イリーナ・メジューエワ ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ全曲演奏 第3回
今回の演奏曲目は、下記のとおりです。
「ピアノ・ソナタ第9番」は3楽章からなっていますが、遅い楽章がありません。珍しいことです。多くは2楽章が Andante など遅くなりますが、この曲は違います。このメヌエット・スケルツォ風の第2楽章のテンポの解釈はいろいろで、バックハウスはかなりのスピードで弾くとか、それに対しリヒテルはゆっくりめだそうです。イリーナさんは、この2人の演奏家の真似をして部分演奏してくれました。
「ピアノ・ソナタ第3番」は、スケールの大きい曲です。第1番、第2番とこの第3番で「弁証法」的というのがイリーナさんの説明です。すなわち第1番は内面的なのに対し(テーゼ)、第2番は明るく外向きの曲(アンチテーゼ)、それで第3番はそれを総合したようなブリリアントな曲だそうです(ゼンテーゼ)。
また、この第3番はオクターブのトレモロ、分厚い和音、3度のトリルなど演奏テクニックが問われます。ここも部分演奏で説明してくれました。
「ピアノ・ソナタ第11番」は、完成度の高い作品です。一楽章、二楽章がソナタ形式、三楽章が古典的メヌエット、四楽章がロンド・ソナタです。
「ピアノ・ソナタ第26番 変ホ長調」は、「告別」という名称がついています。楽譜の出版社がつけたのだそうです。一楽章はその告別 [Das Lebewohl]、二楽章は不在 [Abwesenheit]、三楽章は再会 [Das Wiedersehen]です。
イリーナさんは、今回、以前にもまして入魂の演奏でした。演奏中の表情がいいですね。ダイナミックなところ、微細なところ、緩急がありました。
帰り際に Мне очень нравится ваш концерт. Средуюший рас! と.イリーナさんに話しかけたところ、彼女は Спасибо. と笑って応えてくれました。 ピアノ・ソナタ第9番 ホ長調 op.14-1
Ⅰ Allegro
Ⅱ Allegretto
Ⅲ Rondo. Allegro comodo
ピアノ・ソナタ第3番 ハ長調 op.2-3
Ⅰ Allegro con brio
Ⅱ Adagio
Ⅲ Scherzo. Allegro
Ⅳ Allegro assai
ピアノ・ソナタ第11番 変ロ長調 op.22
Ⅰ Allegro con brio
Ⅱ Adagio con molta espressione
Ⅲ Minuetto
Ⅳ Rondo Allegro
ピアノ・ソナタ第26番 変ホ長調 op.81a
Ⅰ [Das Lebewohl] Adajio. Allegro
Ⅱ [Abwesenheit] Andante espressione
Ⅲ [Das Wiedersehen] Vivacissimamente