わくわく活動日記

山本ゆきこ~子どもこそ未来

「奈々子に」吉野弘ー自分を愛する心を忘れずに

2014-01-25 01:05:12 | 教育
「祝婚歌」など分かりやすい言葉を使って人間の温かみを描いた叙情詩で知られる吉野弘(よしの・ひろし)さんが15日逝去されました。87歳。
小学校の国語の教科書にも掲載され、子どもたちとともに読んだものでした。
私は、中でも、「奈々子に」が好きで、年度末に作る子どもたちの文集の巻末に転載していました。
「自分を愛する心」を失わないでほしい。自己肯定感が低くなりがちな子どもたちに「自分を大切に」のメッセージを送ったつもりです。

つい先日、市役所の控室にいると、40歳を超えた教え子が突然訪ねてきてくれました。自営業をしていて市役所に用事があり来たところ、私のランプがついていたので、のぞいてみたというのです。
彼が小学校5,6年生の頃担任したので、実に30年ぶりです。
本当にうれしかったです。控室でともに食事をしながら昔話に花を咲かせました。
彼はすっかり落ち着いた2児のパパになっていました。
「ああ、教員ってやっぱりいいなあ」と思ってしまいました。

 奈々子に     <吉野弘>

赤い林檎の頬をして
眠っている奈々子。

お前のお母さんの頬の赤さは
そくっり
奈々子の頬にいってしまって
ひところのお母さんの
つややかな頬は少し青ざめた
お父さんにも ちょっと
酸っぱい思いがふえた。

唐突だが
奈々子
お父さんは お前に
多くを期待しないだろう。
ひとが
ほかからの期待に応えようとして
どんなに
自分を駄目にしてしまうか
お父さんは はっきり
知ってしまったから。



お父さんが
お前にあげたいものは
健康と
自分を愛する心だ。


ひとが
ひとでなくなるのは
自分を愛することをやめるときだ。


自分を愛することをやめるとき
ひとは
他人を愛することをやめ
世界を見失ってしまう。


自分があるとき
他人があり
世界がある


お父さんにも
お母さんにも
酸っぱい苦労がふえた


苦労は
今は
お前にあげられない。


お前にあげたいものは。
香りのよい健康と
かちとるにむづかしく
はぐくむにむづかしい
自分を愛する心だ。

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