公営競技はどこへ行く

元気溢れる公営競技にしていきたい、その一心で思ったことを書き綴っていきます。

「やりたい放題」:滋賀県にある社会福祉法人「グロー」理事長・北岡賢剛

2020-12-13 15:16:07 | 政治経済問題


セクハラ訴訟“福祉のドン”はなぜ権力を持てたのか? 背景にある「有力政治家」との蜜月 から続く

 今年11月13日、滋賀県にある社会福祉法人「グロー」理事長・北岡賢剛氏が、2人の女性から約4250万円の賠償を求めて訴訟を起こされた。原告は、北岡氏から性暴力を振るわれ、10年以上にわたりセクハラとパワハラの被害を受け続けたと告発したのだ。

 今回の件が新聞各紙等で大きく報じられた理由のひとつには、北岡氏が障害者福祉の世界では「天皇」と呼ばれており、社会福祉の業界でその名前を知らない者はいない存在だということがある。そして、ハラスメントの被害の大きさもさることながら、加えて問題となったのは、なぜこれほど長い期間にわたるセクハラ・パワハラの事案が表に出てこなかったのかということだ。

 そこには北岡氏を中心とした福祉界の絶対的な上下関係が関係している。北岡氏は有力政治家たちとのパイプや各省庁との繋がりを利用し、国の事業採択や助成金の支給にまで大きな影響力をもっていたのだった――。( #2 から続く)

◆◆◆

 実は取材の過程で気がかりなことがあった。

 北岡賢剛という男は政府委員の要職を引き受けるにあたり、2つの肩書きを使い分けていたのだ。ひとつは「社会福祉法人グロー理事長」。もう一つが「NPO法人全国地域生活支援ネットワーク顧問」だ。後者は業界では「全国ネット」の名前で定着している。

北岡氏が厚生労働大臣表彰を受けたことを伝える「全国地域生活支援ネットワーク」のフェイスブックのページ© 文春オンライン 北岡氏が厚生労働大臣表彰を受けたことを伝える「全国地域生活支援ネットワーク」のフェイスブックのページ
国の事業採択に北岡氏が大きな影響を与える
 ある社会福祉法人の幹部は、北岡氏は2008年頃から、「グロー」と「全国ネット」をたくみに使い分けて、国の障害者芸術分野事業の採択に大きな影響力を及ぼすようになったという。

 無論、北岡氏がこの分野の先駆者の1人であることは間違いない。ただ、これらの事業採択は、表向きは公募だが、実態は明らかな出来レースだったと語る。

「北岡氏は障害者芸術の分野において、仮に実績がなかったとしても、自分の政治力の傘下にある全国ネットに名を連ねる団体を優遇して、厚労省、文化庁などの事業を政治家の力を使って採択させてきました。つまり、北岡氏に逆らえば国の事業には採択されにくい構造であることは、この分野に関わる人であれば誰でも知っています。

 社会福祉法人は老舗を除いて、地域の障害者施設の指定管理を任されるなどしなければ、その運営は財政的に厳しい法人が多い。だからこそ、どの法人も国の事業を主催したいのです。北岡氏は自分を慕う身内には情が深く、面倒見がよい一方、異論を挟む相手を徹底して排除する田舎のヤンキー気質でした」

 北岡氏は厚労省の委員をしながら、同時に同省の事業を毎年、主催していた。

 尾辻かな子事務所が厚労省に照会して入手した資料によると、この数年だけでも「グロー」、そして「全国ネット」にあわせて2億円を超える金額が国から支払われている。

 その内のひとつが「障害者芸術文化活動普及支援事業」。平成29年から令和2年までの4年間で合計、約7300万円がグローに支払われている。

 この障害者の芸術文化普及に関わる事業は、全国6つのブロックに分けられて実施される。その広域支援を担う6つの団体のうち、4つは「全国ネット」の傘下にある団体で、グローは全国レベルの活動支援の団体として、そのトップに名を連ねている。 

  そして、「2020東京大会・日本博を契機とした障害者の文化芸術フェスティバル」と銘打ったイベントには、令和元年、令和2年の2年間で合計、約1億3000万円が支払われている。このイベントは実行委員会形式だが、その多くが「全国ネット」に名を連ねる団体が中心で、事務局はグローが担っている。

 グローはこの他にも「障害者総合福祉推進事業」などを過去には主催しているので、実際には厚労省や文化庁からグローや全国ネットに流れたカネの総額は、さらに膨らむだろう。

 そして、北岡氏と厚労省、有力政治家との癒着が最も顕著に表れているのが「アメニティーフォーラム」と呼ばれる大規模イベントの存在だ。

「障害福祉の世界でアメニティーフォーラムを知らない人はいませんよ。何しろ福祉関係者以外に現役の首長、政治家、官僚、そして文化人、著名人などが、わざわざ北岡氏のお膝元である滋賀に大集結するのです。障害福祉の分野で働く職員の賃金など待遇を決める障害福祉サービスの報酬も、このアメニティーの二次会で決まると噂されるくらいですから」

