ヒマローグ

毎日の新聞記事からわが国の教育にまつわる思いを綴る。

強制せずに成り立つか

2022-06-22 07:40:56 | 我が国の教育行政と学校の抱える問題

「これで何回目?」6月16日
 『学校と分離 混乱必至』という見出しの記事が掲載されました。最近部活をテーマにした内容が多くて恐縮ですが、今回も部活についてです。元埼玉県スポーツ局長久保正美氏へのインタビュー記事です。
 久保氏の見解の中から、再度確認しておきたい点をいくつか取り上げたいと思います。まず、『文科省は「休日から段階的に移行」と掲げているが、部活動を平日と休日で分かることは難しい』という指摘についてです。
  全くその通りです。ただ、久保氏は、だから地域移行は慎重に、という立場ですが、私は違います。土日や祝日、長期休業日などの部活を先行移行するのではなく、一気に全ての部活を地域移行すべきだと考えています。中途半端な移行で混乱を生み、改革が立ち往生することは避けなければなりません。
 現実的には、いきなり全ての部活を平日にも地域移行するのは難しいかもしれません。それならば一部の部活だけであっても、完全に地域移行を実現し、地域移行の良さ、具体的には、指導の一貫性の確保、専門性の高い指導者による指導の実現、生徒の競技力の向上などの成果を示して、地域移行への賛同者を増やすという手法を採用すべきだと考えます。
 次に、部活を学校でという前提でおっしゃっている『指導ができない教員の場合、技術指導を外部指導者に任せる形にすればいい』という考えについてです。過去にも指摘したことですが、これでは教員の負担軽減にはなりません。たとえ技術指導をしなくても、さまざまな準備や対応のために、教員はその場にいなければならないケースが多いのです。そこで多くの時間を費やしてしまうのです。それなのに「指導はしていないのだから先生は楽になった」などと思われてしまうとすれば、それまで一応は感謝をされていたときに比べ、心理的なストレスは増してしまいます。
 最後に、『顧問は強制されるべきではない』という意見についてです。支離滅裂だと言わざるを得ません。強制しないということは、理論上はある年度、急にそれまで存在した部活がなくなるという事態を受け入れるということです。教員の異動で、あるいは教員の家庭の事情、例えば子供が生まれたとか親の介護が必要になったとか、または校務分掌の関係などで、顧問を引き受けられなくなったという申し出があったとき、それでもやってくださいとはいえなくなるということなのですから。
 今、介護や育児の例を挙げましたが、それはそうした理由を挙げる教員が多いと予想されるからです。本来であれば、強制しないということは、単に部活の指導は嫌だということで顧問を断ってもよいということです。そんな不安定な状態で部活を学校に残すことが生徒の利益になるのでしょうか。大いに疑問です。
 もし、強制はしないと言いながら、我が国特有の周囲の同調圧力に期待して、実質的には強制するということに期待しているのであれば、それは教育現場に相応しくない「不正義」だと言わざるを得ません。
 久保氏の言うとおり、制度改定の過程で混乱は避けられないでしょう。しかし、どのような改革も混乱をゼロにすることはできません。混乱を改革否定の理由にするならば、いつまで経っても改革は実現しません。

 

コメント (1)
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