「ムーンライト」
監督 バリー・ジェンキンズ
出演 トレヴァンテ・ローズ
アンドレ・ホランド
ジャネール・モネイ
アシュトン・サンダーズ
ジャハール・ジェローム
アレックス・ヒバート
ストーリー
内気な少年シャロンは、母ポーラと2人暮らしだったが、ポーラは麻薬中毒でほとんど育児放棄状態。
シャロンは、学校で “リトル”というあだ名でいじめられている内気な少年だ。
ある日、いつものようにいじめっ子たちに追われていたところを、麻薬ディーラーのフアンに助けられる。
何も話さないシャロンを、恋人のテレサの元に連れ帰るフアン。
その後も何かとシャロンを気にかけるようになり、やがてシャロンも心を開いていく。
ある日、海で“自分の道は自分で決めろよ。周りに決めさせるな”と生き方を教えてくれたフアンを、父親のように感じ始める。
家に帰っても行き場のないシャロンにとって、フアンと男友達のケヴィンだけが心を許せる唯一の“友達”だった。
やがて高校に進学したシャロンだったが、相変わらず学校でいじめられていた。
母親のポーラもまた麻薬に溺れ、酩酊状態の日が続く生活を続けている。
自宅に居場所を失くしたシャロンは、フアンとテレサの家へ向かう。
“うちのルールは愛と自信を持つこと”と、今までと変わらずにシャロンを迎えるテレサだった。
ある日、同級生に罵られ、大きなショックを受けたシャロンが夜の浜辺に向かったところ、ケヴィンが現れる。
シャロンは、密かにケヴィンに惹かれていた。
月明かりが輝く夜、2人は初めてお互いの心に触れることに……。
しかし翌日、学校である事件が起きてしまう。
その事件をきっかけに、シャロンは大きく変わっていた。
高校の時と違って体を鍛え上げた彼は、弱い自分から脱却して心身に鎧を纏っていた。
ある夜、突然ケヴィンから連絡が入る。
料理人としてダイナーで働いていたケヴィンは、シャロンに似た客がかけたある曲を耳にしてシャロンを思い出し、連絡してきたという。
あの頃のすべてを忘れようとしていたシャロンは、突然の電話に動揺を隠せない。
翌日、シャロンは複雑な想いを胸に、ケヴィンと再会するが……。
寸評
3部構成で、ながらまったく違和感のなシャロンを演じる役者もパートごとに違うのだが、それぞれのセリフや行動がうまくつながり違和感がない。
場所はマイアミだが、僕がイメージする太陽の光が降り注ぐマイアミではなく、登場人物も黒人ばかりである。
冒頭に登場するのは、麻薬ディーラーのフアンで、いじめっ子に追いかけられているシャロンに救いの手を差し伸べる。
彼がなぜシャロンを可愛がったのかは不明だが、フアンとシャロンの疑似親子的な交流だけで一本の映画が撮れそうな導入部だ。
しかしファンの庇護が少年シャロンの人生を上向かせることはない。
シャロンの置かれた状況はそんなに甘くはないのだ。
黒人差別もあるのか父親の居ないシャロンの家庭は貧困だ。
母親は麻薬に浸り、男に貢いでもらっているのか売春をやっているのか男出入りが激しい。
学校ではイジメにあっており、その原因がゲイにあるようだ。
母親はシャロンにゲイの気があることを感じているようだが、半ば育児放棄状態である。
人種差別、貧困、麻薬が取り巻く環境の中で、自身もマイノリティのゲイだ。
これでは簡単に救われないと理解できるのだが、僕を含む多くの日本人にとっては想像できない環境下で生きている。
このパートではカメラをぶんぶん回したり、極端なアップにしたり、わざとピントをぼかすなどして、セリフを抑えながら登場人物の心理を繊細に切り取っていて、カメラワークが印象に残る第一部となっている。
第2部は衝撃的である。
愛するケヴィンを一途に想い続けるピュアなラブストーリーを見せたかと思うと、激しすぎる愛情表現を見せる。
母親のポーラはケビンが「人生で最も必要な時に必要なものを得られなかった」と語っているのだが、その必要なものとは愛に他ならない。
シャロンはここで愛する人のために自分を犠牲にして愛する人を救う。
彼は罪を償うことになるが、それは愛する人を支配者から解放するために犯した罪だったのだ。
高校生活最後の行動は決して自分の怒りの爆発というだけのものではなかったのだと思う。
そこで見せた凶暴性を秘めて第3部では成人したシャロンが登場する。
時間をすっ飛ばしていく構成なので、その間の生活と変化は想像するしかない。
まともな人生を歩めた可能性を想像することは困難で、実際にシャロンは金を稼げる仕事として麻薬の密売をしている。
自分や母親を破滅させた麻薬を売るしか生きるすべがないという状況が痛々しい。
この映画のラストシーンはあっけないぐらいに短いものの余韻を残すシーンとなっている。
シャロンは肩ひじを張って成り上がってきたのだろうが、ようやく自分に素直になれた瞬間だったように思う。
しかし、人種差別、貧困、ドラッグ、同性愛のどれもが僕の周りでは見かけないものなので、単純に感情移入することが出来なかった作品でもある。
