ヒマローグ

毎日の新聞記事からわが国の教育にまつわる思いを綴る。

響く「心の声」

2020-10-19 07:57:53 | 我が国の教育行政と学校の抱える問題

「現場の声」10月14日
 『心に響いた医師の使命感』という見出しの記事が掲載されました。ヘルスコミュニケーションを専門とする東京大医学部准教授奥原剛氏が、コロナ禍の市民の行動変容につながったメッセージについて検証した結果を報じる記事です。記事によると、『①知事②感染症の専門家③コロナ病棟で働く医師④患者⑤感染爆発地域の住民-が記者会見やSNSなどで発した』メッセージを読んでもらい、どれが行動自粛への意識を高めたか調べた結果、③が最も高くなっていたということです。
 この結果について奥原氏は、『知事や専門家のメッセージは、知識の提供と指示だ。医師の発言に、知識や指示はあまりないが、医療崩壊で治療できなくなるという危機感、何としても患者を助けたいという使命感が、市民の心に響く』と分析なさっていました。
 実際の医師のメッセージは、『ベッドも集中治療室も埋まり、患者さんを新規に受け入れられません。マスクも防護服も不足し、ほんとうに限界です。同僚が一人でも感染したら、何人もの医師と看護師が自宅待機となり、治療を続けられなくなります。それでも私たちは踏みとどまり、治療を続けます。皆さんは家にいてください。皆さんが務めを果たすことで、私たちも務めを果たせます』というものでした。
 私もこのメッセージを読み、改めて5月の緊急事態宣言下のことを思い出しました。歳のせいか涙もろくなっている私は、目が潤んできてしまいました。今読んでも、自然にありがとうという言葉が口をついて出てしまいます。
 人を動かすのは何なのか、ということについて改めて考えさせられる話です。私は多弁な教員でした。理屈屋と言われるほど、相手を言い負かす勢いで話す傾向がありました。そんな私は、授業も学級経営も下手な教員でした。実践報告書をまとめたり、研究の理論編を書いたりするのは好きでしたし得意でしたが、実際の研究授業では、「普段偉そうに言っているほどじゃないな」と言われてしまうのでした。
 学級指導で長々と「説教」しても、子供たちの言動は改まらず、なんでこいつらは言うことを聞かないんだ、と腹を立ててしまう教員でした。自分は正論をいっているのに、という気持ちだったのでしょう。今であれば、うまくいかなかった原因は分かります。言っていることが「心に響」かなかったのです。もちろん、話し方のテクニックの巧拙という側面も影響があったかもしれません。しかし、より根本的な原因は、私の言葉に、私自身の生きざまに裏打ちされた力がなかったということなのだと思います。
 教員時代の自分にこの医師のような言葉が吐けたら、と今更のように思います。大変だけど、どうしたらいいか分からないけれど、それでも自分は目の前の子供たちと向き合っていきます、そう言える教員でありたかったと思うのです。もう一度チャンスを与えられてもきっとだめだとは思うのですが。若い教員の皆さんはどうですか。

 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 甘い処分の罪 | トップ | 対立に巻き込まないで »

コメントを投稿

我が国の教育行政と学校の抱える問題」カテゴリの最新記事