ここのところ、ずっと空を飛んでいた。
飛行機乗りの気持ちになって、
南の空を、零式戦闘機と。
はじめに断っておくが、私はここで戦争に関する論争をする気はさらさらない。
戦争を美化する気もまったくない。
ただ、この本について書きたかっただけだ。
だから、主旨を理解されていないコメントがあれば削除させていただく。
こういったことを書くと、
『お前は戦争賛美者か』とか、すぐに言い出す人がいそうで怖いけど、
そうではなくって。
ある、飛行機乗りの空戦記録を読みながら、
ただひたすら、一緒に空を飛んでいたのだ。
一度飛ぶたびに死を覚悟した若者たちの。
けれど悲壮感はない、不思議な透明さとともに、
中国大陸から台南へ。
そこからさらに、どんどん南下して.....
ニューギニア、ラバウル、ガダルカナル。
そこで重傷を負い、内地へ帰り、
そして.....
再び飛び立ち、硫黄島まで。
『紅の豚』でポルコが言う、「飛ばない豚はただの豚だ」の本当の意味が、
この本を読んで、少しだけわかった気がする。
ちなみにポルコが見せる飛行テクニック『捻り込み』は、
この本の著者、坂井さんの得意技でもあった。
筆者が体験した空戦の数々の、克明な記録を読みながら。
そこにただ、何か純粋に引き込まれずにはいられなかった。
もちろん、戦争は悪で、殺し合いには違いないのだが。
そこには、飛行機乗りであった彼らの、
その澄んだ思いというのか.....
それが感じられて。
現代に生きる我々に、
ただ国のためを思って、命をかけて戦った彼らを、
どうこう言うことなど出来ない。
私の表現力では、とてもこの本についてうまく書くことが出来ないが。
興味のある方は、こちらの方が書かれたものを読んで下さればと思う。
この方が語る、「ロジェ・カイヨワのいうイリンクス」が、
戦争の記録に対しての言葉に相応しくないのがわかっていても...
この本を表すのに、やはりふさわしいような気がする。
これは、読んだ人にしかわからない。
黒いジャングルの上を飛び、
美しい空と海に散ってゆく仲間を見ながら.....
それでも悲しむ間もなく、
明日も出撃しなければならない彼らは。
けれども、悲壮感は背負っておらず、
地上にあれば陽気に笑い、
空戦場にあれば、敵に敵愾心を燃やしながらも、
同じ飛行機乗りとして敬意をはらい.....
運良く地上に戻れれば、束の間の休息をとり、
また、出撃してゆく。
本のタイトルである、『サムライ』とは、
著者である、『撃墜王』坂井氏のことではなく、
味方、敵も含めた、
大空に散っていった勇敢な飛行機乗りたちのことだそうだ。
「空中での戦闘では、人はぶじに生還するか、
そうでなければ還ってこないかのいずれかなのだ」
この本を読むことは、還ってこなかった方々を知ることでもあると思う。
それこそ、敵も味方もなく。
勝手に戦争を始め、
大した計画も立てずに人を捨て駒のように動かした、
お偉い人たちとはまったく別の。
大空を、
『愛機』と、戦友と共に戦い抜いた、
男たちの記録がそこにはある。
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