今日のことあれこれと・・・

記念日や行事・歴史・人物など気の向くままに書いているだけですので、内容についての批難、中傷だけはご容赦ください。

福の日

2007-02-09 | 記念日
今日(2月9日)は「福の日」「ふ(2)く(9)」の語呂合せ。
国語辞典で「ふく 【福】」を調べると、”さいわい。しあわせ。幸運。裕福な・こと(さま)。逆の言葉が、【禍(わざわ)】とある。
昔からよく聞くことわざに「笑う門には福来たる」というのがある。明るい笑い声が漏れている家庭は、健康に恵まれ、みんなが生き生きと暮らしていて、幸せがやってくると、昔の人は、経験的に笑いの大切さを知っていたのだろう。笑い(^0^)は幸せに生きてゆくための不変の原則ともいえる。しかし、その笑いにもいろいろ種類があり、含み笑い、思い出し笑い、泣き笑い、微笑などいかにも日本的で控えめな笑いの他、哄笑、爆笑、大笑など陽気な笑いがある一方、憫笑、冷笑、嘲笑など人間の冷たい一面を表す笑いもある。同じ笑うなら、呵々大笑(かかたいしょう)して陽気に行きたいところだが、余り下品な笑いはいただけないよね。
また、宋書(劉敬宣伝)には「福過ぎて禍い生ず」と言う言葉があり、これは、”身に過ぎた幸福はかえって禍いのもとになる。分を知って言動をつつしむべきである。”ということなのだが、我々戦中生まれで、日々の食べるものに苦労してきたものにとっては、食べるものに困らない今の時代に生きている人は、本当に幸せだと思うのだが、逆に、あれはダメこれはダメだと贅沢な事ばかり言っている人が多くいる。これは何も食べ物だけではなく、あらゆる面に見られることで、結局、余りにも満たされた社会の中にいて、必要以上に十分に満たされないと不満ばかり感じて、自分は不幸だと思ったりするのだろう。ちょっとしたことで幸せを感じられる人と、何の不自由もないはずなのに、いつも満たされない気持ちでいる人達と、結局は、どちらが幸せなんだろうね~。こんな話は、これまでとして、福々しい相といえば何を思い出しますか?七福人などは、そうだろうね~。それに、よく、店先に飾っている「福助」や「おたふく」なんかもいい相しているよね~。福助の事は、前に一度「<足袋の日」で 触れたので、 興味のある人はそこで見てください。(→「足袋の日
「おたふく」は、昔から福をよをよぶ好ましい顔立をした女性の代表的なもので漢字では「お多福」と書くが、今日この頃では、女性にとっては余り好ましくない女性蔑視的な使われ方をしている。 お多福は、おかめとも言うが、丸顔で鼻が低くおでこで、両頬が高い醜女であるが、愛敬のある顔だちをしている。その頬の張り出した形が瓶(かめ)に似ているからだそうだが、本来古代においては太った福々しい体躯の不美人は災厄の魔よけになると信じられ、ある種の「美人」を意味したとされている。おかめの滑稽な面の起源は日本神話の女性アメノウズメといわれているが、おかめの名は室町時代の巫女の名前(お亀)からとも言われてる。その顔を面をつくろり福が多いようにとお多福と名づけて弘めたという説がある。
この「お多福」は、白隠禅師(慧鶴)の『仮名法語』(かなほうご)の絵画に重要な人物画として登場している。白隠禅師は、1686年1月19日(貞享2年12月25日)生まれの駿河の人。15歳で出家して諸国を行脚して修行を重ねて、悟りを完成させ、地元に帰って布教を続け、曹洞宗黄檗宗と比較して衰退していた臨済宗を復興させた臨済宗中興の祖と称されている江戸中期の名僧である。お多福は、『仮名法語』の「粉引歌」に出てくる。そして、その導入部には「お多福女郎粉引歌」が添えてあり、つぎのようにかかれている。
あのゝ下もの町の
  新べさんのゝおふくは
鼻はひしやげたれどほうさきが高ふて
  よひおなごじやの
なんのかのてゝ
  いつかひおせわでござんす

