【岩崎俊夫BLOG】社会統計学論文ARCHIVES

社会統計学分野の旧い論文の要約が日課です。

時々、読書、旅、散策、映画・音楽等の鑑賞、料理とお酒で一息つきます。

逢びき(Brief Encounter)デヴィット・リーン監督、イギリス、1945年。

2019-11-30 18:27:18 | 映画

                        

 
この映画は、中年の人妻と医者との束の間の、行き場のない愛をテーマとした佳作。家庭のある女性の平凡な日常に生まれた愛情がテーマである。木曜日だけの短い逢いびき。原作と脚本はイギリスの著名な劇作家、ノエル・カワード。「きざな会話や劇的な場面はひとつもない。それゆえに、ありふれたメロドラマに終わらなかった極上の叙情詩」である。

 ローラ・ジョンソン(シリア・ジョンソン)には、実業家の夫と二人の男の子がいた。何不自由のない幸せな生活であった。ローラは毎週木曜日にケッチワースからミルフォードの街に出掛け、買い物。午後は映画で気晴らし。夕方の汽車で帰宅するのが習慣であった。ある日、駅のホームにいたローラは、汽車の排煙から出たススが目に入り、とれなくなった。医者であるアレック・ハーベイ(トレーヴァー・ハワード)がたまたまそこに居合わせ、親切にススを取り除いてくれた。

 翌週の木曜日、ローラは再びミルフォードへ。買い物の途中、偶然アレックに会った。思いがけない再会に、爽やかな挨拶。帰り際、駅でチャーレー行きの汽車を何げなく見送る。そして、次の週。夫の誕生日のプレゼントを求め、混んだレストランで食事をしていたところに、アレック飛び込んで来た。同じテーブルで食事。ローラはここでアレックがチャーレーで家族とともに住み、木曜日だけ大学で同期だった友人が主任であるミルフォードの病院に代診にきている医者と知った。その日の午後、二人は一緒に映画を見て、帰りの汽車を待つ駅の喫茶室で、次週の再会を約束して別れた。予防医学のことなどを少年のように熱っぽく語るアレックに、ローラは何かしら惹かれるものを感じたが、一方で危険な匂いを直感し、「二度と逢うまい」と心に誓うのだった。

 約束の木曜日、約束を儀礼的に果たそうとレストランでアレックを待った、彼は現れない。急の手術が入ったためだった。ケッチワースに帰る時間になり、駅の喫茶室で汽車を待っていると、彼が息を切らして駆けつけた。次週のデートを約束し、チャーレー行きの汽車に飛び乗るアレック。

 翌週。二人は映画鑑賞を早めに切り上げ、散歩。ボートを漕ぎ、楽しい時間を過ごした。アレックは、ローラに愛の気持ちをうちあけた。ローラも同じ思いであったが、お互いに家庭があり好き勝手なことはできない、障害が多すぎる、今なら後戻りできる、分別をとりかえさなくては、と訴えた。別れ際の抱擁と接吻。ローラはロマンチックな甘い夢に酔い、アレックとパリ、ベニスと世界中を旅行している自分に酔った。帰宅後、夫に嘘を言った、「映画を一人で見て、食事を友達のメアリーとした」と。結婚後、夫についた初めての嘘であった。

 アレックとローラはデートを重ねた。不実の愛情はどこに行きつくのであろうか。友人から借りた車でローラと田舎をドライブ。二人の関係は危うかった。どんなに二人が愛し合っているかも、互いに理解していた。留守中の友達のアパートにローラを誘うアレック。彼女はこれを拒否し、いったんは帰ろうとし、汽車の座席にすわったが、思い直して彼の待つアパートの一室に戻った。ところがそこに風邪気味で急遽予定を変更して、友人が帰って来た。ローラは慌てて裏階段から逃げ、降りしきる雨のなかを逃げ帰った。ローラは愚かな自分を問いつめ、良心の呵責に苛まれ、涙を流す。部屋に置き忘れられた女物のスカーフを見つけた友人は、アレックを非難した。アレックは、ローラを追った。泣き崩れるローラにアレックは、別れの決断を告げた。兄が開いたアフリカのヨハネスブルクの病院に行くとの決意であった。

