ヒマローグ

毎日の新聞記事からわが国の教育にまつわる思いを綴る。

甘い処分の罪

2020-10-18 07:43:06 | 我が国の教育行政と学校の抱える問題

「甘い!」10月14日
 『道場のアイス食べた中1に体罰』という見出しの記事が掲載されました。中学校柔道部顧問の教員が、『1年生の男子生徒2人に暴行を加えて背骨を折るなどの重軽傷を負わせた』事件を報じる記事です。『2人が無断で道場の冷蔵庫にあったアイスキャンディーを食べたことに腹を立てて』暴行を加えたという背景があまりにも幼稚だということでこのような見出しになったのでしょう。
 しかし私が注目したのは別の記述です。記事によると、『容疑者は前任校でも2011年~13年に、体罰で生徒の鼻を骨折させるなどし計3回処分(減給1、訓告2)されていた』そうです。明らかに処分が甘すぎます。この甘すぎた処分が、今回の体罰の遠因になっていることは明らかです。兵庫県教委の責任は重大です。
 私は教委勤務時代に、教員の処分に関わる職務を担当していた時期があります。体罰事案の場合、悪意がなくけがの程度も軽度なもの、例えば、きちんと整列させようとして強くて手を引っ張ったら腕に赤く指の跡が残ったが翌日には消えていたというようなケースは訓告となりますが、それ以外は、正規の行政処分である戒告が普通です。そして、再犯となれば、前述のようなごく軽いケースであっても、戒告処分は必至です。それは一般の刑罰と同じ考え方であり、世間の常識に照らしても妥当な判断だと思います。
 この教員の場合、体罰の詳細は分かりませんが、2度目も訓告だったのです。訓告というともっともらしく聞こえますが、正規の行政処分ではなく、処分歴にも残りません。「良くないことだから今後気をつけなさい」と注意を受けるだけなのです。これでは、この教員が、「体罰しても大事にはならない」と考えてしまう可能性が高いのです。
 そして、3回目、おそらくこれが鼻を骨折させるという事案だと思われますが、このときでさえ、減給処分で済んでいます。2年間という短い期間に3回、しかも骨折という重症、このときの被害者とその家族が教員を恨んだと同時に、校長や教委の指導力のなさに怒りを覚えたことでしょう。そして、他の生徒や保護者も、教員や学校や教委というものに強い不信感を抱いたはずです。まさに重大事件です。それなのに、減給です。減給というのは4段階ある行政処分の中で下から2番目、当該教員にとっては、わずか数万円の減収になるという程度の処分なのです。私が教委の担当者であれば、当然停職処分を課していたでしょう。
 私は自分が教員出身であり、教員や学校に甘いところがあると自覚しています。しかしそんな私でも、きちんとした賞罰は、組織の規律を守り、外部からの信頼を得るために必要であるということは理解しているつもりです。もしかしたら、教委の担当者は、間違った「教員を守る」使命感をもっていたのかもしれませんが、教員を甘やかしてしまった結果、この教員は刑法の傷害罪で逮捕されてしまったのです。減給や停職などの行政罰ではなく、刑事罰に問われることになり、もう二度と教壇に立つことをできなくしてしまったのです。つまり、かえって教員を傷つけてしまう結果となってしまったのです。
 甘い処分は、誰にとっても良い結果を生まないのです。

 

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