燃えるフィジカルアセスメント

総合診療医Dr徳田安春の最新医学情報集

内科専門医のための新しいリベラルアーツ2 その56

2014-06-24 | 師の言葉

 前回の続きで「内科専門医のための新しいリベラルアーツ」と題してお送りします。

 ここで、「スーパー・ゼネラリスト的内科専門医」を育てるための「新しいリベラルアーツ」とは何か、ということが問題となる。 基本的な内科学の知識と内科診断学、治療学、基本的手技などは当然含まれるが、それだけでは不十分であろう。 内科専門医のための「新しいリベラルアーツ」に含まれる知識の範囲はかなり広い。 認知心理学、疫学、統計学、倫理学、哲学、社会学、教育学、行動科学、コミュニケーション、リーダーシップ、コーチング、ネゴシエーション、時間管理学、ヒューマンファクター、ナレッジ・マネージメント理論、などが挙げられる。

 Philip A. Tumulty医師は、全人的医療を徹底した医師として著名であり、その著書「よき臨床医をめざしてThe Effective Clinician」には、病める人間に対する深い洞察と慈愛の精神が溢れ出ている。 Tumulty医師によると、病気が人間に及ぼす衝撃は常に多元的であり、その影響は、その人全体、すなわちその人間を形成する精神的、知的、情緒的、社会的、経済的要素に及び、極めて複雑であるとし、臨床医については次のように述べている。

 「臨床医とは、病気を診断し治療することを本来の任務とする人ではない。 臨床医とは、その本来の任務として、人間が病気から受ける衝撃全体を最も効果的に取り除くという目的をもって、病む人間をマネージする人である。」

 さらにTumulty医師は、「よき臨床医Effective Clinician」とは、患者だけでなく、家族、地域、そして社会全体にまで「ケアを行う」医師であると述べた。 この見地からみると、予防医学活動、臨床研究活動、そして社会への健康啓蒙活動を行う医師は「よき臨床医Effective Clinician」であると言えよう。 ただし、ここでの臨床研究活動は、臨床現場に広く役に立つ知見が得られる研究である必要がある。 この意味で、臨床現場で患者の役に立つことを願って、臨床研究も行っている臨床医は、「よき臨床医Effective Clinician」と言えよう。 このように、社会全体を含めて「ケアを行う」ためには、内科専門医のための「新しいリベラルアーツ」に含まれる様々な学問領域に精通しておくとより効果的な貢献が可能になると考える。

 今回はここまでです、では、また次回に。

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