, and played in many concerts if contemporary music. As the violin super solist of the Toho orchestra, she participated in public performances with Martha Argerich, Yuri Bashmet, Mario Brunello, Gidon Kremer・・・.

 In the fall of 2010, she joined in Paris the high level studies in violin and chamber music provided by Devy Erlih at the Ecole Normale de Musique de Paris.

 以前、彼女の卒業演奏会やパーティで生演奏を聴いたことがありますが、このCDを聴くとずいぶん成長したなと驚きました。ソリストとして活躍できるかもしれません。そうなることを切に願いながら、このCDを聴きました(非売品ですので購入はできません)。