 そう話すのは、また別の社会福祉法人の理事長である。

 厚生労働委員会でも度々、その名前が飛び出した「アメニティーフォーラム」は、まさに障害福祉業界の祭典だ。今年開催された第24回大会のパンフレットを見ても、参加者の数、出席者の顔ぶれ、イベントの内容、どれをとっても破格のスケールだということが分かる。

フォーラムの人脈が北岡氏の力の源泉
 大会冒頭、全国ネット顧問の肩書きで北岡氏が登壇する。

 対談相手は、NHK『バリバラ』の司会を務める玉木幸則氏、全国ネット代表・大原裕介氏、そしてアメニティーフォーラム実行委員長であり、北岡氏が「へいもも」の会を設立した当時からの盟友でもあり、北岡氏に性暴力を振るわれたと告発したAさんが所属する社会福祉法人「愛成会」の理事をしている田中正博氏だ。

 突出しているのが、やはり厚労省関係の幹部らの顔ぶれである。

 下記の図は、過去15年間のアメニティーフォーラムのパンフレットをもとに厚労省関係者の参加当時の肩書きと参加回数を一覧にしたものだ。現役事務次官こそいないが、後の事務次官など名だたるキャリア官僚がずらりと名前を連ねる。

 北岡氏は、2004年出版の鼎談集「僕らは語り合った 障害福祉の未来を」の中で、厚労省とのつながりをこう振り返っている。

「行政の人との出会いって、地方からだんだん中央へ行くのかなと思うんですけど。僕の場合は逆だったんですよ。でも、僕には戦略ってないんです。皆さんどう思っているかわからないけど、自分ではない人だと思っている。最初に出会ったのは地元の市町村よりも厚生省なんですね」

 この本には浅野史郎・元宮城県知事、元厚生省官僚、辻哲夫・東京大学高齢社会総合研究機構特任教授、元厚労省事務次官などの厚労行政に関わる大物の名前が並ぶ。北岡氏はアメニティーフォーラムという場を使って、福祉業界の現場で働く全国の実践者らと政治家、厚労官僚、大学教授、そして、北岡氏の障害者福祉観を支持する文化人、著名人を引き合わせ、そして永田町、霞ヶ関とのパイプを太くしてきた。この北岡氏の行動力と障害福祉への貢献は評価されてしかるべきだろう。

 このフォーラムに参加したことのある福祉関係者は、このイベントに登壇している人々こそが、北岡氏が30年かけて築き上げてきた人脈であり、北岡氏の人生そのものだと語った。

「福祉業界、とくに障害分野は過酷な『3K』労働で、華やかさとは正反対の業界です。だからこそ、日々、当事者に向き合っている福祉関係者は、このきらびやかなお祭り騒ぎを目の当たりにすることで、北岡氏の政治力に平伏し、周囲の誰も何も言えなくなるのです。北岡氏のセクハラやパワハラは内部だけでなく、出入りする関係者の間では周知の事実でした」

 休憩時間もない程、ぎっしりと詰め込まれた企画の数々は、まるで有名大学の「学祭」だ。

「職員たちは北岡氏に気に入られようと必死だった」
 北岡氏を筆頭にグロー上層部(理事長、副理事、理事)は全員男性。現場の職員の多くは女性。普段から法人内には、北岡氏を頂点とする徹底した上意下達の体育会系の指示系統が敷かれているという。

「管理職レベルの男性職員たちであっても、北岡氏を前にすると、背筋をのばし目線は足元を見下げて、非常に緊張しながら話していた」

「北岡氏に近い男性職員たちは、北岡氏が滋賀県にいる夜は常にスマホを気にしていた。北岡氏から電話がかかってくるとすぐに出て、終電間際でも呼ばれる場所に向かっていた。呼ばれたら駆けつけることを北岡氏は『待機の男』と呼び、夜遅くや朝早くの送迎をすることで、彼に気に入られようと必死だった」

「職員に説教のようなものをした後、他の複数の職員たちが集まっている場で『○○がさぁ、泣くんだよねぇ』とバカにするように話をしたり、大勢の職員の前で一人の職員の失敗をコテンパンにけなして吊し上げるようなことをしていても、それに異議を申し立てる職員はおらず黙って聞いているだけであった」

 こうした証言は枚挙にいとまが無い。

 反論のひとつも許されない絶対的な上下関係に、最初は北岡氏に憧れてグローの門を叩いた職員も、日が経つにつれて「共依存」や「従属」という関係に支配されてゆく。逆に、北岡氏は自分よりも優位で特別な存在と思わされる環境に耐えきれない職員は、この組織を去って行く――。

 何度も言うが、アメニティーフォーラムの理念そのものは全く間違ってはいない。

 ただ、本来、人間は誰もが平等であるという当たり前の福祉観が、ここでは通用しないのだ。そして日常的に北岡氏や幹部職員によるセクハラやパワハラが横行するようになる。北岡氏、およびグローには質問状を送るなど再三にわたって連絡をとってきたが、12月6日時点で何の連絡もない。

 そんな絶対服従を強いられる環境下で、北岡氏を告発したBさんは性的暴行を受けるのである。

(中原 一歩)
この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« コロナ新規感染、初の100... | トップ | 睡眠剤混入の水虫薬、1人死... »
最新の画像もっと見る

政治経済問題」カテゴリの最新記事