 想い出の田舎へのドライブの後、最後の別れの場面。駅の待合室で二人は沈痛な面持ちで汽車を待っていた。そこへ偶然、ローラの友人ドリーが現れて、二人の事情に無頓着に喋りかけてきた。二人は別れの言葉を交わすこともできず、アレックはローラの肩に軽く手を押して、やがて入って来た汽車に乗るのだった。この映画の冒頭の場面に戻る。アレックは、チャーレーに帰る。列車の音に耳を澄ますローラ。

 ローラは力を落として帰宅。精彩が無い。「この切ない気持ちは、いずれ忘れるわ。しっかりしなきゃ。永久に続くものはない。幸せも絶望も、人生だって。今に平気になる時がくる。あの一瞬一瞬を覚えていたい。いつまでも」。全てを察した夫は「遠くに旅していたようだったね。よく戻って来た」と優しく彼女を抱くのだった。

 効果的に流れるラフマニノフのピアノ協奏曲第二番の旋律。人々が往来するミルフォード駅の喫茶室の風景。蒸気機関車の黒い車体と汽笛。二人の関係が容易ならざるものに向かって行くことを伝える画面展開。デヴィット・リーンの巧みな演出とそれに応えた二人の名優が忘れられない。第一回(1946年)カンヌ映画祭グランプリ、国際批評家賞。


明日の朝食は?

2019-11-29 23:54:26 | まかないごはん
就寝前に翌日の朝食をつくるのが日課です。

いま、それを作り終えました。といっても、色どりとバランスを考えて並べるだけです。画像の小鉢のなかの白いものは、牛乳で煮たカリフラワーをマッシュしたものです。毎日、この調子でやっていいます。ナッツ、スクランブルエッグ、ヨーグルト、チーズ、カニカマなどを飽きないようにまわしていきます。(3日に一回くらいは和食ですが、就寝前に用意するのは同じです)

これにコーヒーとバナナ入り小松菜ジュース(豆乳)をつけて、明日のスタートです。





赤花そば祭り(栗橋)

2019-11-20 20:17:19 | イベント(祭り・展示会・催事)
そばの花は白いものだと思っていたが、先日、栗橋で「赤花そば祭り」というのがあったので、出かけてみた。場所は宇都宮線「栗橋」駅下車で徒歩20分ぐらいのところにある「文化会館」の先。

下の画像の一番上が現場にあった鉢植えの赤花そば。この会場で、この赤花そばでつくったそばを販売していた。








日本野球発祥の地の記念碑

2019-11-13 18:24:50 | 散歩
学士会館(神田)のなかにある和食の店「二色」で会食をしました。この会館は、旧七帝大の同窓会組織が運営しているものです。

近くに日本野球発祥の地の記念碑、同志社大学の創設者、新島襄生誕の地を記念するモニュメントがあります。






小栗康平「泥の河」(1981年、105分)

2019-11-12 20:08:09 | 映画

 「泥の河」は宮本輝さんの小説(同名のタイトル)が映画化されたものです。この映画が公開された頃に、札幌のどこかの映画館で観た記憶があります。印象的でした。
         

 今回は2回目の鑑賞です。いくつかのシーンは覚えています。また改めて観て、よみがえってきたシーンもあります。そして全く忘れてしまっていたシーンがあったことを思い知らされました。

 昭和31年。舞台は大阪。安治川の川べりでうどん屋を営む家族がいます。男の子がひとり。名前は信雄(朝倉靖貴)。そしてその父母、晋平(田村高広)と貞子(藤田弓子)。ある日気づくと、お店の近くに船宿が浮かんでいました。船のなかでは、男女の子ども姉弟が二人と母親(加賀まり子)が生活していました。男の名前は喜一(桜井稔)、女の子の名前は銀子(柴田真生子)。

 ストーリーはこのうどん屋の子どもと船宿の男の子が仲良くなり、その交流です。とは言っても、船宿は、噂によれば、行ってはいけないところのようです。そこでは女性が男を呼び込んで、「商売」をしているようなのです。

