漫画家アシスタント物語

漫画家アシスタントの馬鹿人生40年と、リタイア後のタイ移住生活。

漫画家アシスタント 第9章 その19

2012年05月16日 01時58分01秒 | 漫画背景

 ( この写真は、前回紹介した飲食街です。中央に写っているのが私が時々利用するラーメン店です。ここ
  のラーメンは大した事ないのですが、餃子が大変美味しいのでいつも注文しております。私は、ニラと生
  姜の利いた餃子が好きなのです・・・・・《 2012年5月、撮影 》 )
  
  
  【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】

 
 
                  その19  
  
 
     《 漫画家アシスタントが・・・空虚感を爽快に・・・!? 》
 
 
授業( ※参照 )が始まってから30分・・・・・・

教壇に立ち尽くす私は考える・・・・

 『 何をすれば良いのだろうか・・・・? 』

この日のために作った課題( ※参照 )も講義ノート( ※参照 )も意味をなさない・・・・・・
・・・・本来必要だった「 授業内容 」( ※参照 )は手元にない・・・・・・・

実は、この講義の前日・・・・

 『 もし時間に余裕があれば・・・・ 』

・・・・そう思って作っておいた「 イラストアンケート 」があったのです。

それは、学生自身・・・・つまり・・・・

 『 自分が作ったキャラクターが今の自分に向かって語りかけるとしたら、どん
   な事を語りかけるだろうか・・・・ 』

・・・・というテーマの一コマ漫画を描いてもらうというものでした。( あくまでおまけの
つもりで作っておいたものです )

残りの授業時間・・・・1時間・・・・このイラストアンケートに当てよう・・・・もはや、
それしか打開策はない・・・・・・と。

予備に作っておいた一枚の「 アンケート 」がこんな形で役に立つとは思いもしませんでし
た。

授業は、最後までそのアンケート制作とそれに対して各学生との面談という形で進行し、
かろうじて終了のチャイムに救われたわけです。

この時の私の頭は、完全に空白( オーバーヒートで発煙中 )で・・・・・・これほどの疲
労感をかつて経験した事がありませんでした。

肉体的な疲れではなく、純粋に脳ミソだけの極度な疲労状態・・・・・・

まさに、頭が真っ白・・・・思考能力ゼロの抜け殻・・・・・・・・そんな感じでした。

生まれて初めての講義を終えて教室から出てエレベーターで教務課へ戻る時には・・・・
・・・・足を一歩踏み出すのがまるで鎖につながれた囚人の様な・・・・・・

・・・・ズル・・・・ズル・・・・

 『 疲れた・・・・心底、疲れた・・・・・ 』

・・・・ズル・・・・ズル・・・・

 『 もはや何も無い・・・・今の俺には何も無い・・・・空っぽだ・・・・・・! 』

たいして重くもないカバンがやたらと重い・・・・肩にかかるショルダーベルトがやけに
痛む・・・・・・

運動したわけでもないのに、息を荒げながら教務課へ入ると・・・・

開いたドアの正面には教務課の最高責任者である理事長(?)だか誰だか・・・・実は、い
まだによく分からないのですが・・・・とにかく偉い人が・・・・

私をニコニコと笑顔で迎えてくれるのです・・・・

初めての授業がどうだったのかと、気にしておられたのか・・・・どうなのか・・・・や
けに嬉しそうに・・・・・

 「 どうでしたァ? 」

この人物は、私よりも何歳か年上と思われる穏やかな方で・・・・映画の脇役でよく見か
けるタイプ・・・・大きな会社の中間管理職なんかがピッタリの人物。

私は、あまりの疲労感で返事も出来ない・・・・正直言って、返事もできない事で察して
欲しかったのですが・・・・・・

 「 若い学生たちからパワーを貰ったんじゃないですかァ~? 」

私は、頭の芯から白旗が上がっている・・・・・心の中で・・・・・

 『 パワーを貰うどころか、パワーを出し尽くしてこっちが死にそうですよ! 』

・・・・・全てを出し切ってしまって、もう何も絞り出せない状態・・・・・

そんな私には苦笑いするしかなく・・・・・・

ただ・・・・・・

今から考えると・・・・・不思議な事なのですが・・・・・・

あれほど苦しい授業に、心底疲れ果てたにもかかわらず・・・・不快感がまるでなかった
のです。

疲労感が心地よく・・・・何も無くなってしまたった空虚感が爽快ですらあったのです。

講師控え室で一人になった時に、自然と笑顔になる・・・・・・グッタリと倒れ込みたい・
・・・・肩で大きく息をしている・・・・・それなのに笑顔になっている・・・・・・

授業に失敗した自分への笑いなのか・・・・緊張から解き放たれた解放感なのか・・・・

今になって考えれば・・・・・・・

初めての授業に成功したとは言えないまでも、全精力を傾けた授業に・・・・・何とも表
現の仕様のない充実感を感じていたのだと思います・・・・・・

これは・・・・・・3~4ヶ月かけて漫画を一本完成させた・・・・27年前に体験したあの
気分と、とてもよく似ている・・・・・・!

・・・・・・・と・・・・これは、あくまで後になって考えた事ですが、実際、この時には
・・・・・・

ただ、授業が中途半端に終わってしまった事への罪悪感と敗北感でいっぱいでした・・・
・・・・・

数日間、この敗北感で落ち込んでいました・・・・・・

私は、以前講師依頼の件で相談した事のある大学のT先生( ※参照 )を訪ねました・・・・・

その時に、この日の事を話したのです・・・・・・

落ち込む私に向かって、先生は・・・・・

 
 
         「 漫画家アシスタント 第9章 その20 」( 5月20日頃公開 ) へつづく・・・・


              ★前の記事へ→ 「漫画家アシスタント第9章 その18」へ戻る 】

 
 
 
  【 ※参照 】
 ・講義・・・・・・東京の繁華街にある美術系大学での最初の授業。私が「背景美術」の講義
  を担当。水曜日の朝1時限。(現在は、水曜から金曜まで各1時限)
 ・課題・・・・・・学生にその日、描いてもらう練習用の背景画。
 ・講義ノート・・・・授業内容をまとめたもの。あいさつから課題配布や講義内容など、箇条
  書きにしたもの。これを確認しながら授業をすすめる。
 ・授業内容・・・その学期の授業全体をまとめた資料。各回の授業がどの様なもので、どの
  様な道具を必要とするか、また主要なテーマや簡単な講義内容なども記されている。
 ・T先生・・・・・私が高校(東京目黒)時代に古文や国語を教えてくれた当時24歳の若き恩師。
  学校外でも色々な事を相談・・・・・大変な迷惑だったと思われるが、今でも私に多くの示
  唆を与えてくれ某大学の文学教授。拙作文庫本「蟹工船・覇王の船」に解説文を書いていた
  だきました。



 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ お知らせ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 
 ★ このブログ「漫画家アシスタント物語」が書籍化! 
   詳しくは・・・ 《アマゾンのネット通販》
   
 ★ 拙作、文庫本『 劇画 蟹工船 覇王の船 』も発売中!
   詳しくは・・・ 《アマゾンのネット通販》
 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~





【 各章案内 】   「第1章 改訂版」  「第2章 改訂版」  「第3章 改訂版」
          「第4章 その1」  「第5章 その1」  「第6章 その1」
          「第7章 その1」  「第8章 その1」  「第9章 その1」
          「諦めま章 その1」   「古い話で章 その1」
          
「もう終わりで章 その1」 「移住物語 こりゃタイ編 その1」




コメント (5)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする