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ベースボールの夢  内田隆三

ベーブ・ルース登場までの黎明期のアメリカの野球史。野球というスポーツが
ダブルディーという人によって、クーパーズタウンという町で最初に行われたという、いわゆる「ダブルディー・クーパーズタウン発祥説」に疑義があることは聞いていたが、この説がこんなにも問題のある説だということを、本書で初めて知った。ダブルディーは野球の試合が最初に行われたとされるその時にクーパーズタウンにいなかったことがほぼ証明されていて、そもそもこの説の根拠が65歳の男性が60年前(5歳の時)の記憶だといって手紙に書いていただけのもので、その説を公式に認めたのがダブルディーの親友で、といった調子でこの説の問題点が列記されている。その他にも本書では、野球ファンなら知っていて損のない話が満載だ。特に、野球がアメリカの国民的スポーツになる過程で南北戦争という歴史的な出来事と大きく関わっていたこと、野球のルールの確立がNYという都市の躍進と歩調をあわせたものであったこと、そもそもダブルディーという人物が、南北戦争の史亜ショの衝突があった際の北軍の司令官であったことなど、アメリカの歴史と野球の歴史が重なる部分が実に面白い。「ダブルディーは南北戦争を始めた人物だが野球を始めた人物ではない」という文章が面白かった。(「ベースボールの夢」内田隆三、岩波新書)
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