あるニヒリストの思考

日々の思いを綴る

無知な人間と傲慢な人間について。(人間の心理構造その15)

2023-03-10 17:00:23 | 思想
「子供は正直だ」という言葉がある。言うまでもなく、大人には嘘をつきだます人がいるから、その言葉や行動を全面的には信用できないが、子供は自分の気持ちに正直に言い行動するら信用できるという意味である。しかし、子供は、社会性が乏しいから、深層心理が思考して生み出した感情と行動の指令という自我の欲望に従って、正直に言い行動しているだけなのである。深層心理とは、人間の無意識の精神活動である。自我とは、ある構造体の中で、あるポジションを得て、それを自分だとして、行動するあり方である。構造体とは、人間の組織・集合体である。構造体には、家族、国、学校、会社、店、電車、仲間、カップル、夫婦、人間、男性、女性などがある。家族という構造体では、父・母・息子・娘などの自我があり、国という構造体では、総理大臣、国会議員、官僚、国民などの自我があり、学校という構造体では、校長・教諭・生徒などの自我があり、会社という構造体では、社長・課長・社員などの自我があり、店という構造体では、店長・店員・客などの自我があり、電車という構造体では、運転手・車掌・客などの自我があり、仲間という構造体では、友人という自我があり、カップルという構造体では恋人という自我があり、夫婦という構造体では、夫・妻という自我があり、人間という構造体では、男性・女性、大人・子供という自我があり、男性という構造体では、老人・中年男性・若い男性・少年・幼児などの自我があり、女性という構造体では、老女・中年女性・若い女性・少女・幼女などの自我がある。人間は、自我を持って、初めて、人間として行動できるのである。人間は、いつ、いかなる時でも、常に、構造体の中で、自我を持って、暮らしているのである。そして、深層心理が、人間の無意識のうちに、自我を主体に立てて、快楽を求めて、思考して、感情と行動の指令という自我の欲望を生み出し、人間を動かしているのである。深層心理は、欲動に応じた行動を行えば、快楽が得られるので、欲動に従って思考して、感情と行動の指令という自我の欲望を生み出すのである。すなわち、人間は深層心理に動かされているが、深層心理もまた欲動に動かされているのである。欲動とは、深層心理に内在している四つの欲望の集合体である。欲動の第一の欲望が、自我を確保・存続・発展させたいという保身欲である。欲動の第二の欲望が、自我が他者に認められたいという承認欲である。欲動の第三の欲望が、自我で他者・物・現象などの対象をを支配したいという支配欲である。欲動の第四の欲望が、自我の趣向性に合った他者と心の交流を図りたいという共感欲である。子供が、親の制止を聞かず、玩具店でおもちゃを離そうとせず、スーパーマーケットで菓子を離そうとしないのは、深層心理が、物という対象をを支配したいという支配欲に応じて、怒りの感情とおもちゃ・菓子を離すなという行動の指令を、自我の欲望として生み出したからである。

