漫画家アシスタント物語

漫画家アシスタントの馬鹿人生40年と、リタイア後のタイ移住生活。

漫画家アシスタント 古い話で章 その21

2014年05月05日 18時47分43秒 | 漫画家アシスタント

 ( この写真は、池袋から仕事場のJプロへ向かう途中にある公園を撮影したものです。 一月前の満開の桜が一面の
  新緑に変わりました。・・・・・・《 2014年、5月、撮影 》 )
 
 
  【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】

 

                    その21


       《 漫画家アシスタントが・・・・コーラに驚いた・・・・!? 》


漫画家アシスタントに成ろうとする時に、大抵の人は、自分の画力と漫画家の背景画の難易度を計算
するものです。

 『 俺には、こんな背景画は描けないなァ 』

・・・・・と、思えば諦めるし、加川さん( ※参照 )の様に・・・・・

 『 この漫画家( J先生 )なら、俺でも楽に仕事が出来そうだなァ 』

・・・・・と、思えば気楽に漫画家の門を叩くことが出来ます。

徹夜の連続が嫌で○森プロ( ※参照 )を逃げ出していた加川さんにとって、Jプロ( ※参照 )のギャグ調
の作風は背景画として安易なものに見えたのでしょう。

また、事実、かなりいい加減な背景でもありました。

建物や室内、さらには主人公が乗っている自動車さえも、前のページと繋がらない様な( 前のページ
と違う自動車を描いてしまう )読者をなめ切った様な絵も多々ありました。

もっとも、背景画自体のクオリティーをJ先生( ※参照 )は、ほとんどチェックしないで通していたの
ですから、他の作家には無いクソ度胸があったと言えるかと思います。

 「 明るくな! 」

私は、23歳でJプロに入りましたが、10年位の間に数回そんな風に言われましたが、背景画について
の細かい指示を受けた事はありませんでした・・・・・・今から考えても不思議ですが、本当です・
・・・・・・・。

背景画に対する指示は、ただ一言・・・・・

 「 明るくな! 」

私の絵がよほど暗かったからかも知れませんが・・・・・・・・・!


さて、話を加川さんに戻しましょう・・・・・・

1969年の春、加川さんは、アシスタント希望者としてJ先生の仕事場を訪ねます・・・・・・・・

東京都新宿区下落合3丁目にある4階建ての小さなマンション( 当時としては中クラス )へ・・・・・・

マンションの玄関は薄暗く、階段も狭く窓もないので大変暗いわけです( 写真がありますので、次回、
公開したいと思います )。

各フロアには3世帯分のドアがあるのですが、とにかく小さいのです。廊下自体が畳で2枚分位しかあ
りません。

J先生の部屋は『 301 』・・・・・

加川さんにとってのマンションは「 高級 」なイメージ、さらに先生の部屋のドア前にはコーラの箱
( 20本ケース )が3段重ねて置かれています。

そのコーラの量を見て・・・・・
 
 『 売れっ子漫画家は違うなァ・・・・やっぱり凄いや! 』
 
・・・・・と、思いながらドアの呼び鈴を押します・・・・・・・・
 
競馬好きの加川さんは、耳には赤鉛筆、手には競馬新聞という風体で室内に案内されます。
 
かなり世間ずれしているというか、なめ切っているというか・・・・・・・・

 『 イ~加減な野郎だなこいつ・・・・ 』

・・・・・などと先生に思われたかどうかは、定かではありませんが・・・・・・・・

応接ソファに座ると、J先生の奥さんがさっそく冷たいコーラを出してくれました。

テーブルの上には、二つのグラスに先生用と加川さん用のコーラが置かれています・・・・・・・

奥さんがニコニコしながら台所へ戻ると・・・・・・・・J先生は突然、加川さんのコーラに手を伸
ばします・・・・・・

 「 あっ!? 」

J先生は、茫然とする加川さんを無視して、そのコーラをゴクゴクと一気飲みしてしまいます。

そして、空のグラスを加川さんの手元に置くと・・・・・

 「 おい、こいつったら、も~飲んじゃったぜ! 」

 「 ! 」

目を丸くしたまま動けない加川さんをニヤリと見ながら・・・・・・・

 「 ズ~ズ~シ~野郎だよなァ~~! 」

加川さんは、先生と空になった自分のコップに視線を行き来させながら・・・・・

 『 何て人なんだ! この人は! 』

しばらくすると、J先生は一冊のノートを差し出します・・・・・・・

 「 アシスタント希望者リスト 」

何やらたくさん名前や住所の記されたノートを目の前に置かれたのです・・・・・・・・
 
 
 
      「 漫画家アシスタント 古い話で章 その22 」( 5月10日以降公開 ) へつづく・・・・


            ★前の記事へ→ 「漫画家アシスタント古い話で章 その20」へ戻る 】

 
 
 
  
  【 ※参照 】
 ・加川さん・・・・・・・・・・・中学卒業後、職業を転々としながら漫画家アシスタントに成る。
  1969年にJ先生に師事。1978年に少年キングで連載を得て独立。1984年別冊漫画ゴラク連載。
 ・○森プロ・・・・・・・・・・漫画界の大御所と言われた○ノ森章太郎先生の仕事場。1968年当時は
  「幻魔大戦」などを制作していた。
 ・Jプロ・・・・・・・・漫画家J先生の仕事場。東京目白にあり、スタッフは現在2人。連載は1誌。
  ちょっと淋しい今日この頃です。(バブル期には連載6誌、スタッフ6人)
 ・J先生・・・・・・・・・・・・・・・有名漫画家、1966年、23歳で売れっ子作家に。70年には
  週刊連載6誌という逸話もある。現在は1誌に連載中。2013年現在、70歳。1969年当時は26歳。
 
 
 
 

 
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 ★ 「漫画家アシスタント物語 4章の31~」に書かせてもらったガンさん
   (ブログ本では『ハアさん』)が描いたソープランドの実録漫画を公開
   中です・・・ 特別寄稿「 親不孝通り 」 第40話お父さん

 ★ 拙ブログのうぶ主が1987年にヤングジャンプ新人賞で準入選デビュー
   した作品・・・ 「 雨のドモ五郎 」

 ★ 「漫画家アシスタント物語 第6章の10~」に書かせていただいた
   リョウさんが描いたイラストを公開中です・・・ 「 龍馬さんとボク 」

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