天じや天じやと皆様おしやる てんのとがめもいやでそろ
文(ふみ)の数々恋ひ焦がれても わしは当座の花はいや
数の男の思ひもこわひ みめの好ひのも気の毒じや
器量好しめと誉めそやされて 男ぎらひの独りねを
命取りめと皆様おしやる わしは命はとらぬもの
那須の与市は矢さきで殺す おふ(お福)が目本で人殺す
数の殿子(とのご)は限りもないが わしがいとしは只独り
婆々が粉歌は面白かろが ふくがしらべは知りやるまい
知音どしなら歌ふもよいが やぼな御客にや遠慮しや
七語調の軽快な詩は仮名で書かれており読めば意味はすぐ分かるだろう。ここでも、「おふくは鼻はひしやげたれど、ほうさきが高ふて、よひおなごじやの」と醜女の条件を備えた美人だといっている。「醜女の美人」は、一見すると醜いが、よくよく見れば個性的で、なかなかの美人ではないか、などというのではなく、醜即美・・・という禪流の考え方によるものであろう。
おたふくの絵は以下のHPがよく分かる。
白隠禅師の臼挽き歌 ↓
http://homepage2.nifty.com/singingsand//powder/otafukujoro.html
その独特の絵からも、禅師の風格がしのばれるが、ただ、これは、以下参考の「花園大学國際禪学研究所ホームページ」によれば,従来、白隠の作として扱われて来ているが、白隠の撰述ではなく、後世(天保2年=1831)、白隠に仮託して作られたものだそうである。それは、兎も角として、ここでは、白隠禅師のものとしておこう。 白隠禅師は民衆に対して分かりやすく教化した禅師であるといわれているが、それは、禅師にこのような著作があるからであろうが、しかし、形式は「戯作」調であっても、そこに書かれている内容は、禪の教えによるものであり、決してやさしいことではなく、むしろ高遠なものである。この詩の先も名調子が長々と続くが、このあたりからは仏法の教えに入ている。
この「粉引唄」の題名は「お婆々どの」となっており、「お婆々どの」は、本文中に「主心お婆々」の名前で登場してくることから、私たちの心の本性を擬人化した登場人物であり、原作には石臼で抹茶を引いている主心お婆々と、おたふく女郎の絵が添えてあるそうで、なぜ「お多福女郎粉引歌」が添えてあるのかというと、この粉引歌が世阿弥山姥(やまんば)という謡曲を踏まえて書かれており、その導入部をまねているのだという。
白隠禅師よりすこし前の時代の沢庵(たくあん)禅師には、「山姥五十首和歌」という道歌集があって次のように歌っているという。(以下参考の「■画賛の意味するところ 」より)
”さだまりて山姥といふものはなし、心の変化これをいふなり
山姥といふはこゝろの名なりけり、心のゆかぬおくやまもなし
織り姫の身をば受くるもこゝろなり、心を名づけ山姥といふ
さまざまにかはれる相もかはる身も、わざもひとつのこゝろなりけり
心にし山うばといふ名をつけて、道しれとてのうたふ曲舞 ”
世阿弥の謡曲「山姥」は、この沢庵の禪思想を取り入れた謡曲だといわれている。
白隠禅師の粉引歌の事について、詳しくは、以下参考の「瑞雲院 法話のページ」の中に「白隠禅師粉引歌」の解説を見られると良い。
仮名法語「お婆々どの粉引歌」↓
 http://www.hokuriku.ne.jp/genkai/110obaba.htm
又、以下参考財団法人禪文化研究所HPの「お多福美人のこと」も詳しく解説している。両方を見るとよく分かるよ。
お多福美人のこと ↓
http://www.zenbunka.or.jp/03_magazine/zenbunka/yodan/167.htm
仏教の本と言うのは、難しいものが多いが、この白隠禅師の『仮名法語』は本当に面白い。「瑞雲院 法話のページ」に他のお話も紹介されているが、本に興味のある人は以下参考に本も紹介しておいたよ。
昔というか、日本の女性も昭和30年代頃までの女性と現代の女性では、ずいぶんと、顔立ちが変わってきたね~。科学の発達と共に化粧品もよくなりメイクの方法も進化しただろうが、整形をしている人も多いのだろう。テレビに出ている女性などを見ていると私などは、個々の特徴が感じられず、皆、同じ様な顔に見えてくる。それはそうだろう。誰が考えても、その時代の理想的な美人顔と言うのは、変らないだろうから、その理想形になりたいと、同じ様な化粧品をし場合によっては整形まですれば、皆んな、細面のパッチリとした目に切れ長の眉を描いて、鼻の低い人は、整形で鼻をつまんでみれば、大方は同じ顔になる。変化を感じないのは当然だろう。
しかし、先の沢庵(たくあん)禅師の山姥の詩の説明にあるように、人の相はその心の表れである。美しいく見えるか美しく見えないか?・・・それは、その人の心が、どうか次第。顔の形で感じるものではない。私には、今のトゲトゲした感じの美人よりも、昔のふっくらと穏やかな顔をした女性の方が綺麗に見える。福相のおかめさん・・・いい顔してるよね~。
(画像は、コレクションのミニサイズの伏見人形の「おたふく」)
おかめ - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%8A%E3%81%8B%E3%82%81
白隠慧鶴 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%99%BD%E9%9A%A0%E6%85%A7%E9%B6%B4
花園大学國際禪学研究所ホームページ
http://iriz.hanazono.ac.jp/index.ja.html
お多福美人のこと/財団法人禪文化研究所
http://www.zenbunka.or.jp/03_magazine/zenbunka/yodan/167.htm
瑞雲院 法話のページ(白隠禅師の臼挽き歌他)
http://www.hokuriku.ne.jp/genkai/index.htm
研究室:五山文学研究室:関連論文:瓢鮎図・再考:画賛の意味する ところ
http://iriz.hanazono.ac.jp/k_room/yoshi0299.html
禅文化研究所 白隠禅師の本
http://shop.rinnou.net/shop/A125/QSgyt6ZbX/syolist/006
沢庵宗彭 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B2%A2%E5%BA%B5%E5%AE%97%E5%BD%AD
山姥 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A4%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%83%90
世阿弥 - Wikiquote
http://ja.wikiquote.org/wiki/%E4%B8%96%E9%98%BF%E5%BC%A5
■画賛の意味するところ/花園大学國際禪学研究所
http://iriz.hanazono.ac.jp/k_room/yoshi0299.html
『能扇子絵巻』
http://www.suma.kobe-wu.ac.jp/geinou/bunka/kihon/ten_kiho.html