おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

宮本武蔵 巌流島の決斗

2023-04-15 06:22:28 | 映画
「宮本武蔵 巌流島の決斗」 1965年 日本


監督 内田吐夢
出演 中村錦之助 入江若葉 木村功 浪花千栄子 丘さとみ
   金子吉延 河原崎長一郎 千田是也 中村是好 日高澄子
   尾形伸之介 田村高廣 中村錦司 里見浩太郎 内田朝雄
   三島ゆり子 清水元 中村時之介 北竜二 三国連太郎
   高倉健 片岡千恵蔵

ストーリー
一乗寺下り松に吉岡一門を葬った武蔵(中村錦之助)は、宿敵・佐々木小次郎(高倉健)との再会を約して、再び修業の旅に出た。
その冬、武蔵は生活力のたくましい童子・伊織(金子吉延)を知りその厳しい生活態度にうたれて、伊織と共に鍬を持ち荒地に挑んだ。
農作期も終り伊織を連れて江戸へ出た武蔵は、計らずも立ち寄った研師厨子野耕介(中村是好)の家で小次郎の愛刀・物干竿を見た。
小次郎は、細川藩家老岩間角兵衛(内田朝雄)に見出され、細川家の指南役にかかえられていたのだ。
武蔵は、彼の腕前にホレこんだ博喰・熊五郎(尾形伸之介)の世話でのどかな日を送っていたが、ある日居所をつきとめたお杉(浪花千栄子)が町奴・半瓦弥次兵衛(中村時之介)らを連れて乗りこんできた。
武蔵を迎えにきた将軍家指南役・北条安房守(中村錦司)の駕篭で武蔵は難を逃れ安房守の屋敷に入った。
武蔵はそこで柳生但馬守(田村高廣)と沢庵(三国連太郎)に会った。
沢庵は柳生の庄で石舟斎の看病をするお通(入江若葉)を呼び、将軍家指南として身をたてることを勧めた。
だが、閣老会議は武蔵が年端もゆかぬ吉岡源三郎を斬ったことを理由に、これを却下した。
数日後、武蔵は小次郎から決闘の場所を豊前小倉とする果し状を受け取った。
武蔵は伊織と長岡佐渡(片岡千恵蔵)宛の別れの書状を沢庵に渡すと京を後にした。
一方、お通も沢庵から武蔵の消息を聞き、武蔵の後を追って小倉に向ったが、途中で又八(木村功)、朱実(丘さとみ)、さらにお杉にも再会した。
今ではお杉も、お通への誤解を解き自らの非を詑びるようになっていた。
その頃武蔵は巌流島で小次郎と相対していた・・・。

寸評
いよいよクライマックスとなる宿敵佐々木小次郎との巌流島での決斗が描かれる。
前作で父親の青木丹左衛門を追って行った城太郎は登場しない。
代わって両親を亡くした伊織少年が登場する。
彼は武蔵と共に暮らした後、細川藩家老の長岡佐渡に預けられ武士のしつけをされることになる。
史実ではこの伊織は宮本武蔵の養子として知られている。
島原の乱には侍大将と惣軍奉行を兼ねる武功をたて、一門を差し置いて小倉藩の筆頭家老になったと言われていて、小倉郊外赤坂・手向山の山頂に巨石をもって武蔵の彰徳碑を建てているらしい。
その漢文による小倉碑文の一千百余文字によって、吉岡一門との決斗や船島での決斗も史実とされているとの事である。
作中で伊織は長岡佐渡に伴われ、 養父武蔵の巌流島での決斗を見聞している。

武蔵はまだまだ修行中で未熟な面を見せたりするが、相手の佐々木小次郎は人格的に劣っていると言う描き方がいままでになく顕著である。
刀研師の耕介が預けた刀をまだ研いでいなかったことに立腹したり、岩間角兵衛の姪であるお光(三島ゆり子)との関係などを見ると悪者と描いており、細川忠利(里見浩太郎)の御膳試合では長岡佐渡に「こざかしい奴」とさえ言われている。
完全に武蔵に対うる悪役的な描き方で、後の高倉健なら絶対にやらなかった役回りである。

最終章なので今までの未解決となっていた問題が次々解決される。
憎しみを募らせていたお杉婆だが、又八と朱実との間に出来た孫を見て改心する。
朱実は又八に小次郎から救われていたので、その後夫婦になっていたのだろう。
又八、朱実と出会い、まだ赤ん坊の孫を見ても許せんと慟哭するが、結局この孫によって武蔵とお通への憎しみが消えることになる。
一瞬の出来事で全てを洗い流してしまう描き方は物足りなくも思われるが、老人にとって孫の力は計り知れないものがあることは私自身も経験していることで、お杉婆の気持ちはよくわかるのだ。
巌流島へ武蔵を見送る場面では、それまでとは違った柔和な顔になっていて浪花千栄子の上手さを感じた。
朱実の養母であるお甲は大金を持って祗園藤次と蓄電したはずだが、その後全く登場していない。
又八とも関係があった女だが、物語の進行上で関係がなくなり消え去ったのだろう。
お通との恋模様は前作で一応の形を見せていたが、本作でははっきりと妻として見送ってくれと言っているし、お杉婆も二人の仲を認めたようだ。

このシリーズは人間武蔵を描きながら、武芸者として成長していく過程を描いているのだが、人間の内面に切り込んでいくような鋭さがないものの、大衆娯楽作品として随分格調高く撮られている。
中村錦之助の代表作に数えられてもいい作品になっていたし、東宝版の三船敏郎、松竹版の高橋英樹の武蔵と比較してもその存在感は第一だろう。
後年、同じく内田吐夢監督で「宮本武蔵 真剣勝負」が撮られた。


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