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花王の「リップモンスター」:年間10万本売れたらヒットと言われるリップ市場で、シリーズ累計の出荷数は1900万本を突破

2024-04-17 09:07:59 | 政治経済問題
© 読売新聞



リップモンスター、コロナ禍を逆手に「怪物級」ヒット…SNSで拡散「メイク欲を刺激」 読売新聞 2024/04/17 05:00

ブランド力<1>
 ひときわ目を引く赤地に「辰年」の文字。よく見ると「辰」の字のすぐ下に真っ赤な口紅で描いた「口」の字が見える。

花王の若者向け化粧品KATE(ケイト)が今年1月1日付読売新聞朝刊に掲載した全段広告。大ヒット商品の口紅「リップモンスター」が辰年を「唇年」にしていく。しゃれっ気がある広告はSNSでも拡散し、話題を呼んだ。

 今や「落ちない口紅」の代名詞的存在となったブランドはコロナ禍の2021年春に誕生した。「欲望の塊」「ラスボス」といった独特の色のネーミングはSNSをざわつかせ、マスク生活が続いた女性のメイク欲を刺激した。「ブランドマーケティングの新たな手本となる成功事例を作った」。東洋学園大の八塩圭子教授(マーケティング論)はこう指摘する。

 年間10万本売れたらヒットと言われるリップ市場で、シリーズ累計の出荷数は1900万本を突破。コロナ禍を逆手に取り、文字通り「怪物級リップ」になった。

マスクに色移らず
化粧品専門店に並ぶ落ちない口紅「リップモンスター」(3月、東京都渋谷区で)=安川純撮影
 落ちない口紅「リップモンスター」を目当てに、都内の大学生の女性(19)は、春休み中の3月、友人と原宿の化粧品専門店を訪れた。

 新学期が始まる前に、口紅を新調したい。買うならマスクに色が付きにくく、ずっと気になっていた「リプモン」がいい。商品が並ぶ店頭では、スマートフォンを片手にインスタグラムの色評価を確認しながら、色定めを楽しんだ。

 価格は百貨店に並ぶ口紅の半額程度の1500円ほど。SNSでは限定色が発売されるたび「どこで買える?」と販売店情報が飛び交う。「品薄だから余計に欲しくなる。きょうは無事に買えてうれしいです」。女性は笑顔を見せる。

「こういう時だからこそ」
 「こういう時だからこそ、マスクを外した一瞬でもかわいくいたいとみんな思っているはずなんです」

2020年春、花王の若者向け化粧品KATE(ケイト)の商品開発担当者の会議。当時入社3年目の女性社員の言葉にメンバーの心に火がついた。

 もちろん熱意だけでは売れない。当時、口紅市場の売り上げはコロナ禍で年初比7割減。かつてない逆風に、花王社内でも「口紅は優先順位が低い」と、当初は懐疑的だった。

 メンバーの間で商品化に向けて必須の機能と考えたのがマスク時代の消費者ニーズ。マスクに色移りしない落ちにくさだった。

 それを実現する技術は社内にあった。花王の研究所が数年前に開発し、化粧崩れを防ぐファンデーションに使われていた。「この技術を使えばマスク生活でもメイクを楽しめる口紅になる」。そう確信し、研究員とやりとりを始めた。

 微調整のうえ完成したのが唇から蒸発する水分を使ってジェル状の皮膜をつくる独自の技術。落ちにくさだけでなく、保湿性と色持ちの良さを両立する。これまでにない口紅だった。

 機能的に優れていても伝わらなければ意味がない。コロナ禍で店頭でのアピールは難しい。そこで想定購買層の10~20歳代に響くように公式ユーチューブやティックトックといったSNSに注力することにした。

 SNS時代に求められるのは「思わずつぶやきたくなる」こと。「怪物級の欲をかなえる」から印象的な商品名を導き出すと、色名はモンスターのいる世界をイメージし、「 陽炎かげろう 」「地底探索」といったユニークなものにした。

 SNSで発信力があるインフルエンサーがマスクを外し、音楽にあわせてポーズをとるたびに、リップを塗った唇の色が次々と変わる――。

 本格販売開始にあわせてティックトックに投稿した15秒の動画広告は注目を集めた。利用者による投稿や利用者同士の自発的な情報交換の輪も広がった。ケイトの岩田有弘ブランドマネジャーは「印象に残る言葉は人を引き寄せる力がある。メイク欲を刺激することができた」と話す。

発売から約3年。リップモンスターは限定色の再販を決める「総選挙」の実施など、消費者を引きつける様々な取り組みを絶えず打ち続ける。百貨店を除く口紅市場のシェア(占有率)は首位だ。

マーケティングに詳しい東洋学園大の八塩圭子教授は「現代のブランドは機能的価値があることは大前提。その上でSNSなどでの展開も意識して徹底的に世界観を作り込み、情緒的価値や感性的価値が付加されると、モンスター級のヒットになることを証明した」と指摘する。

 リップモンスターの成功の後を追うように競合他社も落ちにくさとユニークな色名を前面に出す商品投入が相次ぐ。ネット上では「おすすめ34選」「人気ランキング20選」といった比較サイトが乱立。競争がさらに注目を集める好循環が生まれている。

 マスク時代に口紅は売れない。そんな常識を疑うことから始まった怪物ブランドは、口紅冬の時代に新たな市場を作り出した。

「新参者 大胆に攻めた」
 2015年に誕生したシャンプー「ボタニスト」=写真=も、成熟市場と言われたヘアケア市場に風穴を開けたブランドとして知られる。

 販売元のアイエヌイーが掲げる商品コンセプトは「植物と共に生きる」。発売当時から成分はさとうきびなどの植物由来のものを配合し、容器もあえて透明でシンプルなデザインにした。

 これがちょうど利用者が増え始めたインスタグラムで「映える」効果があった。価格は税抜き1400円台と、当時売れ筋の店頭価格(500~700円)の倍以上の価格にしたが、自然志向の理念に共鳴した消費者を引きつけた。アイエヌイーの藤岡礼記執行役員は「新参者だから大胆に攻められた」と話す。

 シャンプーは特売品の目玉だったが、調査会社インテージによると、23年の量販店でのシャンプー1リットルあたりの平均価格は1583円。ボタニストが切り開いた価格帯が主戦場になった。

        ◇

 企業や商品が持つ認知度の高さを示すブランド力。どう構築し、どう高め、どう維持するか。ブランド戦略の最前線を追った。
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