おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

グラン・プリ

2021-01-20 09:41:29 | 映画
「グラン・プリ」 1966年 アメリカ


監督 ジョン・フランケンハイマー
出演 ジェームズ・ガーナー
   イヴ・モンタン
   三船敏郎
   エヴァ・マリー・セイント
   ブライアン・ベッドフォード
   アントニオ・サバト

ストーリー
国際オートレースのトップをきって行われたモンテ・カルロのグラン・プリ・レースで惨事が突発した。
アメリカ人ピートは地中海に投げ出され、幸にも軽傷ですんだが、イギリス人ストッダードは壁に激突して重傷を負ってしまい、優勝したのはサルティだった。
レーシング・ドライバーの生活は女性の憧れの的だが、彼らの家庭生活は必ずしも平穏ではなかった。
ストッダードの妻パットは離婚を決意し、サルティはフェラーリ創立者の娘モニークと結婚していたが、生活は暗礁にのりあげ、雑誌記者のルイーズを愛し始めていたし、ピートの妻も彼のもとを去っていった。
傷心のピートに救いの手をさしのべたのは、ホンダの矢村で、日本チームへの参加を勧めた。
矢村のおかげでピートはよみがえり、つぎつぎとレースに優勝していった。
傷のいえたストッダードも第一線に復帰し、モンテ・カルロで2位に入賞したニーノ、それにピートとサルティを加えた4人が各地のレースでしのぎを削りあった。
そしてフォーミュラー・ワンの最後のレースであるモンツアのイタリア・グラン・プリを迎えることになった。
レースは白熱化し、異常な興奮をまき起こし、特にサルティの運転ぶりに大歓声が起こり、その歓声にホテルにこもっていたルイーズも思わず飛び出した。
だがその時、サルティの車はコントロールを失い、壁にあたって爆発してしまった。
レースはピートとストッダードの争いとなり、少しの差でゴールを奪ったのはピートの白いホンダだった。
新しいチャンピオンの誕生に観衆は熱狂するのだが・・・。


寸評
手元に残っているパンフレットの日付を見ると1967年3月12日となっている。
僕が高校3年生になったばかりにこの映画を見ていたことになるが、シネラマ方式で撮られた作品を専門的に上映する歪曲したスクリーンを持つOS劇場で見た時の驚きと感動は今でも蘇ってくる。
自動車のシーンと言えば、後ろのスクリーンに背景を投射し、その前に運転席のセットを置いて撮る手法に慣れっこになっていたのだが、今では当たり前となっている車載カメラによる臨場感あふれるシーンが目の前で展開され、あたかも自分が運転しているような錯覚に陥る衝撃を初めて味わったのである。
「みんな、あなたと一緒にクルマに乗っているのよ。彼らにはできない夢を叶えているの」 と言うエヴァ・マリー・セイントのセリフがそっくりそのままあてはまるのだ。
ジョン・フランケンハイマーがF1レースを撮って撮って撮りまくった映像が、オーバーラップ、画面分割により小気味よく流される。
オープニングではGRAND PRIXのタイトルが出たと同時に、ヴオン、ヴオンとエンジン音が轟き、白い排ガスが吹き出ると、画面はどんどん分割されていきF1レースの場面があれこれ出てくる。
タイヤ、プラグ、工具、観客の顔、顔、顔を映し出し、音楽はなしで心臓の鼓動、現場の雰囲気を伝える臨場感のある音、走行する車の爆音が鳴り響くというドキュメンタリー・タッチな描き方に思わず身を乗り出してしまう。
モナコ・グラン・プリの空撮にも酔いしれた。
結構長く感じる冒頭のレースシーンに釘付けになってしまう映像処理に酔いしれたのが昨日のことのようである。
自動車のレース映画といえば、かならず名前が出てくるのがこの「グラン・プリ」である。

普通の映画館よりも一格高かった料金にもかかわらず見に行ったのは日本人の三船敏郎が本格的にハリウッドデビューしていたからでもあった。
三船が演じる矢村のモデルは1964年からF1への挑戦をはじめたホンダの本田宗一郎だ。
三船敏郎は、スランプに陥ってフェラーリを首になったジェームズ・ガーナーにシートを用意し、「きみは勝てるドライバーだ」と励ます美味しい役どころだ。
これに絡むのが2度チャンピオンになったベテランのイヴ・モンタンと、怖いもの知らずの若きイタリア人ドライのバーアントニオ・サバト、大けがから復活を遂げるブライアン・ベッドフォード である。
映画はそれぞれが演じるアロン、サルティ、ニーノ、ストッダードの4人による群像劇だ。
レーサーには女がつきものといた具合で、女たちの物語も挿入される。
ストッダードの妻パットは元モデル時代の生活が忘れられず、夫を捨ててアロンに接近する。
サルティは大手自動車会社を経営する妻モニークとの関係が冷え切り、パーティーで知り合ったファッション雑誌編集者のルイーズと愛し合うようになる。
ニーノの恋人リーザはレーサーの地に足がつかない生活を察して去っていく。
しかし、それらの物語に軸足を移すことはなく、サルティを巡る二人の女の結末も想像に任されている。
1967年、映画そのままに、白いホンダのF1カーはモンツァで優勝する。
映画「グラン・プリ」のイタリアGPのゴール・シーンが、その1年後に現実世界で起きたのだ。
その後、ホンダがマクラーレンにエンジンを供給して連戦連勝という時代を迎えることになる。
事実は映画よりも奇なりである。


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