梅雨が上がるころに、会社時代の後輩から、特に植える物もない夏の畑の管理方法を教わった。
彼は何事にも前向きに取り組む好青年で、数年前定年になってから畑作りの講習を受けて、他人の休耕畑を借りて農業にいそしんでいる、ということだった。
そんな彼が教えてくれたのは、遊ばせておくと夏草が生い茂る畑に黒いビニールシートを張って密封するのだと言う。そうすると夏草は生えないし、害虫が蒸し焼きになるので虫退治の農薬がいらなくなる。だまされたと思ってやってみんさい、ということだった。
農薬代をビニールシートに投資することにして、言われた通りにやってみた。
まだまだ剥がす時期ではないのでそのままほったらかしではあるが、この強い陽ざしのもと、ビニールシートの下がどんなになっているか気にかかるところではある。素人が初めて施した畑の管理方法だが、今のところ台風も来ず、大風も吹かないので、シートが飛ばされずそのまま残ってはいる。
そろそろニンニクを植えたいし、秋から冬にかけての野菜作りの下ごしらえが要る時期になりかかっている。うかうかしていられない気持ちと、密封効果を高めるためにもうしばらく待ってみたい気持ちが交錯する。
などと言えばかっこいいが、実はちょっと動けば流れ落ちる汗に恐れをなして「もう少し涼しくなってから…」などと逃げを打っている、というのが本音であろう。
“ 夏草や 兵(つわもの)どもが 夢の跡 ”
同じ夏草の話ではあるが、芭蕉の思うこの句とはちょっと趣きが異なるな~。
主(あるじ)を思ってひたすら戦い戦場に散った兵士の命の儚さ・虚しさ。そんな過去も何もかも覆い隠すように夏草は年々変わりなく茂るものだな~ というのが本当の意味であろうが、それにしても夏草との闘いは畑作りをあきらめない限り、付いて回るのだろう。