( この写真は、池袋から仕事場のJプロへ向かう途中にある公園を撮影したものです。 一月前の満開の桜が一面の
新緑に変わりました。・・・・・・《 2014年、5月、撮影 》 )
【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】
その21
《 漫画家アシスタントが・・・・コーラに驚いた・・・・!? 》
漫画家アシスタントに成ろうとする時に、大抵の人は、自分の画力と漫画家の背景画の難易度を計算
するものです。
『 俺には、こんな背景画は描けないなァ 』
・・・・・と、思えば諦めるし、加川さん( ※参照 )の様に・・・・・
『 この漫画家( J先生 )なら、俺でも楽に仕事が出来そうだなァ 』
・・・・・と、思えば気楽に漫画家の門を叩くことが出来ます。
徹夜の連続が嫌で○森プロ( ※参照 )を逃げ出していた加川さんにとって、Jプロ( ※参照 )のギャグ調
の作風は背景画として安易なものに見えたのでしょう。
また、事実、かなりいい加減な背景でもありました。
建物や室内、さらには主人公が乗っている自動車さえも、前のページと繋がらない様な( 前のページ
と違う自動車を描いてしまう )読者をなめ切った様な絵も多々ありました。
もっとも、背景画自体のクオリティーをJ先生( ※参照 )は、ほとんどチェックしないで通していたの
ですから、他の作家には無いクソ度胸があったと言えるかと思います。
「 明るくな! 」
私は、23歳でJプロに入りましたが、10年位の間に数回そんな風に言われましたが、背景画について
の細かい指示を受けた事はありませんでした・・・・・・今から考えても不思議ですが、本当です・
・・・・・・・。
背景画に対する指示は、ただ一言・・・・・
「 明るくな! 」
私の絵がよほど暗かったからかも知れませんが・・・・・・・・・!
さて、話を加川さんに戻しましょう・・・・・・
1969年の春、加川さんは、アシスタント希望者としてJ先生の仕事場を訪ねます・・・・・・・・
東京都新宿区下落合3丁目にある4階建ての小さなマンション( 当時としては中クラス )へ・・・・・・
マンションの玄関は薄暗く、階段も狭く窓もないので大変暗いわけです( 写真がありますので、次回、
公開したいと思います )。
各フロアには3世帯分のドアがあるのですが、とにかく小さいのです。廊下自体が畳で2枚分位しかあ
りません。
J先生の部屋は『 301 』・・・・・
加川さんにとってのマンションは「 高級 」なイメージ、さらに先生の部屋のドア前にはコーラの箱
( 20本ケース )が3段重ねて置かれています。
そのコーラの量を見て・・・・・
『 売れっ子漫画家は違うなァ・・・・やっぱり凄いや! 』
・・・・・と、思いながらドアの呼び鈴を押します・・・・・・・・
競馬好きの加川さんは、耳には赤鉛筆、手には競馬新聞という風体で室内に案内されます。
かなり世間ずれしているというか、なめ切っているというか・・・・・・・・
『 イ~加減な野郎だなこいつ・・・・ 』
・・・・・などと先生に思われたかどうかは、定かではありませんが・・・・・・・・
応接ソファに座ると、J先生の奥さんがさっそく冷たいコーラを出してくれました。
テーブルの上には、二つのグラスに先生用と加川さん用のコーラが置かれています・・・・・・・
奥さんがニコニコしながら台所へ戻ると・・・・・・・・J先生は突然、加川さんのコーラに手を伸
ばします・・・・・・
「 あっ!? 」
J先生は、茫然とする加川さんを無視して、そのコーラをゴクゴクと一気飲みしてしまいます。
そして、空のグラスを加川さんの手元に置くと・・・・・
「 おい、こいつったら、も~飲んじゃったぜ! 」
「 ! 」
目を丸くしたまま動けない加川さんをニヤリと見ながら・・・・・・・
「 ズ~ズ~シ~野郎だよなァ~~! 」
加川さんは、先生と空になった自分のコップに視線を行き来させながら・・・・・
『 何て人なんだ! この人は! 』
しばらくすると、J先生は一冊のノートを差し出します・・・・・・・
「 アシスタント希望者リスト 」
何やらたくさん名前や住所の記されたノートを目の前に置かれたのです・・・・・・・・
「 漫画家アシスタント 古い話で章 その22 」( 5月10日以降公開 ) へつづく・・・・
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【 ※参照 】
・加川さん・・・・・・・・・・・中学卒業後、職業を転々としながら漫画家アシスタントに成る。
1969年にJ先生に師事。1978年に少年キングで連載を得て独立。1984年別冊漫画ゴラク連載。
・○森プロ・・・・・・・・・・漫画界の大御所と言われた○ノ森章太郎先生の仕事場。1968年当時は
「幻魔大戦」などを制作していた。
・Jプロ・・・・・・・・漫画家J先生の仕事場。東京目白にあり、スタッフは現在2人。連載は1誌。
ちょっと淋しい今日この頃です。(バブル期には連載6誌、スタッフ6人)
・J先生・・・・・・・・・・・・・・・有名漫画家、1966年、23歳で売れっ子作家に。70年には
週刊連載6誌という逸話もある。現在は1誌に連載中。2013年現在、70歳。1969年当時は26歳。
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中です・・・ 特別寄稿「 親不孝通り 」 第40話お父さん
★ 拙ブログのうぶ主が1987年にヤングジャンプ新人賞で準入選デビュー
した作品・・・ 「 雨のドモ五郎 」
★ 「漫画家アシスタント物語 第6章の10~」に書かせていただいた
リョウさんが描いたイラストを公開中です・・・ 「 龍馬さんとボク 」
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