ジレンマ。相反する二つの事の板ばさみになって、どちらとも決めかねる状態。ロシアのウクライナ侵攻が陰惨を極めつつある今、世界各国の指導者はまさしくジレンマ状態に陥っている。
たとえば中国。習近平国家主席は、ロシアを支持する側につくか、非難する側につくか、きわどい選択の瀬戸際に立たされている。ロシアを支持する側につけば、全世界を敵にまわし、国際社会から爪弾きにされる恐れがある。国際社会という大きな市場を失うことになるから、国家経済がこうむるダメージも大きい。仇敵アメリカも黙ってはいないだろう。
だが、こうしたデメリットを恐れて、ロシアを非難する側につけば、どうか。ロシアのウクライナ侵攻の、その不当性を認めることになり、そうなれば、自らが近いうちに行おうとしている「台湾攻略」の、その不当性を自ら認めることにもなりかねない。だからロシアのウクライナ侵攻を成功に導く意味でも、中国はロシアを支持しないわけにはいかないのだが・・・。
けさ面白い新聞記事を読んだ。中国の企業でも、ロシアに課せられた経済制裁を気にして、ロシアでの事業から撤退する動きが見られるが、その一方、ネット上では、そうした企業を「西側の犬だ」などと批判する(親ロシアの)書き込みが続出しているという。
習近平は国家指導者として、こうした国民の声をどう受けとめるのだろうか。中国政府の親ロシア政策への熱烈な賛同のエールとして受けとめるのだろうか。
その可能性もなくはないが、習近平がそうした声に引きずられることはまずないと思う。親ロシアのそうした声は、それ自体、政府が言論統制によって国民の脳裏に植えつけた洗脳教育の結果だということ、そのことを習近平はよく知っている。
彼は国民の声を、政府の国内向け宣伝放送の谺(こだま)位にしか思わないだろう。
国民の声などには構わず、この国家指導者はひたすら「国益」のことだけを考え、ジレンマの板挟み状態に向き合っているに違いない。