しかし、深層心理には、超自我という機能もあり、日常生活のルーティーンから外れた行動の指令を抑圧しようとするのである。超自我は、深層心理に内在する欲動の第一の欲望である自我を確保・存続・発展させたいという保身欲から来ている機能である。しかし、子供は、社会性が乏しいから、自我を失う怖さを知らず、超自我がおもちゃ・菓子を離すなという行動の指令を抑圧できないのである。超自我が抑圧できない場合、人間は、表層心理で、深層心理が生み出した感情の下で、深層心理が生み出した行動の指令について、現実的な自我の利得を求めて、道徳観や社会的規約を考慮し、長期的な展望に立って、許諾するか拒否するか思考するのである。表層心理とは、人間の自らを意識しての精神活動である。人間の表層心理での思考が理性であり、人間の表層心理での思考の結果が意志である。現実的な自我の利得を求める欲望は、自我に利益をもたらし不利益を避けたいという欲望であり、フロイトは現実原則と呼んだ。人間は、表層心理で、自らを意識して、深層心理が生み出した行動の指令について、それをそのまま実行すればどのようなことが生じるかを、自我に利益をもたらし不利益を被らないないようにしようという現実原則の視点で、他者に対する配慮、周囲の人の思惑、道徳観、社会規約などを基に思考し、許諾するか拒否するかを決定するのである。しかし、深層心理が生み出した感情が強過ぎると、超自我と同様に、表層心理での意志による拒否による抑圧も、深層心理が生み出した行動の指令を抑圧できないのである。そして、深層心理が生み出した行動の指令のままに行動し、自我に悲劇、他者に惨劇をもたらすのである。それが、所謂、感情的な行動である。しかし、玩具店やスーパーマーケットで駄々をこねる子供は、社会性が乏しいから、表層心理での思考ができず、必然的に、自らの意志でおもちゃ屋菓子を離すことができないのである。親が強制的に諦めさせるしかないのである。また、子供の世界にいじめが多いのも自我の欲望から発しているのである。人間、誰しも、自分の趣向性に合った、好きな人や心を許せる人と、楽しく暮らしたいと思っている。子供でも、毎日のように、クラスという同じ構造体で、生徒という自我を持って暮らしていると、必ず、好きな人と嫌いな人ができる。好きな人とは、共感欲によって仲間という構造体を作り、友人とという自我を持って、楽しく交流できる。しかし、一旦、自分が相手を嫌いだと意識すると、それが表情や行動に表れ、相手も自分も嫌いになり、同じ構造体で、共に生活することが苦痛になってくる。その人がそばにいるだけで、攻撃を受け、心が傷付けられているような気がしてくる。自分が下位に追い落とされていくような気がしてくる。いつしか、相手が不倶戴天の敵になってしまう。そうすると、深層心理は、思考して、怒りの感情と相手を攻撃し炉という自我の欲望を生み出し、相手を困らせることで、自我が上位に立ち、苦痛から逃れることを指令するのである。自分一人で攻撃すると、周囲から顰蹙を買い、孤立するかも知れないので、友人たちを誘うのである。自分には、仲間という構造体があり、共感化している友人たちがいるから、友人たちに加勢を求め、いじめを行うのである。友人たちも、仲間という構造体から放逐されるのが嫌だから、いじめに加担するのである。いじめの場合、超自我も、表層心理の思考での意志による抑圧も、働かないのである。秘密裏に行うからである。大人に知られず、罰せられる虞が無く、ルーティーンの生活が続けられ、罰せられる虞が無いからである。さて、子供は、無知ゆえに、自我の欲望に忠実に行動するが、社会を熟知しているゆえに、自我の欲望に忠実に行動する者が存在する。それは、政治家である。その頂点にいるのが総理大臣である。国という構造体では、総理大臣、国会議員、官僚、国民などの自我があるからである。特に、安倍晋三前首相が、国会で、強行採決を繰り返し、安全保障法制改定法案が可決させ、秘密保護法案、安保法案を通し、集団的自衛権を認めさせ、いつでどこでも、アメリカに追随し、日本を戦争ができる国にした。彼は、森友学園、加計学園、桜を見る会でも、不正を行った。深層心理が、人間の無意識のうちに、自我を主体に立てて、快楽を求めて、思考して、感情と行動の指令という自我の欲望を生み出し、人間を動かしているが、彼は、欲動の第二の欲望である他者に認められたいという承認欲と欲動の第三の欲望である他者を支配したいという支配欲を思う存分に発揮したのである。彼は、国民の支持率が高く、国民という他者に認められたいという承認欲が満たされたから、傲慢にも、自分は何もしてもよいと思い込んだのである。言わば、国民が彼の悪行三昧を許したのである。安倍晋三前首相は、国民の支持率が高いから、国民の批判が気にならなくなったのある。支配欲から、自分には思い通りの政策を行う資格があり、どのような行為も全て許されると思い込んだのである。人間は、人の目が気になるから、常識的に振る舞うのである。深層心理が、他者に認められたいという承認欲によって快楽を得ようと人間を動かしているからである。言い換えれば、深層心理が、他者に批判されて不快感を味わわないように人間を動かしているのである。安倍晋三前首相は、国民の支持率が高く、一部の国民の批判が気にならなくなったから、好き放題に政治運営ができたのである。このように、人間は、承認欲から、人の目が気になるから、世の秩序が守られているのである。犯罪者は、常に、犯罪を自分の正体を隠して行うのは、人の目が気になるからである。最初は殺す意図がなくても、被害者に自分の顔が見られた場合、後に、証言され、世間から非難され処罰されることを恐れて殺してしまうのである。承認欲のなせる業である。親が幼児を虐待するのも、自分の思い通りにならないからである。支配欲のなせる業である。内縁の夫が幼児を殺す場合幼児が彼に懐かなかったことが原因であることが多い。承認欲のなせる業である。人間は、人の目が気にならなくなると、残虐性を発揮するのである。おれは、人間は自我の欲望の動物だからである。常に、自分の意志に関係なく、深層心理が欲動の四つの欲望から快楽を求めて、感情と行動の指令という自我の欲望を生み出してくるからである。行動の指令の中には残虐なものもあり、超自我や表層心理の思考で抑圧しなければとんでもないことになるのである。ナチスが第二次世界大戦でユダヤ人を虐殺したのも、日本兵が太平洋戦争でアジア人や欧米人を虐殺したのも、アメリカ兵がベトナム戦争でベトナム人を虐殺したのも、ロシア兵がウクライナ国民を虐殺しているのも、人の目が気にならないからである。味方兵は人の目にならない。彼らもまた同じことをしているからである。敵兵や敵住民も人の目にならない。むしろ、怒りや憎悪を燃やす対象である。安倍晋三前首相が、森友学園、加計学園、桜を見る会で不正を行ったのも、沖縄を犠牲にしてアメリカに媚びを売っているのも、中国・韓国・北朝鮮に喧嘩を売っているのも、支持率が高いので、常軌を逸した自我の欲望を実行することを許されていると思っているからである。彼は、支持率が高いから、大衆の目を気にせず、自らの欲望のままに行動できるのである。彼に限らず、国会議員から町会議員まで、隙あらば、常軌を逸した欲望を実行しようと、虎視眈々と狙っているのである。権力を持った俗人とはそういうものである。だから、国民は、総理大臣は言うまでもなく、国会議員から町会議員まで、常に、監視しなければならないのである。