おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

グラン・ブルー - 完全版 -

2021-01-21 07:49:42 | 映画
「グラン・ブルー - 完全版 -」 1988年 フランス / イタリア


監督 リュック・ベッソン
出演 ロザンナ・アークエット
   ジャン=マルク・バール
   ジャン・レノ
   ポール・シェナー
   グリフィン・ダン
   セルジオ・カステリット

ストーリー
スキューバの道具を一切使わないで、素潜りで深海100メートル近くまで潜水する“フリー・ダイビング”。
そのフリーダイビング記録を競うジャックとエンゾの2人の青年を通して、海に対する熱い思いを映像化。
ジョアンナとジャックの愛に関するエピソードなど、カットされた未公開場面を加え、よりロマンス面が強調されているのが本作『グラン・ブルー完全版』である。
50分近く尺の伸びたこの版については、解り易くなっているとか、無駄なシーンが増えているとか、細部に関してはいくらでも言及できるが、バージョンの差異を説く事にあまり意味はない。


寸評
ジャックとエンゾはギリシャにあるキクラーデス諸島の幼馴染で、子供の頃から潜ることが得意だった2人だが、心優しいジャックはガキ大将のエンゾと競争をしようとはしない。
子供の頃がモノトーンで描かれ二人の性格付けがなされる。
父の仕事の手伝いをしていたジャックと海岸で釣りをしていたエンゾはジャックの父が溺死する様子を目撃するという重大事故に遭遇するが、僕はもっと重要な出来事だったと思ったのは、両親が離婚した理由が父の潜水漁にあり、母はギリシャでの生活を捨てアメリカに戻ったことを聞かされる場面だ。
なぜなら、その事がジャックとジョアンナの関係に対する伏線となっていたからだ。
12年後、世界でトップクラスのダイバーとなったエンゾが、真の世界一のダイバーとなるためにジャックを探し出すところから映画はカラーとなるのだが、エンゾを演じたちょい悪親父のジャン・レノが面白おかしく物語を引っ張る。
エリック・セラの音楽に、ジャン・レノとリュックベンソン映画の魅力が加わった1本という感じの作品だが、果たしてこれほどの長さが必要だったのか。
アンデスの話やニューヨークの話とか、潜水大会で漫画的な日本チームが出てきて繰り広げるバカバカしい話とか、無駄なシーンが多く作品をぼかしてしまっているのが残念だ。

「グラン・ブルー」は輝く海の景色や美しい海中の映像に加え、物語的には自分のスタイルを貫ける世界の中でしか生きることのできないジャックと、その姿に惹かれつつもやがて家や自動車や子供やペットといった普通の生活の中で生きたいと思うジョアンナの出会いと別れを描いていたと思う。
ラストシーンはジャックとジョアンナの別れを描いていたように感じた。
そこではエンゾが話した人魚のことがよみがえってくる。
ジャックがジョアンナの制止を振り切り暗く冷たい海に独り潜ると、そこに一匹のイルカが現れる。
ジャックを照らす光の中で、彼がいくら手を伸ばそうとしてもそのイルカは寄ってはこない。
その行動はまるで人魚に恋する男性の愛情を確かめるかのようである。
それに呼応するかのように直前でジョアンナは「私の愛を確かめてきて」と言って送り出している。
やがてジャックはジョアンナの待つボートとつながったロープから手を離しイルカとともに泳ぎだす。
ジャックは結局は"自分の生きるべき場所"に帰っていったのだろう。
ジャックにとってはそれは男の身勝手でも、ジョアンナへの裏切りでもなく、そこが"自分のいるべき場所だと悟ったに違いないのだ。

ジャックは度々イルカと戯れる。
人との付き合いが苦手な自然児である。
あるがままの生き方をするジャックをジョアンナは愛したのだろう。
ジョアンナの一途な愛が切ない。
ジャックとジョアンナは海と陸、自然と文明、田舎と都会という関係を突き破ることが出来なかったのではないか。
もしかするとジャックはエンゾの後を追ったのかもしれない。
そうだとすれば、シングルマザーとなったジョアンナは果たして新しい彼氏を見つけることは可能だったのだろうかとあらぬ想像をしてしまう。


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