おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

アパートの鍵貸します

2019-01-09 10:52:51 | 映画
「アパートの鍵貸します」 1960年 アメリカ


監督 ビリー・ワイルダー
出演 ジャック・レモン シャーリー・マクレーン
   フレッド・マクマレイ レイ・ウォルストン
   デヴィッド・ルイス ジャック・クラスチェン
   ホープ・ホリデイ ジョーン・ショウリー

ストーリー
ニューヨークのさる大保険会社の一平社員バクスター、通称バド(ジャック・レモン)は出世に燃えているが、その方法は4人の課長にアパートの鍵を貸すだけで充分だった。
4人はアパートをせっせと浮気に愛用し、バドの昇給にせっせと尽力した。
そこに人事部長のシェルドレイク氏(フレッド・マクマレイ)も加わった。
部長のよろめきの御相手は会社のエレベーター嬢フラン(シャーリー・マクレーン)。
バドはこの丸ぽちゃで適当にグラマーのフランに片想いしていたので、少なからずショックだった。
酔ったバドが年増の金髪美人を連れてアパートに帰ると、そこでフランが自殺をはかっていた。
離婚をした暁にはきっと君と…、と言うばかりで実行しないシェルドレイク氏の不実に絶望し、バド愛用の睡眠薬を全部飲んでしまったのだ。
翌朝、一大決心をしたバドは、部長にフランとの結婚を打ち明けようとすると、部長は離婚が成立し、フランと結婚する旨をバドに宣告する。
人の気も知らない部長は、またもアパートの鍵の借用を申しこんできたので、カンニン袋の緒を切ったバドは辞表を叩きつけて会社を飛び出す。
その夜、フランは部長とレストランへ行くが、そこで今夜はアパートは使えないと聞いたフランはハッと気がつく。
バドの優しい想いと、自分を本当に愛しているのは誰か、ということを。
部長を置き去りに、フランはバドのアパートの階段をかけ上がった。

寸評
喜劇ではあるがシリアスな側面もかかえた作品だ。
好きな女性がいるが素直に気持ちを伝えられない。
彼女に対しては他人にはわからない心配りを見せ恋い焦がれるが、それでいて何もできない男の悲哀。
彼女に通じていそうで、なかなか男の気持ちが通じない。
それでも男は精一杯の献身を見せる。
バドは仕事ができるのかどうかは分からないが、間違いなくとても人がいい善人だ。
彼は出世欲も人並み以上にあるが、他人を蹴落としてガッツガッツやるタイプではない。
上司に取り入るバドの姿が滑稽でありながら、なにか切実たるものを感じさせる。
かれは上司の浮気のためにその場所を提供することで取り入っているが、私の社会人時代でもそのような人種はいた。
私には到底出来そうもない献身的な忠誠を見せる先輩と幾人か出会った。
言われたことには逆らわず、言われたことを忠実にこなし、休日返上してお付き合いをする。
そうした人は能力もあったのだろうが、偶然にもバド同様に現実社会で出世していった。
バドも全く同じように階段を駆け上がる。
バドの忠誠は自分のアパートを提供することで、しかも相手が複数とあってスケジュールの調整やらも大変だ。
そのやり取りがあっけらかんとしていて面白い。
登場人物もすべてどこか憎めない。
隣のお医者さんも大宅さんもいい人のように感じる。
バドの部屋を利用している上司連中もどこか人が好さそうで、根っからのずるがしこい人間の様には見えないので、起きていることが微笑ましくさえ思えてきてしまう。

前半は部屋を貸していることで起きるドタバタを描いているが、人事部長のシェルドレイク氏が登場してから物語が大きく動き出す。
元愛人の秘書も登場してストーリーを急転回させていく。
その展開を支えているのがエレベーターガールのシャーリー・マクレーンだ。
やがて大御所となっていくシャーリー・マクレーンだが、この頃は21歳設定がおかしくない若々しい彼女で、かわいらしさが前面に出ている。
オードリー・ヘプバーンなんかとは違う庶民的なかわいらしさだ。
話の設定自体もユニークで面白いけれど、彼女の存在なくしてこの映画は成り立たなかったのではないかと感じさせる。
重厚な作品ではないが、ビリー・ワイルダーらしい軽快なテンポとユーモアを兼ね備えた楽しい作品だ。
お決まりのラストではあるが、それでもメデタシ、メデタシの結末にホッとする。
リラックスしてみることが出来て、見終った時に爽快感の残る作品だ。
サラリーマンの悲哀を感じさせもするが、最後には辞表を叩きつけるという現実ではなかなか出来ないことをやるし、最後には愛する女性が駆けつけてくれると言う夢物語を見せてくれたからだと思う。
ユーモア映画の傑作の一遍に値する。


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