 うどん屋のお父さんはみるからにいい人物で、船宿の姉弟を呼んで、食事をさせたり、手品を披露して喜ばせたりします。お母さんもちゃきちゃきした働き者の女性です。女の子と一緒にお風呂に入って、背中を流しあったりで歓迎します。

 天神祭りの日。すっかり仲良くなった信雄と喜一は、お小遣いの50円を握りしめて出かけますが、喜一はそのお小遣いを雑踏のなかで落としてしまいます。運悪く、あずかっていた信雄のお小遣いも一緒になくしてしまいます。

  しょんぼりした喜一は、信雄を船宿に招き、自慢の泥の河につっこんだカニの巣をとりあげ、たくさんのカニを得意げに見せます。喜一はカニの甲羅にランプの油を塗ってマッチで火をつけて遊びます。そして・・・・

 最後のシーンが悲しい。

 

 


アーヴィング・ラッパー監督「アメリカ交響楽(Rhapsody in Blue)」(アメリカ、1945年)

2019-11-11 23:51:15 | 映画

      
 アメリカに生まれ、38歳で脳腫瘍のため亡くなったブロードウェイの作曲家ジョージ・ガーシュウィン(ロバート・アルダ)の生涯を映画化した作品。ジョージの人生の喜びと苦悩、彼を中心とする家族、友人とのつながり、ジョージが目指し、作り上げた音楽とその環境などを知ることができるだけでなく、音楽、踊りがふんだんに盛り込まれ独特の音楽的香りを持った作品である。アル・ジョンソン、ポ-ル・ホワイトマン、オスカー・レヴァントなどのジャズ演奏家本人が出演しているほか、俳優が扮してではあるがラヴェル、ハイフェッツ、ラフマニノフなどクラシック界の大御所も出てくる。音楽ファンにはたまらない。

 ジョージは、子どもの頃からピアノを弾く才能があった。両親、とくに母親は家にピアノがあると文化的になるという理由から、また兄のアイラが弾いてくれたらと期待して中古のピアノを購入した。ところがピアノに真っ先に向かったのはジョージで、人に習ったわけでもないのに曲をひき、両親を驚かせた。それと言うのも、ジョージは音楽が好きで機会があればピアノに向かい練習をしていたからであった。両親はそれを知らなかっただけであった。

 音楽を本格的に学ぶことになったジョージはピアノ(特にドビュッシーやラヴェル)と理論・オーケストレーションに打ちこんだ。最初の目標はクラシックのピアニストだったが、結局、彼は十五歳で高校を中退。ポピュラー音楽の作曲家・出版社が集まるニューヨークの一地域にある出版社レミックで楽譜宣伝用のピアニストになった。彼はここで自作の曲をいくつか書くが、レミックには気に入られない。また、ジュリー・アダムスという女性に出会い、生涯の友人となるきっかけを得たが、自作曲スワニーを彼女に歌わせたことでレミックと決裂、結局ジョージはそこを辞めざるをえなくなった。その後、彼は地方廻りの伴奏ピアニストをし苦労したが、一九一九年、初めてのブロードウェイのショー作品 La、 La、 Lucille で転機を得た。100回もの公演を続けるなか、当時大スターであったボードビリアンでジャズ・シンガーのアル・ジョンソン が スワニーを自分のショーに取り入れ、これが大ヒット。映画ではここでジョンソン本人が登場して、この歌をたっぷり聴かせてくれる。ジョージは、ソングライター界で一躍有名になった。「アメリカは今、成長しつつある国だ。羊と狼、理想と現実が矛盾しながら同居している。アメリカに声を与える音楽家になって欲しい」とフランク先生がジョージを励ますシーンも感動的だ。

 兄のアイラと二人でコンビを組み、数々の名曲を生み出したジョージ。しだいに、クラシック音楽に対する憧れが強くなり、本物の音楽を学びにパリに飛んだ。その成果は The Rhapsody in Blue や An American in Paris、 Concerto in F として現され、オペラ Pogy and Bess はその集大成となる作品であった。不朽の名作  Summertime  で有名なこのオペラは、Dubose Heywardの小説をもとにつくられた作品である。主要な作品は映画の中でも紹介され、楽しい。さらに、家族の人達に大事にされていたジョージ、またジュリー・アダムスとの恋愛、作曲だけでなく舞台、コンサート、撮影所とのかけもちで多忙だったガーシュインの生活が描かれている。

