「望ましい変化?」6月7日
『SNSトラブル5万件超す 消費者白書21年最多 2割が20代』という見出しの記事が掲載されました。『ネット交流サービスをきっかけとした相談が2021年、全国の消費者センターに5万406件寄せられたことが7日、政府が閣議決定した22年版の消費者白書で分かった』ことに関する記事です。
その中に、『「チャンスと感じたら逃がしたくない」と考える人が10代後半で74.6%、20代で71.3%(略)業者などに利用され、トラブルにつながっているのではないか』という記述がありました。とても気になりました。
うまい話には毒がある、私はこういう戒めをよく耳にして育ちました。私だけが変わっているというのではなく、当時はそうした考え方が一般的だったように思います。そのせいかどうかは分かりませんが、私自身、他に先駆けてうまい話を生かして得をした、大儲けをしたという経験はありません。しかし、今でも、あのうまい話にうまく乗っかっていたら~と後悔する気持ちはありません。むしろ、危ない橋を渡らず、その結果転落して怪我をすることを経験せずに済んだからこそ、今日までそれなりに安定し、幸せな生活を送ることができたのだと思っています。
そんな私は、「チャンスと感じたら逃がしたくない」という考え方が若い人の間で広がっているということについて、違和感を覚えてしまうのです。そして、これは望ましい変化なのだろうかと考え込んでしまうのです。「チャンスと感じたら逃がしたくない」は、うまい話には毒があるとは正反対の考え方ですから。
今、政府は貯蓄から投資へという旗を振っています。また、若者に対して、大きな組織の属して安定を求めるのではなく、積極的に起業にチャレンジすることを推奨しています。こうした動きと、「チャンスと感じたら逃がしたくない」という感性とはとても相性が良いように思います。つまり、若者の意識の変化は、社会の要請に沿ったものだということです。
学校もそうなのでしょうか。学校でも、子供たちに「チャンスと感じたら、逃がしてはいけない」という価値観を植え付けていくべきなのでしょうか。我が国では、善悪はともかく、子供の教育における学校教育が占める比重はとても大きいのが現状です。つまり、子供の価値観、考え方に与える影響は学校抜きには考えられないのです。
まして、10代後半といえば、より学校教育での影響が直に反映していると考えるべきです。半数の若者が大学に進学することを考えると、20代も学校での影響を色濃く残している世代だと言えるでしょう。そう考えると、既に学校でも「チャンスと感じたら逃がしたくない」は望ましい価値観として指導がなされていると考えるべきなのでしょう。
古い言い方ですが、人生訓として、私はやはり「うまい話には毒がある」のほうがしっくりときます。先人の人生の知恵という気がしてしまうのです。もちろん、「チャンスに後ろ髪はない」という言い方があるように、ぐずぐずしてチャンスを逃してしまうのも戒められなければならないのですが。
先生がチャンスは逃すなというから~、などと教え子から言われるのは避けたいというのは、教員の保身なのでしょうか。