「教育実習ハラスメント」9月14日
今週の『論点』は『どうするハラスメント対策』というテーマで、2人の専門家が語っていました。その一人、労働政策研究・研修機構副主任研究員内藤忍氏は、次の(改正労働施策総合推進)法改正に向けた課題をあげていらっしゃいました。『取引先や顧客など第三者からのハラスメント、フリーランスや就職活動中の学生、教育実習生に対するハラスメントも検討しなければならない』と。
教育実習生へのハラスメント対策は難しい問題です。それは、時間外の「強制」をどう考えるかによって左右されるからです。教育実習の目的は机上の空論ではなく、実際に子供と触れ合うと共に教員の実務について理解を深めることにあります。ですから、基本的には、教員の勤務時間が実習時間となります。その間は、子供と接しているか、授業を見学しているか、基本的な説明を受けているか、会議等に見学者として参加しているか、校務の一部を体験しているか、ということになります。
しかし、それだけでは、実習のメインである授業をすることはできません。ベテランの教員であっても、実際には「サービス残業」によって日々の授業準備をしているのです。ほとんど授業経験のない実習生が、定時に帰宅して帰宅後何もせずに翌日の授業準備ができるなどということはあり得ません。まして、数回の授業を経験した後、実習の終わりに、多くの教員の前で学習指導案を作成した上で授業研究を行うときには、学習指導案を作成するだけでもかなりの時間が必要になります。
私が実習をしたのは、40年以上も昔になりますが、当時の担当教官は、担当教官だけが見る数回の授業については、B5一枚程度の略案でよいと言ってくれましたが、それでも、帰宅後2~3時間かけてやっと完成させたものです。最後の授業研究に際しては、学習指導案作成に自宅で費やした時間は、10時間以上になりました。もちろん、学校でも、担当教官が「もう僕も帰るから、早く帰りなさい」と言われるまで居残ったものでした。
こうした実態は、パワハラと言われれば、立派にパワハラの要件を満たしています。帰るな!とは言われませんでしたが、課題が終わらないのですからさっさと帰るわけにはいきません。実質的には強制と言えるでしょう。当時の私は、大変だ、辛い、もう駄目だ、早く実習終わらないかなというような気分で毎日を過ごし、絶対に教員になんかなるものかと決意したものでした。過重労働でしたし、担当教官は度量の広い方でしたが、私は略案に何カ所も赤が入れられるのを見て、「初めてなんだから、できなくても当たり前じゃないか」と「厳しすぎる指導」を恨んでいました。今思えばそれでも随分「大甘」な指導だったのですが。
今、教員の指導力向上が大きな課題となっています。学生の意識も変わっています。教育実習における適切な指導助言とハラスメントの問題は、早急に整理が必要です。