燃えるフィジカルアセスメント

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診断の達人をめざせ 連載 その53

2014-06-10 | 師の言葉

 今回は内科専門医の育成のためにとの考えから、「総合医としての内科専門医」と題しまして偉人たちの言葉をお送りします、今回は「診断の達人をめざせ」をお送りしましょう。

 ”There are in truth no specialties in medicine, since to know fully many of the most important diseases, a man must be familiar with their manifestations in many organs." William Osler (1906)

 これは、約100年前に、当時Johns hopkins大学医学部の内科教授であった、William Osler博士の有名な言葉である。 Osler博士の診療については、UCSF教授のRobert M.Wachter医師(医療安全に関しては世界最高レベルの研究者)らが、著書の中で、以下のように記述している。

 「マスコミにもてはやされるのは心臓移植を最初に手がけたDeBakeyや、Barnardといった行動力のある革新的な外科医や、Salk,Paulingなどの、情熱と洞察力を備えた研究者である。 しかし、医師自身が最高の尊敬を抱く医師、すなわちすぐれた診断を下せる医師について報道されることは滅多にない。…Johns Hopkins大学の教授で伝説的な存在とも言えるWilliam Oslerは、普通の医師だったら単なる雑多な症状や徴候の記録、検査結果だとしか思わないものから真実を読み取る超人的と言ってもよいような能力を持っていた。 …診断は医師としての業務の最も大きな部分を占めると同時に、専門科魂を表すものである。」

 一方、Osler博士自身の哲学は、日野原重明氏訳の「平静の心・オスラー博士講演集」に詳しい。 医師の能力については、沈着冷静な姿勢に勝る資質はないとし、次のように述べている。

 「沈着な姿勢とは、状況のいかんに関わらず、冷静さと、心の落ち着きを失わないことを意味する。 嵐のまっただなかでの平静さ、重大な危機に直面した時に下す判断の明晰さである。 何事にも動じず、感情に左右されないことである。 時として誤解されることもあるが、沈着な姿勢は人々から感謝されるであろう。 不幸にもそのような資質を欠いた医者、優柔不断で、いつもくよくよし、それを表面に出す医師、緊急事態に狼狽し、取り乱す医師、こういう医師はたちどころに患者の信頼を失うことであろう。 …この沈着な姿勢を完璧なものにするためには、幅広い経験と疾患の諸症状についての詳しい知識が必要である。」

 と、今回はこの辺で、この続きは次回に。

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