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ペッパーズゴースト 伊坂幸太郎

著者の最新刊。非常に限定的な状況のみで1日先の未来を垣間見れるという特殊能力を持った中学校の先生が犯罪を目論むテロ集団と闘うという内容。主人公の視点、テロ集団メンバーの視点、作中作が交互に描かれながらストーリーが進んでいく、息もつかせない面白さだ。本書のおまけとして著者の言葉が印刷された絵葉書が付いていて、そこに「自分が気になっていることや怖いと思っていることを詰め込んだ作品」と書いてあった。それが何かは明記されていないが、「テロ組織とは交渉をしないvs人命最優先」「報道の自由vsその影響力に伴う責任」「人は皆平等vs理不尽な人生の過酷さ」といったキーワードが思い浮かぶ。最後に主人公が提示する全てハッピーエンドである可能性には、その意外性にびっくりすると同時に、是非そうであってほしいと思ってしまった。本書の全編を覆うニヒリズムからの脱却に至る永劫回帰の思想、学生時代に自分もハマったなぁと懐かしく感じた。(「ペッパーズゴースト」 伊坂幸太郎、朝日新聞出版)
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