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人新世の資本論 斉藤幸平
地球温暖化などの気候変動に代表される人類の自然破壊の現状を考えると、省エネ省資源の技術革新などでは全く危機回避にはならないと警告を発する本書。マルクスの資本論の未完部分を含む様々な論考を元に、こうした問題の解決や緩和のために小手先の努力では焼け石に水、場合によってはむしろ悪影響であると断罪、さらに成長を基盤にしてその成果を分配するという資本主義の基本的理想をもはや手遅れと切り捨てる。自分自身も省エネ技術やクリーンエネルギーについて、それを推進した分あるいはそれ以上のしわ寄せがどこかに発生しているのではないかと思っていたが、本書を読んでそのしわ寄せの行き先、外部化、不可視化の罠の仕組みがだいぶクリアになったような気がする。最近流行りのSDGs、グリーンニューディール、加速主義の問題点の指摘も説得力があって暗澹たる気持ちになる。こうした現状分析を踏まえて著者が提唱するのが「脱成長コミュニズム」、公共財である自然を資本主義に委ねている限り持続可能性に対する根本的な解決にはなり得ないとする主張だ。それ以外に残された道は、もしかしたら幸運にも突然宇宙技術の飛躍的発展がなされて地球を脱出、宇宙に飛び出すくらいしかないような感じだが、そこにも当然ながら地球の資源や利用可能エネルギーの壁がある気もするし、そんな幸運に頼れる余裕もないだろう。本書を読んで先日の衆議院総選挙を思い出した。選挙期間中に各党によって繰り広げられた成長が先か分配が先かといった政策論争の虚しさを改めて考えさせられた。(「人新世の資本論」 斉藤幸平、集英社新書)
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