 脳腫瘍のせいか、疲労のせいか、彼はしだいに頭の痛みを訴え始め、指が自由に動かなくなった。ピアノ弾きにとっては、致命的な症状であった。最後の場面、ジョージの死がコンサート会場に伝えられ、友人のオスカー・レヴァントが追悼で The Rhapsody in Blue をピアノ演奏。ジュリーの顔、そして生涯独身であった生前のジョージの演奏姿が重なって行く。


パーシー・アドロン監督「バグダッド・カフェ」(西ドイツ、91分、1988年)

2019-11-10 22:46:00 | 映画


 なんとも独特のニュアンスのある映画です。2回目の鑑賞です。10年ほど前に初めて観ました。BSで観た今回が、2回目です。

  アメリカのラスベガス近郊のモハーヴェ砂漠のなか。ひなびたカフェがある。モーテルでもあり、簡易宿泊ができる。来るお客は少ない。ここを仕切っているのは、ブレンダ(CCH・パウンダー)という女性。ギスギスした雰囲気であり、家族がいるが怒鳴りあっている。夫とは喧嘩をし、追い出した(逃げていった?)。

  そこに太っちょのドイツ女性がひとり、とぼとぼ荷物を引いてやってくる。あてもなくここに来た様子。宿泊の申し込みをする。名前は、ジャスミン(マリアンネ・ゼーグブレヒトが)というようだ。
  この女性もわけあり人生の様子。映画の冒頭で夫と一緒にラスベガスを目指していたが、ささいなことで言い争いになり、車から降ろされ、おいてけぼりになった。砂漠のど真ん中で。やっと歩いてこのカフェにたどり着いたという感じである。

 ブレンダはこの女性の宿泊を許可するが、うさんくさげで、ジャスミンの様子をうかがう。ジャスミンはジャスミンで、マイペースで部屋のなかを整えたりし、そのうち長居になってくる気配。ブレンダはこの怪しげな女性に落ち着かない。保安官を呼んで調べさせたりするが、とくに問題なし。ますますいらだつブレンダ。

  ジャスミンはしだいにブレンダの子どもたちと仲良くなる。ブレンダはそのことにも面白くない。

   だが次第にジャスミンはカフェにたむろする人たちとなじんでいく。覚えたマジックで人気を博し、噂を聞いて、お店に来る人も増えていく。お店が繁盛しているのであれば、ブレンダも悪い気持ちはしない。彼女への不信感も徐々に消えていく。否、むしろ親しみ、信頼さえ生まれてくる。子どもたちも、かつてハリウッドの大道具の仕事をしていた画家(ジャック・パランス)もジャスミンをしたうようになる。が、突然・・・。ジャスミンに不法就労の疑いが・・・。

  何度も書くが、筋立ては以上のようだが、このように話がきちっと進んでいくわけではなく、独特のセンスでシーンが展開する。カットが短く、意表をついてくるので、目をはなせない。ブーメランが飛んでいたり、手品があったり。

   映画のなかに挟まれているジェヴェッタ・スティールの「コーリング」という歌がアンニュイで記憶のなかにきざまれる。相当、流行ったようである。監督はパーシー・アドロン。主役のマリアンネ・ぜーぐブレヒトが好きで、この映画を作ったという。

  

 


武相荘(ぶあいそう) 東京都町田市

2019-11-09 23:51:18 | 散歩
東京都町田市鶴川界隈にある「旧白洲邸」。「武相荘(ぶあいそう)」とよばれています。「武」蔵野国と「相」模の国の境にあること、それと「無愛想」とをひっかけて次郎が名づけました。

実業家であり貿易庁長官だった白洲次郎と随筆家であった正子が住んでいた茅葺の家屋です。もともとは農家だったものを次郎・正子夫妻が購入し、リフォームして使っていました。なかは書斎、寝室のほか、蒐集していた調度品が展示されています(撮影禁止)。質素を旨とし、しかしジェントルに生きること、農業を尊ぶ生き方を希求しました。