今回は症例集へ戻ります
症例3 75歳男性 主訴:けいれん
来院前日からの突然発症の腹痛と気分不良にて、かかりつけのクリニックを受診。
受診直後に突然、全身性けいれんをおこした、かかりつけ医では「頭部CT検査と腰椎穿刺が必要」と考え、救急車にて患者を病院へ搬送、病院へ来院時、上肢の脈拍は触知可能であるも、微弱にて血圧測定できず。
身体所見、腹部の触診にて拍動性腫瘤が触れ、両下肢の脈拍は触知不可。
● ピットフォール
かかりつけ医では「頭部CT検査と腰椎穿刺が必要」と考えたが、病院へ来院時、上肢の脈拍は触知可能であるも、微弱にて血圧測定できず。いわゆる「ショックバイタル」であった。
● その後の経過と解説
この症例における初期対応での問題は、バイタルサインを測定していなかったことである。急性病態ではまず、バイタルサインの測定が必須である。「ショック」が原因で脳血流の低下により「2次的に」意識障害・けいれんを生じている患者に対し、頭部CTの撮影などを優先させてはならない。「血圧低下+脳血流低下徴候」の患者においては、「ショック」に対する診断的評価を優先的に行うべきである。頭部CT撮影などを優先させてもたついていると、最悪の場合には、CT室で心肺停止をきたすおそれもある。比喩として、「CT=Tunnel of Death」ともいわれている。狭いCT室の空間では緊急対応が十分できないため、患者の生命予後は不良となる恐れがある。
この症例のような心臓血管系の急性病態では、急性大動脈解離と大動脈瘤破裂を見逃さないことが重要。そのためには血圧と脈拍の対称性symmetryを確認する。すなわち、「対称性の破れ」がないかどうか、四肢の脈拍を触知する。心臓血管系の急性病態で両下肢の脈拍が減弱したり、上肢の片方の脈拍が減弱したりしている場合には、急性大動脈解離と大動脈瘤破裂を疑う。「対称性の破れ」とは、量子力学の用語であり、素粒子レベルでは「対称性の破れ」があるため、宇宙が創生されたとのことであるから、重要な概念である。
この症例ではまず、ショックバイタルに対する初期対応として18ゲージで2本の末梢静脈ラインを確保急速輸液が開始された。ベッドサイドエコーにてすみやかに「腹部大動脈瘤破裂」が診断され、手術室へ直行となった。もちろん、頭部CT検査と腰椎穿刺は行われなかった。
● 最終診断:腹部大動脈瘤破裂
今回は以上です、話変わって、米大リーグはヤンキースの田中投手が本拠地ヤンキースタジアムで対ブルージェイス戦に日本人4人目となる先発でしたが、結果は四回5失点で降板し、敗戦投手となったそうです、残念でしたが次に期待しましょう、では次回に。