燃えるフィジカルアセスメント

総合診療医徳田安春の最新医学情報集。問診、フィジカル、医療安全、EBM、臨床研究に強くなれます。

子供を死なせない 連載 その50

2013-07-22 | 本の紹介

 前回に引き続き、健康長寿は子供から、親がいますぐできることを考えていきましょう。

 乳児死亡の原因を見てみると、周産気に発生した病態や先天性異常(奇形、変形、染色体異常を含む)および乳児突然死症候群などが上位を占めています。 その原因を減らす対策を考えていきましょう。

 人間は薬剤などの影響がなくとも、2~4%の頻度で奇形児が自然発生する生物であることがわかっています。 その原因としては、ほかの病気と同様に遺伝要因と環境要因が考えられています。 前者では、奇形児出産の既往歴、家族歴がある場合はハイリスク群であり、これらの遺伝要因を防ぐことはできません。 一方、母親の高年齢(35歳以上)も染色体異常の原因となりますが、34歳以下に出産することによりそのリスクを減らすことができます。

 さらに、奇形児の原因の約10%は環境要因といわれており、これには、母親の病気、胎児の感染症・薬剤・化学物質への曝露が含まれます。 以下に、環境要因について、詳しく説明します。 場合によっては妊娠前検査をしてもらうなど、医師との連携が必要です。

 ①母親の病気 母親がなんらかの病気をもっている場合は、当然のことながら、胎児にさまざまな影響を及ぼします。

 ●糖尿病…先天性心疾患、先天性中枢神経疾患、巨大児、その他の異常の原因となります。 妊娠前から妊娠中の厳格な血糖コントロールによりリスクを減らすことができます

 ●全身性エリテマトーデスやその他の自己免疫疾患…個々の疾患により対策が異なるため、妊娠を考えたら必ず主治医に相談してください

 ●フェニルケトン尿症…食事療法によりリスクを減らすことができます

 ●肥満…神経管閉塞不全症発症のリスクが増加します

 ●子宮内の異常…構造的に胎児の成長を妨げます

 ②感染症 以下にあげるような感染症にかかると、奇形から死亡にいたるまで、胎児、新生児にさまざまな影響をあたえるので注意が必要です。

 トキソプラズマ、風疹ウイルス、梅毒、サイトメガロウイルス、ヘルペスウイルス、水痘ウイルス、パルボB19ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、B群溶連菌感染。 この中で、風疹、水痘などは、必要であれば妊娠前にワクチンの接種をし、トキソプラズマ、梅毒、HIV感染症などでは妊娠中に治療を行うことで、胎児への影響を最小限に抑えることが可能なので、妊娠前検査を行うことが非常に重要です。

 今回はこの辺で、次回も引き続き乳児死亡の原因と対策について考えていきましょう。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 読書は大事 連載 その49 | トップ | 鹿島GIMセミナー参加者絶賛募... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

本の紹介」カテゴリの最新記事