監督 バリー・ジェンキンズ
出演 トレヴァンテ・ローズ
アンドレ・ホランド
ジャネール・モネイ
アシュトン・サンダーズ
ジャハール・ジェローム
アレックス・ヒバート
ストーリー
内気な少年シャロンは、母ポーラと2人暮らしだったが、ポーラは麻薬中毒でほとんど育児放棄状態。
シャロンは、学校で “リトル”というあだ名でいじめられている内気な少年だ。
ある日、いつものようにいじめっ子たちに追われていたところを、麻薬ディーラーのフアンに助けられる。
何も話さないシャロンを、恋人のテレサの元に連れ帰るフアン。
その後も何かとシャロンを気にかけるようになり、やがてシャロンも心を開いていく。
ある日、海で“自分の道は自分で決めろよ。周りに決めさせるな”と生き方を教えてくれたフアンを、父親のように感じ始める。
家に帰っても行き場のないシャロンにとって、フアンと男友達のケヴィンだけが心を許せる唯一の“友達”だった。
やがて高校に進学したシャロンだったが、相変わらず学校でいじめられていた。
母親のポーラもまた麻薬に溺れ、酩酊状態の日が続く生活を続けている。
自宅に居場所を失くしたシャロンは、フアンとテレサの家へ向かう。
“うちのルールは愛と自信を持つこと”と、今までと変わらずにシャロンを迎えるテレサだった。
ある日、同級生に罵られ、大きなショックを受けたシャロンが夜の浜辺に向かったところ、ケヴィンが現れる。
シャロンは、密かにケヴィンに惹かれていた。
月明かりが輝く夜、2人は初めてお互いの心に触れることに……。
しかし翌日、学校である事件が起きてしまう。
その事件をきっかけに、シャロンは大きく変わっていた。
高校の時と違って体を鍛え上げた彼は、弱い自分から脱却して心身に鎧を纏っていた。
ある夜、突然ケヴィンから連絡が入る。
料理人としてダイナーで働いていたケヴィンは、シャロンに似た客がかけたある曲を耳にしてシャロンを思い出し、連絡してきたという。
あの頃のすべてを忘れようとしていたシャロンは、突然の電話に動揺を隠せない。
翌日、シャロンは複雑な想いを胸に、ケヴィンと再会するが……。
寸評
3部構成で、ながらまったく違和感のなシャロンを演じる役者もパートごとに違うのだが、それぞれのセリフや行動がうまくつながり違和感がない。
場所はマイアミだが、僕がイメージする太陽の光が降り注ぐマイアミではなく、登場人物も黒人ばかりである。
冒頭に登場するのは、麻薬ディーラーのフアンで、いじめっ子に追いかけられているシャロンに救いの手を差し伸べる。
彼がなぜシャロンを可愛がったのかは不明だが、フアンとシャロンの疑似親子的な交流だけで一本の映画が撮れそうな導入部だ。
しかしファンの庇護が少年シャロンの人生を上向かせることはない。
シャロンの置かれた状況はそんなに甘くはないのだ。
黒人差別もあるのか父親の居ないシャロンの家庭は貧困だ。
母親は麻薬に浸り、男に貢いでもらっているのか売春をやっているのか男出入りが激しい。
学校ではイジメにあっており、その原因がゲイにあるようだ。
母親はシャロンにゲイの気があることを感じているようだが、半ば育児放棄状態である。
人種差別、貧困、麻薬が取り巻く環境の中で、自身もマイノリティのゲイだ。
これでは簡単に救われないと理解できるのだが、僕を含む多くの日本人にとっては想像できない環境下で生きている。
このパートではカメラをぶんぶん回したり、極端なアップにしたり、わざとピントをぼかすなどして、セリフを抑えながら登場人物の心理を繊細に切り取っていて、カメラワークが印象に残る第一部となっている。
第2部は衝撃的である。
愛するケヴィンを一途に想い続けるピュアなラブストーリーを見せたかと思うと、激しすぎる愛情表現を見せる。
母親のポーラはケビンが「人生で最も必要な時に必要なものを得られなかった」と語っているのだが、その必要なものとは愛に他ならない。
シャロンはここで愛する人のために自分を犠牲にして愛する人を救う。
彼は罪を償うことになるが、それは愛する人を支配者から解放するために犯した罪だったのだ。
高校生活最後の行動は決して自分の怒りの爆発というだけのものではなかったのだと思う。
そこで見せた凶暴性を秘めて第3部では成人したシャロンが登場する。
時間をすっ飛ばしていく構成なので、その間の生活と変化は想像するしかない。
まともな人生を歩めた可能性を想像することは困難で、実際にシャロンは金を稼げる仕事として麻薬の密売をしている。
自分や母親を破滅させた麻薬を売るしか生きるすべがないという状況が痛々しい。
この映画のラストシーンはあっけないぐらいに短いものの余韻を残すシーンとなっている。
シャロンは肩ひじを張って成り上がってきたのだろうが、ようやく自分に素直になれた瞬間だったように思う。
しかし、人種差別、貧困、ドラッグ、同性愛のどれもが僕の周りでは見かけないものなので、単純に感情移入することが出来なかった作品でもある。